あぜ道

旅のラゴス

『旅のラゴス』 筒井康隆

あらすじ
高度な文明を失った代償として、人々が超能力を獲得しだした世界で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。ラゴスは壁抜けや集団転移などの奇妙な体験をしたり、王様になったり、逆に奴隷の身分にまで落ちたこともある。彼の旅の目的とはいったい何なのだろうか?

本書の舞台は、文明が失われてしまった世界である。ラゴスはまだ文明があった時代の書物を読みほどき、政治や経済、農学や工学など自分がもっている知識の一部をお世話になった町(書物があった場所や自分の生まれ故郷)に伝える。伝わった文明は、いい意味でも悪い意味でも町を大きく変化してしまった。

例えば、書物が置かれていた場所は、森の中で特産品というものがなく、さほど栄えていなかった。そこに、ラゴスが書物に書かれていたコーヒーの存在を教えてやるとコーヒーが高級品として普及しだし、町が賑わい数年の内にその町は王国へと変貌を遂げてしまった。
また、生まれ故郷では市長や旧友に今の経済や政治がいかに不完全なものであるかを教えた。その考えを聞いた市長は、影響されて発現が突発性のあるものになっていき周りを混乱させたり、革命を望むデモが起こりかねない状況へとなった。


文明とは徐々に変化し、適応させ使いこなしていくものであり、急速に発達した技術や文明は争いの種や宝の持ち腐れ荷になってしまうことを改めて感じた。

また、ラゴスの旅は自分の運命というものに対し、必要以上に反応せず、受け入れているように感じた。ラゴスは、王様や奴隷等旅の途中で身分が大きく変化する。しかし、自分の置かれている身分に左右されずに、ただ淡々と行動していく様が表現されている。
ここに、私たちの理想的な生き方に対してのヒントが隠されていると思う。現状に過剰に左右されずに長いスパンで自分の生き方を見ること、常に問いを見つけ行動し続けること、維持し続けるのではなく変化し続けること。

大切なのは、最終的に自分が生きている証を自分自身で見つけ出していることである。

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