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[小児科医ママが解説] おうちで健診:お座りの姿勢は、バリエーション豊か。お座りしない原因は?受診の目安。

「教えて!ドクター プロジェクト」の「乳幼児健診を知ろう!」にそって、解説させていただいている「おうちで健診」シリーズ。

前回はお座りについて、生後○ヶ月までに、どんな段階のお座りができていればOKか、を詳しく見てみました。


今回は、お座りの姿勢(バリエーション)、お座りできない原因、お座りの受診の目安をまとめていきたいと思います。

今回の主な参考文献はこちら。

●「正常ですで終わらせない! 子どものヘルス・スーパービジョン」
阪下和美、東京医学社、2017年

●「ベッドサイドの小児神経・発達の診かた(改訂4版)」
桃井眞里子・宮尾益知・水口雅、南山堂、2017年

●「乳幼児健康診査・身体診察マニュアル」
https://www.ncchd.go.jp/center/activity/kokoro_jigyo/manual.pdf
平成29 年度子ども・子育て支援推進調査研究事業
国立研究開発法人 国立成育医療研究センター


お座りの姿勢は、バリエーション豊か。


お座りし始めた!のはいいんだけど、なんだか姿勢がきになる・・・という相談もたまにいただきます。

結論からいえば「ずーっと変わった姿勢ばかりでお座りしている・その後の発達も遅れてくる」のでなければ、一時的な姿勢のバリエーション・個性でしょう。ということです。


お座りバリエーション
Photolibrary ②Imagenavi ③話題の画像

たしかに一般的なお座りの姿勢は、

① 両方の足が前になげだされていて&両方の股関節は外に向き&両方の膝は半分曲がっている

そんな状態です。

が、中には

②片方の足だけ前に出て・もう片方の足は後ろに曲がっている
③両足とも後ろにいって正座みたいになっている

こんなお座りの姿勢を見せるお子さんもいます。

●②や③の姿勢でしか、お座りができない。
●数ヶ月たってお座りが安定・慣れてきたはずなのに、やっぱり決まった変な姿勢でしかお座りしない。
●その後の発達も遅れてくる。

こんな場合は、足の神経が麻痺しているのではないか
といったことを疑う場合もあります。

が、②や③のようなお座りの姿勢がみられても、大部分は正常です。

とくにお座りをはじめたばかりのお子さんだったり、また取りたいおもちゃや、物理的な状況などから、致し方なく②や③の姿勢になることもあります。

というわけで、②や③のお座りをみても、焦る心配はないですし、無理やりん直す必要もありません。

①のお座りをしている時間もあるかな?お座りしてからどれくらい経ったかな?と見守っていただき、ずーーーーっと②や③でしかお座りしない状態が続いてしまうなら、医療機関にご相談を。

という感じです。



寝返りよりも前に、お座りができちゃった?


たまに「寝返りはまだなのに、お座りさせたら、できちゃうんです。順番が逆のような気がするんですが、大丈夫ですか?」というご相談もいただきます。

結論からいえば「寝返りとお座り、いずれが先にできるかは、それ単独ではさほど重要じゃない」ということです。

寝返りについては前回くわしく書きましたが、「寝返ってまで、自分の周囲の世界を見たいと思っているか」というような心の発達も影響してくるんでしたね。

なので、寝返りができるようになる正常な範囲としても「生後8ヶ月までに(寝返りするのが正常)」としている文献もあったことを、紹介しました。

これに対して「お座りの姿勢が保てるか」というのは、赤ちゃんの気持ちというよりは、「赤ちゃんの筋肉や神経が、ちゃんとお座りの姿勢をするのに適切に働いているか」という部分に依存しています。

首が座れば、生後4~5ヶ月くらいから、頭がガクンとならない程度には、お座りの姿勢はとれるようになることもありまsす。

なので、たとえば生後6ヶ月ころの赤ちゃんで、まだ自発的に寝返りはしようとしない。でも、お座りの姿勢をさせたら、できちゃった。そんな状態は、決しておかしいことではありません。
生後8ヶ月にやっと寝返りしだす可能性もあるので、そうすると、こんな状態が2ヶ月ちかく続くこともあるんですね。


また「(お座りの姿勢ととらせるとできるけど、)お座りをしようとしない」のも、別に正常でも見られます

ハイハイやうつぶせの状態から、お座りの姿勢をとる、というのは、赤ちゃんにとっては重労働です(前述のとおり、こうした動きがでてくるのは、生後9ヶ月くらいからでしたね)。
ほかにも取りたいおもちゃの位置など、単純に周りの物理的環境によるところも大きいです。


なので、お座りの姿勢を自分からとるのかどうか、は、ほかの発達で異常が目立つものがなければ、さほど重要ではありません。

お座りの姿勢をとらせたら、できる。それでOKです。



適切な時期に・適切なお座りができない場合は、神経や筋肉の病気も考える。


うむ。そろそろ7ヶ月~8ヶ月になるけど、お座りさせてもすぐ倒れるぞ。
そんな時に小児科医は、筋肉や神経の病気をうたがいます。

前回もふれましたが、寝返りができない原因の一つとして「筋肉の緊張が弱すぎる・強すぎる」ことがありました。お座りの場合も同様です。

お座りするためには、股関節や膝・足の筋肉の緊張が適度にリラックスしたり・緊張したりしなければいけません。
これが、筋肉の緊張が弱すぎてグニャグニャだったり、逆に緊張が強すぎてピーンと突っ張ったりした足では、お座りすることができません。

筋肉そのものの組織がやられてしまう筋ジストロフィーやミオパチー
産まれる前後での脳の障害によって、体全体の筋肉の緊張がコントロールできなくなる、(脳性)麻痺
脊髄が部分的に障害されて、足の筋肉を動かす神経がやられてしまう、神経の病気
そのほか筋肉や神経、脳の発達を障害してしまうような、染色体や遺伝子の病気。

実際に、9ヶ月健診でお座りができなかったお子さんで、後々の検査によって、脊髄性筋萎縮症Rett症候群といった診断がついたお子さんの報告があります(脳と発達 2015; 47 ; 433-7)。

ほかにも可能性をあげれば様々なものがありますが、どれも○万人に1人といったまれな病気です。お座りができない、ということだけで、こうした病気を疑うことはありません。

が、頭の片隅にはこうした病気の可能性も考えなら、お子さんの発達を数週間~数ヶ月かけて見ていき、必要な時に必要な検査や診断ができるようにしよう、と小児科医は考えています。



「お座り」についての受診の目安


それでは最後に、お座りで「受診を考えないといけないとき」はどういう状況でしょうか。
「教えて!ドクター」のフライヤーでは、「10~12ヶ月健診」の項目として、お座りができない場合に受診を考える、と書いてあります。

もちろん、これも一つの目安ではあるのですが、もう少しくわしく、今回みてきたお座りの発達段階もふまえて、受診の目安をお示ししたいと思います。


【「お座り」の受診の目安】

●生後7ヶ月:お座りの姿勢をとらせても、いつも、体がガクンと前に倒れてしまう。
●生後8ヶ月手を前につかないと、お座りの姿勢が全く保てない。

※自分からお座りをしようとするかは、あまり重要でない。ハイハイやうつぶせから、自発的にお座りするようになるのも、生後9~10ヶ月頃から。

変な姿勢のお座りが(お座りが最初にできてから数ヶ月たつなどしても)ずっとつづく。常に変な姿勢でお座りしている。

一度できていたお座りの段階から、ステップダウンしてしまう。


一番最後の「ステップダウン」というのは、以下のような状況を指します。

(以下は一例です)
生後6ヶ月で、手をついて座れるように。
→ 生後7ヶ月で、手をつかなくても座れるようになった!

と順調に来ていたのに・・・

→ 生後8ヶ月になったら、手をつかないとお座りできなくなった。手をついてもお座りの姿勢が保てなくなった。


というように、「以前はできていたことが、できなくなってしまった」という状態です。
医学的には(発達)退向といって、前述のような神経や筋肉、遺伝子や染色体などの病気を疑う一つの目安になります。


繰り返しになりますが、○ヶ月で寝返りができない、お座りができない、といったワンポイントの状態だけで、特定の病気を疑ったり、診断したりすることはできません。

その後のお子さんの、数週間~数ヶ月にわたる発達の状況(退向がないかも含めて)を見ながら、検査や診断をつけるタイミングを逃さないようにしよう。そのために定期的に通院してね。というニュアンスの受診です。



いかがでしょうか。

お座りについて、かなり詳しく見てみました。

お座りひとつとっても、色んな段階やバリエーションがあること。
お座りができないときに、小児科医が考えていること。
お座りができないときに、受診をする目安と、受診をする意味。

そんなことが伝われば幸いです。

(この記事は、2023年2月2日に改訂しました。)



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