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UTALIIのこと


もう今年で7周年のhair salon and spa UTALII。おめでとうございます。

ただ頑固で強いフィロソフィーを表現し続けることは意外と簡単で、それは思想のもとに生きて(そして死ぬ)美しさがあると思うけれど、もっと形を変えながらも確かに存在し続ける、なんていうか、微生物のような類のフィロソフィー(褒めてます)もこの世界にはありますよね。例えばUTALIIはその代表であると私は思っている。やわらかで、やさしく、そしてなんというか恐ろしいのだ。

以下は私がUTALIIのお店を作らせていただいた7年前、から1年後に書いたお手紙のような文章です。実は今UTALIIで働いている方が、お店に入る前にこの文章をたまたま目にして、スタッフ応募のお電話をかけたということを先日聞きまして(今年スタイリストデビューもされました!)私、なかなか重要な運命線を交差させているのでは!とまんまと浮かれて筆をとりました。

これまでのUTALIIとこれからのUTALIIへ、祝福と期待をこめて。なんだか最近は待合スペースにお味噌が売っていたり(その前は冷蔵庫の中の糠床を紹介された)、かと思えば海馬に火花が飛ぶような素敵なキャンドルを紹介してもらったり、で捉え所のない素敵な場所になってきています。勿論、私は今でも定期的にUTALIIにもそもそ通って髪を切ってもらっています。

※お店の情報は当時のままになっているので、ご来店をお考えの方は一度お店にお問い合わせくださいね。(でも予約はとても取りにくいかも)instagramが見やすいかもしれません。


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ああだこうだと、思い悩んでこの素敵なトピックスをどんなお手紙にしたためてご紹介しよう、なんてぐずぐずしていたら、見事に一年がたってしまった。私の一年で一番嫌いな季節だったこの時期 (3月頭、ホリデーシーズンとはもうさすがに呼べないし、なんとなく税務署が沸き立っているし、まだまだ寒いし、だけどきたるお花見(の献立は何にしようかと)考えると気ばっかり焦る時期)に間違いなく魔法をかけてくれた、奇跡の美容室のお話をさせてください。

私はかれこれ、もう15年ほど同じ人に髪を切ってもらってます。彼のいた最初の美容室の戸をくぐったきっかけは、家の裏にあったから、といってはかなり誤解がある、お店自体が何処か香のように香り立っているような、本当に素敵な場所でした。当時、たしかメガサロンブームみたいなものがあって、それになじめなかった私にとっては美容室自体が、乱暴な会話と行き違いばかりの億劫な場所でしかなかった。

大島さんはいらないお喋りはしないけれど、世の中に一定量必要なウィットだとか、リズムだとかをちゃんと心得ている人だったので、言葉が少ない相手でも断片を上手に拾い集めて、気持ちの良い時間を作れる人だった。(センスが良いというのはこういう事だ)たぶん、彼のお客様はおしゃべりが得意ではないけれど、言いたい事は沢山あるような難しい人が結構多いのではないのかな、想像だけれども。

彼は気持ちの良い人、という言葉がすごくしっくりくるような、風のような人で、私は村上春樹の海辺のカフカに出てくる「大島さん」がどうにもかぶってしょうがない。名前も一緒で、勿論中身は全然違うのだけれど、なんだかあの図書館に座っていたってきっと遜色ないから想像できてしまうのだろうと思う。(実際に大島さんをモデルにした小説だってあるんです、私の目に狂いはないです)

前置きが色々になってしまったが、そんなこんなで私はずっとこの大島さんという図書館の司書のような奇跡の美容師に髪を切って頂いている。

そしてそんな彼が独立して美容室を開くのだという朗報を一昨年の11月頃に耳にした。本当に光栄な事に、私にお店のデザインもろもろをして欲しいのだというのです。たぶんこんなことって人生の中で何度もあるようなことじゃない、是非にもお引き受けしたいと真っ先に思ったのだけど、やっぱり緊張は隠せない。だって、何か不具合があったら、私の髪の毛は行き場を失い、呪いのラプンツェルのように一生霞町の下水道を引きずることになるのだから。それはやっぱり避けたいのだ。

ウタリという言葉はアイヌ語で仲間や同胞という意味。彼の紡ぐ言葉や好きなもの、人を思い描いて、それを私なりに出来る限り丁寧に、でも恐れずに、拡げてゆくことにした。

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代々木公園のすぐ脇の、商店街の小さな叉路に面した2階のその一室は、UTALIIのためだけに用意された、街の“隙間”であると確信している。

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壁に飾った絵は僭越ながら私がお店と大島さんをイメージして、描かせて頂いたものと、昔の写真たち。

入ってすぐの本棚は、今、小さな本屋さんになっているよう。

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このシャンプースペースで施術していただくヘッドスパは本当に極上。

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集まるとパズルみたいに。コーヒーテーブルもつくりました。

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UTALIIのグラフィック。

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「睦月さん」という名前に合わせて、月のモチーフを随所に使わせて頂いてます。

これは去年の冬に作らせて頂いたポストカード。

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どこか遠くの、知らない場所から送られてきたような、お便りをイメージして。

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余談ですが、かつて大島さんと髪型を相談しているときのこと。

「一枚の海辺の写真を見せられて、こんな雰囲気の髪型にしてくれと言われたら、すごくわくわくする」というような事を言っていたのがとても印象的で、私はそんな心象を映したようなお店がつくりたい、と思って取り組ませて頂いた。

少しでもそんな想いがUTALIIに来る人たちへ届いていたら、とっても嬉しい。このような文章を描いたあとでも、本当はあまり教えたくないくらい私にとっては個人的な場所なのだけど、、

みなさんに是非知って頂きたいので。美容室が嫌いな人こそぜひ。

UTALII

HAIR SALON & SPA

東京都 渋谷区富ヶ谷1-51-4 野本ビル2F

03-6804-8639

https://www.facebook.com/UTALII.Salon



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