ゲームデバッグ(テスター)にこれから携わろうとしている皆さんへ

・はじめに


 こんにちは。なんだかんだあって5年ほどゲームデバッグ(テスター)の仕事をしていました。今回は、これからこの職種に興味がある人に向けて、良い現実と悪い現実をすべて描いていこうかなと思います。内容に一切の忖度等はないのでご安心ください。あと本当に事実だけを書くので画像とか挿入はしてません。本当に知りたい人だけ読んでください。

・ゲームデバッグ(テスター)とは


 このnoteを見ている人がいるのならば、説明はわざわざ不要ではあるとは思いますが、万一知らない人がいたら困ると思いますので一応どのような仕事かを説明しておきます。
 ゲームデバッグ(テスター)とは、主に発売前やアップデート前に一般プレイヤーより先にゲームに触れる仕事です。なんとなく知っている人は多いと思います。有名なのは「同じ壁に何回もぶつかる」「同じところをずっとうろうろする」とかなんか心が虚無になるような作業を永遠としているイメージだと思います。まぁ、一部を見れば間違いではありませんが実は大体の作業はそれではありません。
 じゃあどんな作業なのかと言いますと、Excelとかで作られる「チェックリスト」となるものが存在します。そのチェックリストに書いてあることをゲーム内で実施し、それが問題なくチェックリストに記載がある通りに動いてたら「〇」だめなら「×」をつけて報告する仕事です。じゃあどんなチェック内容があるかというと例えば「ショップで100円のものを購入したら、自分の残金が100円減っているか」や「このボタンをタップしたら該当する画面に遷移するか」とかになります。こういったチェック内容が大量にあるものが「チェックリスト」になります。先ほど言った「同じ壁に何回もぶつかる」とかは正直数としては少ないです。
 あと、発売前に触れるということもあり、最初のほうは結構楽しい仕事だと思います。周りは基本ゲーム好きな人が多いですし…。まぁそんな仕事です。やろうと思えばだれにでもできます。デスクワークが苦手な人だけはやめておいた方がいいかもしれません。

・実際に仕事をしてみて

 なぜ、先ほど「最初のほうは」結構楽しい、とわざわざ書いたのには理由があります。それは「単純作業が故の飽き」が大きいです。ただの「テスター」の場合は特に頭を使う!みたいな場面は一切ないので、本当の意味でのただの作業になります。確かに好きなゲームのジャンルの案件にアサインされたら楽しさはあるかもしれません。しかし、苦手なジャンルに当たってしまうとしんどいことがあります。案件は基本的には選べませんから…
 しかし、発売前のゲームに触れるのは楽しいです。遊びではないのですが「通し作業」という作業も存在します。これはまぁ普通にゲームをプレイして支障が出ないかとか見るという認識でいてください。そういった作業を割り振られた場合はちょっと楽しいかもしれません。
 誰でもできる仕事ではありますが、案外経験したことある人は少ないとは思うので、昔テスターをやったことがある、みたいな話は面白半分でできるかもしれませんね。ですが守秘義務が厳しい職種ではありますので、そこらへんはかなり気を付けてください。情報漏洩が一番の悪です。どのレベルでかというと
「あのゲームで〇〇というキャラが実装されるらしい」
これは完全にアウトです。言わなくてもわかると思いますが…
「昔〇〇というゲームのデバッグをやってたよ」
これもゲームデバッグ会社で就業してた場合は原則アウトです。
「(他案件の同僚に)このゲームの〇〇熱かったよ」
これもダメです。まぁつまり誰にも余計なことはいうなってことですね。
守秘義務をしっかり守っていたら特に大きな問題になることは余りありません。

・非正規と正規の差

 他の職業では「正社員」とそれ以外ならどっちがいいかといわれると基本的に前者でしょう。しかしこの職業は後者のほうがいいです。これは意外だと思われるかもしれませんが、ゲームデバッグ(テスター)のアルバイトや派遣社員レベルの人はみんな定時で帰ります。残業も滅多にありませんし、休日出勤もあまりありません。ゲーム業界といわれると残業の嵐だと思う人も多いですが実はそうではないんです。なのでアルバイトとかは定時で帰れますし(守秘義務以外の)責任もあまりないので気楽に楽しく仕事出来ると思います。私も初期はアルバイトでしたが、なんだかんだこの時期が一番楽しかったかもしれません。
 ただ、アルバイトとはいえ基本月~金のフルタイム勤務になりますので、学生の人には厳しい内容になっていると思います。いずれかの問題を抱えていて休んでいた人の社会復帰としてはかなりお勧めできます。特に後者の場合は。
 フリーターの人には特別お勧めしません。理由は仕事がある日とない日が不定期だからです。私の場合は忙しい時期からのスタートだったので運よく毎日ありましたが、最近は仕事がない日が多い方もいるようです。しかも、大体の企業は前日に
「明日は仕事あるよ 来れる?」
みたいなメッセージを急に飛ばしてきますので、掛け持ちでバイトしてる人とかは予定を立てにくい状態になるため、フリーターには微妙です。断ればいいと思うかもしれませんが断るとさらに仕事が来なくなります。仕事がないのは仕方ないですが、まぁ計画性も何もないですよね。

 そして、正社員・契約社員ですが、ここまでくると「リーダー職」以上の管理系の仕事になっていることが多いです。ただのテスターとは違い、クライアント先との連絡やスケジュール管理、新人教育とかもうやることが急に増えてきます。そこにやりがいを感じる人もいますのでこれが絶対マイナスなことではないです。どんな形態であれ、管理をしていたことは事実なので管理職の経験にはなります。しかし、テスターとは違って管理もしないといけないので「残業」がかなり発生しがちになります。毎日1時間、忙しくて2時間超は残業することになります。ここで、なぜアルバイトに前日に明日の仕事連絡が来るかというと、そこらへんも全部リーダーが管理しているためです。リーダーはかなり多忙になりますので、明日の管理だけで精いっぱいなことが多いです。これはリーダーが悪いのではなくて、今ある会社の形態が悪いんだと思います。
 あ、言い忘れてましたがアルバイトで入ったら早くて数か月くらいでリーダー職になることが出来ます。その際にバイトリーダーレベルの扱いなのか社員になれるかは企業によってさまざまなので確認しておいてください。

・給与面と環境

 これは有名ですが、給与面は「最悪」です。コンビニバイト以下か同等だと思います。これなにが酷いかって「リーダー職」であってもそれに近いことなんです。ただのテスターアルバイトだけがそうであるのならば
「安いけどゲームしながらお金もらえるからいいか」
ってなります。現に私もそう思いますし、コンビニバイトよりはこっちのほうが性に合ってます。(まぁ 企業によっては交通費でないんだけどね…はは)
ただリーダー職もテスターの金額にほんの少し味付けただけなので正直にいうと「終わって」ます。ちょっとふざけてる金額ですが、改善されない理由は大体のデバッグ会社が全部そうだからです。なんでそうなってしまっているかというと、
「企業はリーダー職の人がテストだけではなく管理業務をしていることをちゃんと把握してない」
からです。意味わからないですがそうです。ちょっとブラック寄りの働き方しても雀の涙なのでアニメーターに近い所はあるかもしれません。
 ここで1つの情報を開示します。ゲームデバッグの仕事は基本2,3年で辞める方が多いみたいです、なぜでしょうね。ちなみに退職する人で一番多い立場は「リーダー職」です。そういうことです。やめる人が多いので、企業はすぐにアルバイトをリーダーに上げます。そしてやめます。言ってしまえばあれですが何でリーダーがやめてるか企業はわかってないと思います。
残業等の環境を改善するか、給与面を改善するかしないとだめなんですけどね、偉い人にはそれがわからんのです。

・将来性(人)

 この仕事を長く続けていればプランナーになれるとか色々聞くとは思いますが正直厳しいです。それならまだ専門学校行ったほうがいいです。高いですが。リーダーですら「管理」の経験は正直ありますが、「ゲーム」としての経験は大して積めないので、転職の際は「ゲーム業界で働いてた」というよりも「管理の仕事をしたことがある」を推したほうがいいです。
 あと、キャリアプランが大してないため、普通に困ります。20代のうちにそれに気がつければいいですが、30代後半とかになってくると正直経験とかもあまりつめないのでしんどい状態になります。なので、ゲームデバッグ(テスター)としての将来性はほぼ皆無なのでそこは気を付けましょう。アルバイトとしての経験であるのならばそこそこいいのかもしれません。
「ゲーム系の会社で働いてた」
と腐っても言うことはできますしね。ただ10年も続ける仕事ではないことは頭に入れておくのは大事なことです。
ここまで言いましたが、仮に天職だと思ってずっと続けてリーダーたちを管理する「ゲームデバッグ(テスター)マネージャー」まで行く人はいると思います。この人たちが悪いとかそういうことが言いたいのではなくて、天職であるなら頑張るのは全然ありだと思いますよ。ただそこまでやれる人は一握りとなっています。それはスキル面ではなく、精神、体力面でです。お勧めはしませんが否定もしません。そんな感じです。大事な人生なので、よく自分と相談してください。

・将来性(企業)


 企業としての将来性はないとは言えません。現在は業界が伸び続けている時期なので問題はないです。しかしお偉いさんの中にはいつまでも古い考えの人や、いつまでも自分をベンチャー企業だと思ってる人がなんかいますので、そろそろ福利厚生や給与、待遇の面を考え始めないとだめだと思います。しかし、余裕がないのか考える気がないのかは知りませんが、ここ数年特に改善された雰囲気は感じ取れませんでした。急に発展しすぎて経営陣の脳の処理が追い付いてないかもしれませんが、そろそろ企業のOSのアップデートの時期が近付いているというかもう遅いくらいなので手を打つべきだと思っています。頑張っているリーダーの人、テスターの人のことも見てあげてほしいです。上によいしょしないと待遇はよくならない、そういった風潮が残り続けています。「実力主義」とうたってはいるんですけどね。
 ここまで書きましたが、世間的に問題視される日もいつかは来るとは思いますので、テストが好きな方、天職の方は本当に頑張ってほしいと思っています…。ちなみにデバッグ(テスター)の仕事はいつかAIでなくなるといわれてますがそうそうなくなりません。AIを入れるにもAIが見た結果を見る必要はありますし、どうしてもAIでは限界がある複雑なことは人がやる必要があるので。とはいえ今よりはアルバイトは減るのかなと思います。

・最後に

 ここまで読んでくれた人が居るのかはわかりませんが、最後にまとめみたいなのを書いておきます。
「ゲーム業界に触れてみたいという思いでアルバイトをするのは有り!」
「給料は低いのでそこを気にするならやめよう!」
「管理の仕事をしてみたいなら有り!」
「給料は低いのでそこを気にするならやめよう!」
「社会人復帰のためのアルバイトとしては最適」
です。
あとはまぁ長く続ける仕事でもないような気がしますので、あえて言う必要があるかはわかりませんが、途中でキャリアチェンジかキャリアアップをしっかりと考えておきましょう。そうでなければ私のように病むことになります。ここまで読んでくださり誠にありがとうございました。皆さんの「ゲームデバッグ(テスター)をやってみようかな…でもどうなんだろ」
「このままデバッグ(テスター)をやっても大丈夫かな」
という疑問を解決できる1つのお手伝いが出来れば嬉しいです。では!

(余談ですが、デバッグ会社ではなく、ゲーム開発会社の自社内テストは結構待遇が良かったりします。しかし滅多に求人が出ないことや、プロジェクトが終了するとかで解散とか結構あるので不安定です。気になる人がいたら調べてみてください。)

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