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ワンタンマガジンをどうしていきたいのか

「沖さんはワンタンマガジンをこの先どうしたいと考えているんですか?」

 とあるバンドマンの方から言われた台詞だ。そう言えばちゃんと具体的な言葉にしたことがなかったので、簡単に文字に残しておくことにする。

 まずワンタンマガジンとは、自主制作の音楽系webマガジン。フリーランスでカルチャー系のライターを生業にしているわたくし、沖さやこが運営している。

 わたしにとってワンタンマガジンは、芸人さんのYouTubeと似たようなものだと解釈していただけるとわかりやすい。YouTubeで彼らがTVではできないことを、自分たち主導で発信しているのと同じように、ワンタンマガジンでは商業メディアでできないことを自分主導で企画して記事制作をしている。

 ただ芸人さんのYouTubeと違う点がひとつある。ワンタンマガジンは広告収入やギャランティがないということだ。

 つまり、収益を目的としていないので、サイト運営の目的は非常に観念的だ。自分がしっかりと納得できるいい記事だけを掲載していきたい。オリジナル記事にこだわりたい。高いポテンシャルを保ちながら続けていきたい。

 2014年春に設立を決め、11月に開設した。運営初期はわたしもまだ若く、ライターとしてのキャリアも浅かった。ゆえにサイトの存在を知ってもらうためにも、名のあるアーティストに載ってもらいたいと、がむしゃらに奮闘した。

 そのなかで、熱意で動いてくれる心の優しい人は少数派であること、自分自身の社会的無力さを痛烈に突き付けられた。完全に心が折れてしまい、インタビューのオファーをすることに恐怖を抱くようになった。それが2017年の頭だった。

 なかなか更新する余力が生まれないままだった2017年7月。1組のバンドとの出会いがあった。横浜町田を拠点に活動するMade in Me.だ。YouTubeの自動再生でたまたま彼らの最新MVが流れてきたことがきっかけだった。衝動的にメールを送り、メールでもらった返答で記事を作成した。

 彼らの出会いは、ライターとしてのわたしのスタンスに大きな気付きを与えた。自分は次に売れっ子になるアーティスト探しよりも、売れっ子の取材をして自分の名を挙げることよりも、自分がいいと思う音楽をいいと言っていくことに力を注ぎたい。志高くクリエイティブに音楽制作をしている人を、自分なりの視点で論じたいと思ったのだ。

 2020年5月にライター10周年を迎え、中堅と言われる立場になった。そこで行きついたのは「自分の商業メディアで培った経験を、商業メディアとの縁がまだない若いアーティスト/日々奮闘している同世代に還元したい」という願望だった。

 ワンタンマガジンは自主で運営しているが、わたし自身は商業メディアでの執筆経験しかない。たしかに売れっ子ライターではないし、有名な音楽雑誌出身というキャリアもないとはいえ、様々な人々が認めてくださって2010年からずっとライターとして活動できたことには胸を張っている。

 若いアーティストさんにプロのライターによるインタビューを受けること、原稿を書かれることを味わってもらえたら幸いだ。アーティストが音楽評論を受けることで得る何かがあるはずだと信じている。

 もしワンタンマガジンで商業メディアへの露出の疑似体験をしたならば、本当の商業メディアでのインタビューでその経験を肥やしにしていただけるだろう。

 更新頻度が低いため、同じアーティストさんを何度も何度も取り上げることは難しい。だが「商業メディアへの露出は叶わないが、自信のある作品ができたから、もっと違う視点からその作品の可能性を広げてみたい」とさらなる高みを目指しているならば、一度メールをお送りいただきたい。もし実現したあかつきには、出来る限りの力を注ぐ所存である。

 ワンタンマガジンは今月の29日で開設7周年を迎える。ワンタンマガジンが志高く音楽を発信している若い人たちのステップアップの場になれば、強い意志を持って音楽活動をしている自分の同世代の方々と切磋琢磨できる場になればと願う。それがワンタンマガジンとわたしにとっての、代え難い喜びだ。

最後までお読みいただきありがとうございます。