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(感想)緻密からの展開

(以下、筆者Xアカウントより転記)

映画『彼方のうた』観賞。街で女性に声をかけたり、男性の後をつけたりという行動を取っていた春。彼女のその行動は、彼女らを思ってのことなのか、だとしたらかつて彼女らと春に何があったのか。言葉の端々から彼らの過去を推測してみるのだが、物語は全容を明かさない。

かつて何があったのかを探ろうとするのならば、どのシーン、どのカットにも意味が付与されているようで、一瞬も見逃せない。だが、そういった見方をしなくとも、特別にすごいことは起こらない彼女たちが存在している風景に、じっと見入ってしまう。

前にも書いたことがあるが、見終わってもまだ続いているような映画は、いい映画なのだと私は思っている。『彼方のうた』もそういう映画で、映画館を出た後も、いつもなら気にも止めない他人の動き、ただ歩いているだけとかなのだが、それがなぜか映画的に見えてしまったのだ。

時間をおいてみて、ふいに「あれはもしかしてそういうことなのか?」と思えたりした。杉田監督の中に一応の答えはあるのだろうが、解釈は観客にゆだねられていると思う。

シネモンドにて杉田協士監督の舞台挨拶付きで観た。先に、解釈が観客にゆだねられていると書いたが、それはキャストやスタッフに対してもそうなのだろうと、監督のお話を聴いていて思った(多分。違っていたらすみません)。

監督のイメージは脚本上で緻密に完成していて、でも、ある意味閉じているその世界を、キャストやスタッフの理解と表現を信用して、皆で開いて広げていく。そんな作り方をしているのだろうかと感じた。


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