#259 押し寄せた孤独感

母が新聞広告から探してくれた新聞奨学生は埼玉県川口市にある朝日新聞配達所で行うものだった。新聞奨学生は朝刊と夕刊の両方配達が多いのだが、ここは朝刊のみの様だった。僕は大変さなどはあまりピンと来ず、とにかく東京で浪人できるのであれば迷う余地なしと言う感じだった。
僕は不安よりも新たな場所で新しいスタートが切れる事に対する期待と喜びが占めていた。予備校は早稲田大学を目指す以上、高田馬場にある早稲田予備校しかないと即決だった。
早速、新聞奨学生の問い合わせをこの新聞配達所にした。空きがあるようで
申し込みを行った。トントン拍子に3月末に埼玉県川口市に行き、そこで新聞配達をしながら予備校へ通い、早稲田大学合格を目指すことが決まった。
僕は早稲田大学でラグビーをやるという思いは変わらずで、それを実現させるのはもう一年浪人して目指すしか選択肢がなかった。
 
上京する前に北見予備校へ挨拶に行ったところ、ろくちゃんはいまだ音信不通との事だった。僕は残念ながらろくちゃんに挨拶もできず、それ以降彼がどこで何をしているのかも分からなかった。

上京する日が来るまでは実家で受験勉強を再開し続けた。
受験結果を大学に問い合わせできるサービスがあり、問い合わせたところ
第一志望の人間科学部はあと数点足りないだけの様だった。
とは言え、不合格は不合格なので心機一転やるしかないと言う境地になれた。
3月末次男と共に上京。長男は後日次男と交流し、兄二人での二人暮らしが始まる。
上京した日は、お茶の水にあるホテル東京ガーデンパレスに次男と二人で泊まった。夜になり、明日は次男と別れて単身で埼玉県川口市に行くことを考えると急にさびしくなった。何か言い知れぬ感情が僕の心の中を支配していた。生まれ故郷を離れ、一人で慣れない場所で暮らすという現実が急にのしかかってきたのかもしれなかった。
この気持ちは兄に話すことはできず、自分自身で受け止めるしかなかった。
続く…

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