[小児科医ママが解説] おうちで健診:お座りの姿勢は、バリエーション豊か。お座りしない原因は?受診の目安。
「教えて!ドクター プロジェクト」の「乳幼児健診を知ろう!」にそって、解説させていただいている「おうちで健診」シリーズ。
前回はお座りについて、生後○ヶ月までに、どんな段階のお座りができていればOKか、を詳しく見てみました。
今回は、お座りの姿勢(バリエーション)、お座りできない原因、お座りの受診の目安をまとめていきたいと思います。
今回の主な参考文献はこちら。
お座りの姿勢は、バリエーション豊か。
お座りし始めた!のはいいんだけど、なんだか姿勢がきになる・・・という相談もたまにいただきます。
結論からいえば「ずーっと変わった姿勢ばかりでお座りしている・その後の発達も遅れてくる」のでなければ、一時的な姿勢のバリエーション・個性でしょう。ということです。
たしかに一般的なお座りの姿勢は、
そんな状態です。
が、中には
こんなお座りの姿勢を見せるお子さんもいます。
こんな場合は、足の神経が麻痺しているのではないか
といったことを疑う場合もあります。
が、②や③のようなお座りの姿勢がみられても、大部分は正常です。
とくにお座りをはじめたばかりのお子さんだったり、また取りたいおもちゃや、物理的な状況などから、致し方なく②や③の姿勢になることもあります。
というわけで、②や③のお座りをみても、焦る心配はないですし、無理やりん直す必要もありません。
①のお座りをしている時間もあるかな?お座りしてからどれくらい経ったかな?と見守っていただき、ずーーーーっと②や③でしかお座りしない状態が続いてしまうなら、医療機関にご相談を。
という感じです。
寝返りよりも前に、お座りができちゃった?
たまに「寝返りはまだなのに、お座りさせたら、できちゃうんです。順番が逆のような気がするんですが、大丈夫ですか?」というご相談もいただきます。
結論からいえば「寝返りとお座り、いずれが先にできるかは、それ単独ではさほど重要じゃない」ということです。
寝返りについては前回くわしく書きましたが、「寝返ってまで、自分の周囲の世界を見たいと思っているか」というような心の発達も影響してくるんでしたね。
なので、寝返りができるようになる正常な範囲としても「生後8ヶ月までに(寝返りするのが正常)」としている文献もあったことを、紹介しました。
これに対して「お座りの姿勢が保てるか」というのは、赤ちゃんの気持ちというよりは、「赤ちゃんの筋肉や神経が、ちゃんとお座りの姿勢をするのに適切に働いているか」という部分に依存しています。
首が座れば、生後4~5ヶ月くらいから、頭がガクンとならない程度には、お座りの姿勢はとれるようになることもありまsす。
なので、たとえば生後6ヶ月ころの赤ちゃんで、まだ自発的に寝返りはしようとしない。でも、お座りの姿勢をさせたら、できちゃった。そんな状態は、決しておかしいことではありません。
生後8ヶ月にやっと寝返りしだす可能性もあるので、そうすると、こんな状態が2ヶ月ちかく続くこともあるんですね。
また「(お座りの姿勢ととらせるとできるけど、)お座りをしようとしない」のも、別に正常でも見られます。
ハイハイやうつぶせの状態から、お座りの姿勢をとる、というのは、赤ちゃんにとっては重労働です(前述のとおり、こうした動きがでてくるのは、生後9ヶ月くらいからでしたね)。
ほかにも取りたいおもちゃの位置など、単純に周りの物理的環境によるところも大きいです。
なので、お座りの姿勢を自分からとるのかどうか、は、ほかの発達で異常が目立つものがなければ、さほど重要ではありません。
お座りの姿勢をとらせたら、できる。それでOKです。
適切な時期に・適切なお座りができない場合は、神経や筋肉の病気も考える。
うむ。そろそろ7ヶ月~8ヶ月になるけど、お座りさせてもすぐ倒れるぞ。
そんな時に小児科医は、筋肉や神経の病気をうたがいます。
前回もふれましたが、寝返りができない原因の一つとして「筋肉の緊張が弱すぎる・強すぎる」ことがありました。お座りの場合も同様です。
お座りするためには、股関節や膝・足の筋肉の緊張が適度にリラックスしたり・緊張したりしなければいけません。
これが、筋肉の緊張が弱すぎてグニャグニャだったり、逆に緊張が強すぎてピーンと突っ張ったりした足では、お座りすることができません。
実際に、9ヶ月健診でお座りができなかったお子さんで、後々の検査によって、脊髄性筋萎縮症やRett症候群といった診断がついたお子さんの報告があります(脳と発達 2015; 47 ; 433-7)。
ほかにも可能性をあげれば様々なものがありますが、どれも○万人に1人といったまれな病気です。お座りができない、ということだけで、こうした病気を疑うことはありません。
が、頭の片隅にはこうした病気の可能性も考えなら、お子さんの発達を数週間~数ヶ月かけて見ていき、必要な時に必要な検査や診断ができるようにしよう、と小児科医は考えています。
「お座り」についての受診の目安
それでは最後に、お座りで「受診を考えないといけないとき」はどういう状況でしょうか。
「教えて!ドクター」のフライヤーでは、「10~12ヶ月健診」の項目として、お座りができない場合に受診を考える、と書いてあります。
もちろん、これも一つの目安ではあるのですが、もう少しくわしく、今回みてきたお座りの発達段階もふまえて、受診の目安をお示ししたいと思います。
一番最後の「ステップダウン」というのは、以下のような状況を指します。
というように、「以前はできていたことが、できなくなってしまった」という状態です。
医学的には(発達)退向といって、前述のような神経や筋肉、遺伝子や染色体などの病気を疑う一つの目安になります。
繰り返しになりますが、○ヶ月で寝返りができない、お座りができない、といったワンポイントの状態だけで、特定の病気を疑ったり、診断したりすることはできません。
その後のお子さんの、数週間~数ヶ月にわたる発達の状況(退向がないかも含めて)を見ながら、検査や診断をつけるタイミングを逃さないようにしよう。そのために定期的に通院してね。というニュアンスの受診です。
いかがでしょうか。
お座りについて、かなり詳しく見てみました。
お座りひとつとっても、色んな段階やバリエーションがあること。
お座りができないときに、小児科医が考えていること。
お座りができないときに、受診をする目安と、受診をする意味。
そんなことが伝われば幸いです。
(この記事は、2023年2月2日に改訂しました。)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?