見出し画像

【英語】force majeure

今日ご紹介する英語フレーズは、"force majeure"(読みは「フォース・マジュール」)。

これは、フランス語のフレーズなのだが、ビジネス英語でもよく使われる。とりわけ、取引先の会社などとの契約交渉や、契約書作成の場面で使われることが多い。

そして、その場合の訳語は、「不可抗力」だと覚えておけば、まず間違いはない。

この "force majeure" という単語を、英和・英英辞書で引いてみよう。まずは、オンライン辞書「英辞郎」から。

force majeure
〈フランス語〉優勢な[強圧的な]力
〈フランス語〉《法律》不可抗力、フォース・マジュール

https://eow.alc.co.jp/ にて検索

次に、オンライン英英辞書である Cambridge Dictionaryから。

an unexpected event such as a war, crime, or an earthquake which prevents someone from doing something that is written in a legal agreement 

(サザヱ和訳)法的な合意書において記載される、戦争、犯罪、地震などの予期せぬ出来事であって、それによって何かを実行することを妨げるもの。

https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/force-majeure

これらの検索結果から分かるように、この "force majeure"というフレーズは、予測やコントロールのできない不可抗力を意味し、台風や地震などの大規模な自然災害や、戦争などがその典型的な例だ。ストライキやパンデミックなどが含まれる場合もある。

ビジネス上の取引を行う場合、取引の相手方と色々な契約を結ぶ。商品を売ったり買ったり、サービスを提供したり、提供してもらったり。あるいは、別の会社と合併したり、などというものもある。

そういう契約を結ぶにあたっては、通常、世の中が平和であり、ビジネスを行う環境に大きな変化がないことを、暗黙の前提としているだろう。

しかし、まれに、大規模な自然災害や、戦争など、契約を結んだときには全く想像できなかった出来事が発生する場合がある。

最近の出来事のなかでは、東日本大震災、COVID-19の大流行、ウクライナ戦争、そして、今般のトルコの大地震などが該当する可能性がある。

このように、当事者が契約締結時に予想できなかった出来事が発生した場合に、当事者の義務の一部を免責するなどの特別なルールを、契約書において定めることがある。そのようなときに使われるのが、この "force majeure" というフレーズである。

そして、そういった内容を規定する条文を、"force majeure clause"「不可抗力条項」)と呼ぶ。

たとえば、大地震などの影響で、客先に商品を運搬するための物流網が乱れてしまい、納期に間に合わない場合などを考えてみよう。

平時であれば、納期に納品が間に合わない場合は、客先から損害賠償などのペナルティを課される場合がある。しかし、適切な "force majeure clause" が契約書に含まれていれば、そういったペナルティを回避できる可能性がある

ただ、"force majeure clause" が契約書に含まれているからといって、常に、義務を負う当事者が救済されるとは限らない。この "force majeure clause" のドラフティングも、適用の有無の判断も、かなり専門的であり、難しい。この条項のドラフティングや解釈については、会社の法務部や顧問弁護士などに任せよう。

一般のビジネスパーソンに求められるレベルとしては、まずは、"force majeure" や、"force majeure clause" というフレーズが、「不可抗力」「不可抗力条項」という意味だということを知っておくことだろう。

そして、実際に、予期せぬ出来事が起こったときに、取引先との間で結んだ契約書に "force majeure clause" が含まれていないかを即座に調べること。

さらに、契約書に "force majeure clause" が含まれていれば、それに基づいて、自社の契約上の義務を免れることができるか、または、相手方の義務を免除しなければならないかについて、速やかに検討することだろう。

この "force majeure clause" については、多くの法律事務所などのウェブサイトで解説されているが、次のLegalForceさんのサイトがわかりやすかった。

こちらのサイトに載っている "force majeure clause" の例を、引用させていただこう。

Article〇 Force Majeure
Neither Party shall be held liable or responsible for failure or delay in fulfilling or performing any of its obligations under this Agreement or any Accepted Purchase Orders if such failure or delay is due to any condition beyond the reasonable control of the affected Party including, without limitation, Acts of God, acts or orders of governmental authorities, fire, flood, typhoon, tidal wave, or earthquake, war (declared or not), rebellion, riots, strike, lockout, epidemic or pandemic.

第〇条不可抗力
いずれの当事者も、天災、政府機関の行為若しくは命令、火災、洪水、台風、高潮、地震、戦争(宣戦布告の有無を問わない)、反乱、革命、暴動、ストライキ、ロックアウト、流行又はパンデミック等(これらに限られない)、影響を受ける当事者の合理的な制御が及ばない状況に起因する場合、本契約又は承認された注文書に基づく義務の履行又は履行の失敗又は遅延について責任を負いません。

有事の際には、こういった条項が含まれていないかを、即座に探してみることをお勧めする。

また、契約書の文言としてだけではなく、より一般的なビジネス会話やビジネス文書においても、このフレーズは使われている。

例を見てみよう。

Many employees at our manufacturing site were found COVID-19 positive.  We can no longer produce and deliver our products by the delivery date.  Do you think we can use the force majeure clause to extend the delivery date?
(当社の工場の大勢の従業員がコロナ陽性と判明した。もはや納期までに製品を製造して引き渡すことは不可能だ。納期を延長するために不可抗力条項は使えると思うか?)  

We hereby notify you about a force majeure event.  On July XX, 20XX, Typhoon "Sazawe" severely damaged our distribution system.  The details are as follows:
(当社は本書をもって不可抗力事象の発生を通知いたします。20XX年7月XX日、台風「サザヱ」が当社の物流システムに重大な損害を及ぼしました。詳細は次のとおりです。)

 このように、"force majeure" というフレーズを使うのは、ビジネス上、「有事」と言えるような、困難な場面ばかりだ。そういった場面に遭遇しないことを祈るばかりだが、最近では、残念なことに、自然災害や戦争などが、あまり珍しくなくなってきたように思う。

突然の非常事態に直面した場合にも、余裕をもって対応できるよう、平時からこのフレーズを覚えておくとよいだろう。

ご参考になれば幸いです!

私の英語系の記事へは、以下のリンク集からどうぞ。

Kindleで出版中の私の電子書籍2冊(国際会議の英語と採用面接の英語についてのノウハウ本)も、よろしければ是非ご覧になってください。Kindle Unlimited対象です。

この記事が参加している募集

英語がすき

サポートをいただきましたら、他のnoterさんへのサポートの原資にしたいと思います。