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今、この瞬間だけでも

今日は晴れ

日常が戻りつつある中、介護施設に入所している認知症の父を、ふと思い出した。
元気かな。
面会禁止になった2月末から会っていない。

面会禁止になる前は、衣類の洗濯を家族がしていた為、母と連携し、交互に洗濯物を取りに行っていた。
週に数回、他愛もない会話を楽しんでいた。

父は、私の顔を見るなり、

「どちら様でしたっけ?」から始まり、
「何しに来たの?」と決まって言う。

私の方は、

「お父さんの洗濯物を取りに来た」
「洗濯物を洗ってきたよ」
「今日は晴れてるね」
「元気そうだね、調子良さそう」
「歳より若く見えるよ」

こんな言葉をかけるだけで、父は喜ぶ。
えらいね~、なんて褒めてくれる。

そして、満面の笑みで、
「おたくさんと話してると、なんだか楽しい!心が明るくなるねぇ」

そりゃそうだ。私は、あなたの可愛い娘ですから。
私も、なんだか嬉しくなる。笑っちゃう。

父の記憶は1分ももたない。
この会話、実は数分間にすぎない。
この会話を何度も繰り返す。
何度も何度も付き合う。
今、この瞬間だけでも、幸せに感じてもらいたい。
1時間、こんな会話で過ごす事もあった。

父との会話は、ゆたかな時間だ。

この精神的な、ゆたかな時間は、衣食住の物質的なゆたかさがある上で成り立っている。

そして、物質的なゆたかさは、介護施設で働いている方々のおかげです。

いつもありがとうございます。
心より感謝申し上げます。

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