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大学生の自立、母の自立

ちょっと裕福な家庭の大学生って、一番自立しにくい気がする。

法律的には大人。だけど、学費は払ってもらってるし、実家にも住ませてもらってる。稼ごうたって、扶養を超えない範囲でしかできないし、下手に所得が高いから奨学金も借りられない。親のすねに、めちゃくちゃかじりついている。

きっと大学を出たら、奨学金を借りずに学校に行けたことへの感謝が強くなるんだと思う。でも今は、おカネで家に縛り付けられてる感覚があって、ちょっとつらい。

たとえば、私はめちゃくちゃ寒がりだ。4月になった今も、こたつのスイッチはだいだい「強」。ぬくぬくしていると、母からこう言われる。「電気代がもったいない!節約しなさい。誰のおカネで生活してると思ってるの?」

これ、やっかいなのは、「じゃあこたつの分の電気代払うよ。1時間5円かかるらしいから、5×3で1日15円ずつ払うね」などと言うと、母をイライラさせてしまう所なのだ。

「そういうことを言ってるんじゃない」
「じゃあどういうこと」
「家族として節電に協力してって言ってるの」
「ごめんね、私はあったかくないとダメなんだ、
でもその分かかったおカネは払うから」
「だからそういうことを言ってるんじゃないっ、もういい」

最終的に、母がキレて終わる。なんなんだ。けど、母が私に言っている言葉は、母自身にブーメランしまくってる言葉なのかもしれないと、最近思うようになってきた。

母は、パートタイマーの主婦だ。正社員だったのは、結婚する前まで。以来、主に夫(つまり私の父)の収入で、暮らしていっている。母は私によく言う。「アルバイトがんばるのねえ。でも所詮バイトなんだから、つらかったらすぐやめて全然いいのよ」パッと耳にすると優しい言葉だが、「バイトは正社員(=夫)に劣る」という構造を、暗に示しているのだ。そしてこれは、たぶん、母も言われてきたことだったのだと思う。

「誰のお金で生活してると思ってるの?」という私への詰問は、母自身への詰問でもあるのだ。夫の収入がないと生活できない自分、頑張ってきたのにひとりでは暮らしていけない不安。その我慢を、我が子である私に、見せつけたいのだと思う、たぶん。「私はこんなに我慢してきた。だからあんたも我慢しろ」

そう考えると、女性って、つくづく損な役回りだよなと思ってしまう。母だって、かわいそうなのだ。かわいそうなお母さん。母から娘に呪いは伝授される。けれど、私は、それを断ち切りたい。

大学で4年間うんと学んで、新卒で就職して、自分のおカネで生活することが、かけられた呪いを解く道だと思う。だから私は、はやく大人になって自立したい。

お母さんも、呪い、解けるといいね。


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