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お花見は桜じゃなくてもいいかもしれないと思う景色が津軽にあった ~古津軽本ライターの取材ノートから vol.1

はじめてまるごと一冊取材と記事作成をまかされた”古津軽本”(正しくは「rakra 別冊 古津軽」)が3月20日に出版された。

こっちにはもう少し詳しく。(一部ページが見られる)

”古津軽本”取材のこと

昨年の4月末から9月にかけて足を運び、毎回3日間ほど滞在して、取材を重ねた。合計で14,5日しか取材していないにもかかわらず、ノート2冊分の取材ができたのは、ひとえに青森県中南県民局の”古津軽”担当者のフットワークと調整力の賜物。

せっかくノート2冊分のお話を伺い、資料もだいぶ読み込んだけれども、印刷される本はページ数が決まっていて、取材・調査した内容のざっくり5分の1くらいしか書けていない。

8つの「物語」からなる”古津軽本”なのだが、章によっては3倍ほどの長さになってしまった原稿を泣く泣く削ったこともあった。そんなわけで、伝え切れなかった古津軽について、版元の了解を頂いた上で不定期に紹介したいと思う。

”古津軽”とは

津軽は知っているけど、古津軽ってなに? という人も多いのでは。古い津軽、ではなく、古(いにしえ)の津軽。いにしえから今につらなる津軽の暮らしや文化、その世界観をひと言で表した言葉が”古津軽”。

青森県の最高峰「岩木山」を中心に広がる津軽地方には、古くから脈々と伝わる津軽独自の信仰や祭り、雪深い地域ならではの食文化、手仕事などの風習や伝統が今も息づいています。そうした津軽の暮らしのなかに、大切に受け継がれてきた小さな物語が生き続ける里。雄大な岩木山を中心に広がる物語の世界観を「古津軽(こつがる)」と呼びます。

rakra 別冊 古津軽 

今、どうしても伝えたい🍎

”古津軽”はいにしえから伝わり、これからも伝えていくべきものではあるけれども、どうしても今のうちに伝えなくてはならないことがある。

それは
「桜の見ごろが早まったからと言って、せっかく取った弘前のホテルのキャンセルは早まらないで!!!」
ということ。

弘前公園は、おそらく東北でもっとも知られた桜の名所。私の住む岩手の人に尋ねるとやはり、弘前にお花見に行ったことがあるという人は多い。もちろん首都圏などからの観光客やインバウンドも多い。ホテルを確保するのは至難の業で、お花見の時期とねぷたの時期は前の年から予約する人も多いという。

そして、今年は全国的に3月の気温が不安定だったために、桜の開花も当初予想より遅くなったと思ったら早まったりして、どうやら気象会社やテレビ局も予想が難しかった模様。    

弘前公園のXの投稿(4月17日現在)では、満開は4月20~24日という。

青森の開花予想を見て、もしかしたらゴールデンウィークに弘前観光やお花見を計画していた人の中にはがっかりした人もいるかと思う。

でも私は声を大にして言いたいことがある。
弘前や津軽の春の代名詞は桜ではなくりんごの花だ、と。

私は岩手に住んでいるので、りんごの産地である江刺や盛岡でりんごの木々がかわいらしい花をつける様子は毎年のように見ている。それでもなお、言いたい。

津軽平野に見渡す限り広がる満開のりんご畑は、世界で唯一ここでしか見られない価値がある、と。

取材時、雨がちらつく天気でいまいち美しさが伝わらないのが無念……

りんごの花は桜よりもひとつひとつの花が大きく、遠くからでも存在感がある。

品種は不明。赤みが強いのでふじではないと思われる。

弘前をあまりよく知らない人は、津軽藩の城下である弘前は大きな都市だと思うかもしれないが、かつての城下を離れて10分ほど車を走らせれば、見渡す限りのりんご畑。のどかな田園地帯だ。

りんご畑の中を線路が走り、りんご畑の中を道路が走り、りんご畑の中に住宅街やショッピングモールがある。

360度りんご畑に囲まれた駅

さらに弘前町の北にある藤崎町は、あの「ふじ」の発祥の地であり、りんごの町。
JR五能線の林崎駅の小さなホームに立つと、ぐるっと一周360度見渡す限り、りんごの花畑が広がっている。

その様子は、カスミソウの花束を一面に敷き詰めたかのよう。

りんごの栽培は明治維新の後に藩士のなりわいづくりのために始まった産業なので、日本の田園地帯の代名詞の稲作(「田園」がそもそも田)に比べるとずっと歴史は浅いにもかかわらず、本当によくもこれだけりんごを植えたものだと驚くほど、本当に見える範囲がすべて一面、りんご、りんご、りんご……。

りんごで生きていくと決めたのであろう明治の津軽の人たちの固い決意をひしひしと感じずにはいられない光景だ。

桜満開の2週間後を要チェック

ちょうど桜の満開から2週間前後がりんごの満開だという。ちなみに昨年は5月1日、私が取材に行った時に満開を迎えていた。ここでは私の写真しか貼れないが、”古津軽本”にはプロが撮った鮮やかなりんご畑の写真がいくつも掲載されている。

何度でも言うが、桜の名所は日本に数あれど、平野に見渡す限りのりんごのお花見ができる土地は津軽を置いてほかにはない。

この絶景を見たことのない人は、ぜひ今年、りんごのお花見を楽しんでもらいたい。

次はいつになるかはわからないけれど、古津軽取材の熱気を忘れないうちに随時、書き残していきたいと思う。

まだ古津軽と出会っていないどこかの誰かのきっかけになりますように。


とってもすてきな古津軽のwebサイトでもりんごのページが👇


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