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詩・筑前煮

思い出すのは
なつかしい味
でもなく
あたたかい食卓
でもなく
延々と小言を
聞かされて
おいしくなくなった
筑前煮のこと

具材が減ってきて
見えてきた
出汁に浮かぶ油
まあるい油は
水玉みたいで
小さな円と円の境目を
お箸でつついて
ひたすら大きくして
やり過ごすのが任務

少し甘めの出汁も
耳が痛い話も
全部子供のためだった

親になった私の任務は
思い出してもらえる
記憶をいっぱい作ること
できれば苦いのは少な目で

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