【ラン＆グルメ】外出自粛下の目黒川ラン（中目黒～五反田）

コロナウィルスのオーバーシュート阻止のため、小池都知事の外出自粛を呼びかけが強まり、都民の自覚もかなり強まってきたと思う。

弊社でもバックオフィスは原則在宅勤務となり、数週間経つ。通勤時間がない分時間は増えたが、その分、一人暮らしの私は、朝から晩まで狭い部屋で、同じ姿勢で、誰とも顔を合わせず、一日を送る。スカイプやZoomで上司部下同僚とは話はするが、やはりパソコンの画面を通じての通信は、勝手が違い、味気なく、気を遣い、気がめいる。日々の挨拶や雑談がこうも重要だったのかと気づかされる。また、体もなまってくる。オフィスへ毎日電車で通勤し、オフィス内でも、会議室へ移動したり、トイレにいったり、コピーを取りにいったり、ちょこちょことした動きにも、結構体を使っていたんだなとわかる。

不要不急の外出は自粛せよ、ということについては異論がない。人命がかかっているのだから、全人類が協力しなければならない。他方で、免疫力・抵抗力を高めるためには運動をせよともいう。うつ状態になってしまうリスクもあると感じる。そこで私は、運動不足解消と、気分転換を兼ねて、ランニングに出かけることにした。ランニングは「外出」に他ならないが、私にとっては「必要」なものだし、複数の友人とつるんで走るのではなく単独走で、人の多いところを避ければ問題ないのではないかと思い、自己責任で決断した。

折しも桜の時期。東京の城南地区に住む私は、時々、目黒川沿いをランニングしている。池尻大橋から五反田あたりの、ちょうど桜の名所の桜並木に沿って。折しも、この日は桜のシーズンであり、快晴。満開を少し過ぎ、青空にピンクの桜吹雪が舞い散る、超・行楽日和のこの日、外に出るなというのはかなり酷である。

中目黒に到着。昨年までの桜シーズンの中目黒は、立錐の余地ない人混みで、その中を走ることなんてまずできなかった。でも今年は、散歩を楽しむ夫婦、カップル、家族連れと、ランナーが、まばらにいる程度であり、普通に走ることができた。こんなの初めてだ。橋の上など、桜が間近に見えるスポットでは、複数の通行人が、この時期にしか見られない桜の美しさに足を止め、ゆっくりと記念撮影をしていた。でも、皆、マスク姿だし、全く混んでいないので、十分なソーシャルディスタンスは取れている。やはり自粛要請が効いているのだろう。

ちょうど中目黒を走っているとき、カステラの福砂屋さんの看板が目にとまった。いつもは見ない看板だ。中目黒限定の、２個入りで、かわいい桜の柄の、手のひらサイズの立方体のパッケージに入っている「フクサヤキューブ」を売っているという。ちょうどお腹がすいてきた私は、汗まみれのみすぼらしい格好であったので、立派な店構えに少々躊躇したが、意を決してドアをくぐった。お店の方は、汚い格好をしたランナーの２７０円ぽっちの買い物にも嫌な顔ひとつされず、むしろとても丁寧に接客してくださった。店を出て、川沿いの橋のふもとで、目の前にせり出してくる桜を見上げながらいただいた。

桜の花びら舞い散る春の空の下、数キロ走って、糖分とカロリーを欲している疲労した身体に、ほどよい砂糖の甘さがじわっと広がる。

ああ、なんという至福！

それから五反田方面へ。大崎広小路近くまで来たとき、鶏肉の「信濃屋」さんに、いつもよりも随分長い行列が。ちょうどお昼時であるし、ここの大人気の焼鳥やからあげ、テイクアウト弁当を求めての行列だろう。私も時々、テイクアウトして家に持ち帰るのだが、この日はふと思い立って、いつもと行動パターンを変え、焼鳥を２本だけ買い（つくねと砂肝をチョイス）、近くの公園の桜の下のベンチで、一人、たっぷりのソーシャルディスタンスを取って、焼鳥をいただいた。

甘辛いタレが、プリプリと引き締まった鶏肉の身に絶妙にからみ、良質なたんぱく質が、疲弊した太ももやふくらはぎの筋肉を修復してくれる（気がする）。ドラクエでいえばベホイミが効いているような感じか。

ああ、なんという癒し。

その後も機嫌よく走り続け、自宅に戻ったときの私は、汗をかいて身も心もすっきりし、ちょっとしたＢ級グルメとの遭遇（セレンディピティ？）を楽しみ、空腹も満たされ、とても気分がよく、１週間の在宅勤務で鬱々としていた自分とは全くの別人になっていた。

東京やそのほかの大都市の外出自粛は今後も続くだろうが、今日のようなちょっとしたランニングは、私の心身の健康を維持するための救世主になるなあと思った。フランスなどでは、許される運動は、自宅から１キロ圏内１時間以内と決められているらしいが、このような単独でのランニング（＋ちょっとした買い食い）は許されてほしいものであるが、それすら許されないような逼迫した事態になっていくのだろうか・・・。