この愛を間違いだとは言わせない

彼女の全てが愛おしかった。

風で君の濡れ羽色の髪が揺れる。とても綺麗だ。
君の瞳は夜の街の光で宝石のように輝いていた。何カラットだろうか。いくらでも買い取ってやろう。
潤いが決して絶えることない君の唇。独り占めしたかった。

痛いのが怖いと言った君はいつまでもイヤリングだった。おしゃれが好きだと言い張るのにピアスの痛みには負けてしまうそんなところが愛おしい。
新しく変えた爪の色を一番に自慢された。季節が変わるたびに装飾もガラッと変わる。新食感のスイーツを味わった気分になれるから好きだった。
お揃いのアクセサリーでも買わないかと誘われる。照れ臭かったので「また今度ね」とはぐらかした。
「いつもまた今度じゃん!」と膨れっ面する君を見たら我慢できなくてすぐに探しに行った。
君に似合いそうであるフェミニンなデザインの指輪をプレゼントする。自分も指につけるようになった。いわゆるカップルが買うペアリングみたいな気分だった。初めてのおそろいだったね。
服の着る系統が全く違うのに買い物に付き合わされたこともあった。
「どっちがいいと思う?」なんて聴かれるけど何を着ても可愛いんだから「どっちでもいいよ」とか怒られそうな返事しか出来なかった。そして必ず君は怒る。そんなとこも可愛かった。

雷が嫌いだって泣きながら夜中に電話を掛けてくる君はいた。怖いから眠れないって言うけれど泣いてるうちに空に対する文句は寝息へと変わっていった。
そんな無邪気な君の寝息を独り占め出来る自分は幸せだと思う。そのまま2人で夢に落ちていく夜も好きだった。

恋人に振られたと泣く君はいた。黙って抱きしめて頭を撫でる自分がいた。
君の恋愛相談だったり愚痴を聴くのは必ず自分だ。でも否定もしないしアドバイスもすることはない。泣き止むまで相槌を打ち震える背中をさするのが自分の役目。
笑顔の君が一番好きだけど最低なことに泣き顔を独り占め出来ている現実に優越感を覚える。歴代の彼氏には見せていないこの表情を自分は見れているのだ。
君の弱虫なところも自分から見れば長所だった。

強がりなくせに恋愛になると弱音を吐くという矛盾していて不思議な君が大好きだった。君のそばに居続けれるこの関係が変わらなければいいんだ。
ずっと、友達のままで。



私のこの想いを伝えたら君はどう想うだろうか。
純粋な恋心なんだ、恋を下心と捉えられてしまったらどうしようか。
伝えてしまえば君の隣で寝ることも、真夜中の電話も出来なくなってしまうのが怖い。
たくさんの思い出が私の好きの言葉一つで壊れてしまうんじゃないか。

私が彼女にとっての一番の理解者でありたいし親友だから前に進めない。

どうして世の中の多くの人間は男と女で恋をして愛を育めと教養してきたのだろうか。

どうして私たちは結婚できないんだ。何度生まれ変われば叶うんだろう。
結婚がゴールとは限らないのは知っているけど、結婚という言葉がこの世にあるならどんな愛の形にも結婚というチャンスを与えて欲しかった。

私も異性との交際を経験した事はあるけど私の理想である愛には当てはまらなかった。
結局君へ想う気持ちが愛だと気付いた。だけどこれからも打ち明けることはないんだ。

この想いを抱えて今何年目だろう、一生この想いを抱えて生きていくんだろうか。
でも、君が私の名前を呼んでくれるなら、慰めてくれと泣きついてくるなら、新しい服を買ったと自慢してくれるなら。それが何よりの幸せだと感じるよ。

君の成長を見れるならもうお腹いっぱいだ。一番の理解者でいさせてくれてありがとう。

こんな事を考えたのも今日は君の誕生日だったから。
たくさん食べてはしゃいだ彼女は私の隣で大きな口を開けながら寝息を立てている。
お誕生日おめでとう、これからも好きでいさせてね。



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