#263 悲劇

朝刊の配達は必ずしも順路通りという訳ではなかった。朝3時半迄に届けるなら新聞を取るといった人もおり、その一人の為に順路が崩れ、20分位ロスとなった。
深夜2時半位から配り始めるのでまだ真っ暗で街灯の少ないところは不気味さすら漂わせているエリアもあった。
裏が墓地でそのアパート自体の電灯も薄暗く、正直そこはお化け屋敷の様な怖さがあった。そういう時に限ってアパート2階の一番奥の部屋に配達しなければならなく、凄い勢いで走って配った

また、晴れていようが雨だろうが雪だろうが配達が休みになることは無かった。
ある日、台風が来ており、猛烈な風と雨で嵐の様な天気の時があった。
新聞が濡れない様に、雨用のビニールに入れて配らなければならない家も多く、より時間を要することになった。
マンションによっては1階の集合ポストに入れれば良い場合と、その部屋のポストに直接入れなければならないときがあった。
あるマンションの10階に入れなければならず、バイクを路上に止めて入れに行く必要がある。荒天の時はなるべくバイクを長い時間路上に止めておくのは避けたかった。それはバイクが風で倒されてしまう可能性があるからだ。
台風の日、マンション10階に入れて急いで戻ってくると、バイクが転倒しており、後ろに積んである新聞の泊めてあるゴムが外れ、新聞とチラシが風で大量に吹き飛んでしまっていた。吹き飛ばなかった新聞も激しい雨の降っている地面にさらされた為に水浸しになってしまった。
このまま配り続ける訳には行かず、配達所に戻り、新しい新聞を取りに行った。4月の連休前に初めて受けた痛烈な洗礼だった。心の中で泣きながら配り続けた。
いつもより時間が遅くなるので、あまり遅いと苦情が来てしまう可能性があるので、必死に挽回すべく配った。気を付けてもどうしても新聞が濡れてしまう場合があり、その際も苦情の電話が来てしまうことがあるので、踏んだり蹴ったりの状況に陥ることもあった。
続く…

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