Letters 6通目
「課長ぉ…あたし、可愛くないですかぁ?」
「可愛いですよ。もっと自立すると、素敵な女性になりますよ」
ホームパーティーも後半に入った頃、金子さんは酔っぱらって前川さんに絡み始めていた。以前、彼氏とお泊りをしたって言ってたけれど…その彼氏は、いいのかしら。
「自立してますよぉ!もう立派な大人な女性ですぅ!」
「…確か、ご実家暮らしでしたね。一人暮らしを始めれば、自立する、という意味が理解出来るのではないでしょうか」
前川さんはやはり大人だ。正直、金子さんは可愛い顔をしている。そして今日のセクシーな格好をしていれば、大抵の男性は下心に火がついてしまうのではないか、と思う。…そうか、下心に火をつける女性では、ダメなんだ。
女性という武器を全面に押し出すのではなく、芯のしっかりした女性が、前川さんのいう素敵な女性なのか…
そんなことを考えながら、引き続き缶チューハイを飲んでいると、
「いやぁ、課長には感謝です!金子さんの相手をしてくれるし!」
面倒ごとから解放されて嬉しい、と言わんばかりの表情で隣に腰をかけたのは石井くんだった。オフィス内でもそんなに話しているわけではないので、少しドキドキしてしまった。
「えー、金子さん可愛いじゃん!課長が羨ましいなー!」
「小林…お前は女なら誰でも可愛いとか言うだろ!」
「そんなことないって!河合さんには綺麗、ってちゃんと言いますよ!ね!」
「そーいうことじゃなくて!」
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