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イカに蝕まれながら

賞味期限切れの感動の名曲を思い出した夕方の車内はセピアで塗り尽くされた遺跡だった。

公衆便所で目を覚ました明け方の僕は、さっきまで気にしていたはずの彼女の在処を既に大海へ流してしまっていて

見知らぬ街は面影を再生するたびに姿形を変えて何処へとやらへ逃げていく。バイパスに面した生活がおもむろに人々の正気を蝕んでいくのが何故だか目を通して解るようになっていた。

失った正気を取り戻した僕は、再び公衆便所で昨日の朧を何処か遠くへ手放してしまうばかりだった。

何かを待ってるはずだけれど、何かは不確かで、不確かでいて、それはそれでまた何か、心地が良い。

潔くなんて、なれるか。

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