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【読書録】『つげ義春の温泉』つげ義春

今日ご紹介するのは、つげ義春氏の『つげ義春の温泉』(ちくま文庫)。

以前、つげ義春氏の漫画についてご紹介した。

つげ氏のシュールな漫画には、鄙びた温泉や湯治場がたくさん描かれている。

この『つげ義春の温泉』は、そのタイトルのとおり、彼が訪れた温泉についての本である。

Amazonの「Bookデータベース」には、次のように書かれている。

旅人・つげ義春が見た温泉の風景とは?1960年代末から70年代にかけて、日本列島の片すみにあった温泉宿を探して、青森、秋田、福島など、東北や九州を旅した、つげ義春。農村の湯治場に集う人々の表情や、絶望的に静かな雰囲気を見事に写し撮った作品は、忘れられた貴重な記録であるとともに、強烈なつげワールドである。2003年刊のカタログハウス版を大幅に再編集した。

この本は、2部構成になっている。前半が温泉の写真集であり、後半が温泉にまつわるエッセイ集である。前半と後半を通じて、つげ氏の若干のイラストも挿入されている。

前半の8ページから141ページまでの写真やイラストは、古き良き田舎の湯治場や温泉の、情緒あふれる写真とイラストで構成されている。

古い温泉街、周囲の自然、旅館の建物、浴槽の写真などがあるが、入浴を楽しむ地元の人々の素朴な姿が納められいるものも多い。つげ漫画の世界観の元になったのも、こういう景色や情景なのだろう。貴重な歴史的資料ともいえそうだ。

後半の144から219ページまでが、温泉にまつわる7篇のエッセイ。旅好きのつげ氏が、訪れた温泉街での出来事を淡々とまとめている。

素朴な文体がとても好きだ。温泉宿のおやじさん、おかみさん、女中さんなどとのやりとりも、温かみが感じられ、微笑ましい。予約をせずにその日の宿を決める、いきあたりばったり的な旅のスタイルも、当時ならではのものだろう。現地でのサプライズをのんびり楽しむ旅の豊かさを、少々羨ましいと感じる。

備忘録として、本書に登場する温泉をリストにしておく。

<写真>
青森・岩手・宮城・山形

湯野川温泉 夏油げとう温泉 定義じょうげ温泉 瀬見温泉 今神温泉 肘折温泉
秋田
蒸ノ湯ふけのゆ温泉 黒湯温泉 孫六温泉 小安峡おやすきょう温泉 湯ノ神温泉 泥湯温泉
福島 
早戸はやと温泉 西山温泉 玉梨温泉 大塩温泉 二岐ふたまた温泉 滝ノ原温泉 湯ノ花温泉 木賊とくさ温泉 湯岐ゆじまた鉱泉
関東・甲信
北温泉 湯宿ゆじゅく温泉 四万温泉 尻焼温泉 明治温泉 秋山郷屋敷温泉 別所鉱泉 不動の湯温泉 鶴鉱泉
九州・近畿
湯村温泉 壁湯温泉 湯平温泉 峐の湯はげのゆ温泉

<エッセイ>
『黒湯・泥湯』
『上州湯平ゆびら温泉』
『秩父の鉱泉と札所』
『下部・湯河原・箱根』
『伊豆半島周遊』
『養老(年金)鉱泉』
『丹沢の鉱泉』

つげファンの皆さまと、温泉ファンの皆さまには、とても楽しんでいただけると思う。

ご参考になれば幸いです!

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