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小さな活動が大きなものを動かしていく

がんの患者さんをサポートする
美容師さんを育てたいと思った理由
きっかけを今回は書きたいと思う。

心理カウンセラーとして
様々な悩みを持つ相談者の方
(クライエントさん)と向き合っていると

医療関係者・病院の先生との関わり
一人の患者様に対して連携して
サポートすることが多々あり、
医療関係者の方とのパイプが
自然と広がっていきました。

今から10年ほど前、
がんの患者様を診ている先生から
「奥園先生は美容師さんと
仕事することが多いんだよね?」
と、お話がありました。

「抗がん剤の副作用における脱毛で
ウィッグが必要な人多いんだけど
助けてくれないかな?」と。

当時、先生からお話があったのは
医師や看護師は、多忙極める医療現場の中で
患者さんに的確な医療を施し
「命を守る」ために関わっていく。

そんなかかわりの中で
副作用による脱毛のことを
説明はするけれど、

「髪の毛をどうしたらいいか?」
「ウィッグをどうしたらいいか?」なんて
患者さんに話しているような余裕も時間もない。

でも、患者さんにとって
髪の毛が抜けることは
特に、女性にとってはとても大きな問題で

生活の質(QOL)を守るためには
髪の毛のことまでケアできればいいけれど
そんなことは、難しくて・・・

病院にカツラのパンフレットあるよ
と、紹介することくらいしかできないのに
副作用の中で一番つらいものの
第1位は「脱毛」と答える患者さんは非常に多く、
そこを美容師さんでやってくれる人いないかな?と。


最初、私は、先生のご紹介の患者様の
お住まいの地域をお聞きし

ウィッグが必要であれば
その地域の私自身の
仲良しの美容師さんに連絡し、

ご紹介するお客様が
・がんの患者様であること
・抗がん剤治療中であること
・ウィッグを必要としていること

そんな簡単な説明で
美容師さんも
「わかりました、引き受けます」と

想いから想いをつなげるレベルで
患者様のサポートを見切り発車で行った。

当時の美容師さんにお願いしてたのは
本当にアバウトな情報と説明で

「美容室は鏡だらけなので
できたら、個室にお通ししてほしい」

「無理なら、鏡を大きな布で
(シーツとかでもいいから)
覆ってもらって、お客様の姿が
大きく鏡に映らないようにしてほしい」

「他のお客様と重ならないように
できたら、営業前か営業後に
誰もいないお店で対応してもらえないだろうか?」

こんな大したことない情報で
お店の準備をしてくださり
患者様のサポートをしてくださっていた。

がんの患者様を支えるという強い動機ではなく
奥園から頼まれたから
ともかく、やってみる。

やるからには、しっかりやりたい

そんなお気持ちで、向かい合ってくださった。

患者様の中には
ウィッグをどう購入したらいいかわからなくて
自分でネットで購入し
届いたウィッグをつけたら

なんだか似合わないので
自分で前髪を切ってしまったり・・・

ウィッグは一度ハサミを入れると
もう髪の毛は伸びないので
やはり素人がハサミを入れると
もう、そのウイッグは
「使えないもの」になる可能が非常に高い。

ただでさえ、医療がかかっているのに
ウィッグにまで、高額なお金がかかって

しかも、何らかの形で失敗してしまうと
さらに購入しなくてはならないこともある。

そんなマイナスがマイナスを呼ぶようなことを
患者様にさせてしまっては

やはり「髪のプロである美容師さん」の力が
必要!と美容師さんと連携しながら
強く感じたのを覚えている。

美容師さんの力が必要な理由は
患者様が抗がん剤の副作用によって
「脱毛」だけで困って
ただ、ウィッグが欲しいだけでは
終わらないからだった。

脱毛の最初は、ウイッグの似合わせが
重要だけれど、治療の経過によって
髪の毛は少しずつ生え始め
再生毛という今までとは違う毛質の
髪の毛が生えてくる。

その後、髪の毛が生えそろうまで
カットも必要だし、
頭皮を含めたケアの方法も
重要である。

ウィッグの使い方やメンテナンスだって
素人の患者様には難しいこと。

また、脱毛部分は
髪の毛だけではなく
眉毛やまつげも抜けてしまうこともある。

その時に、どんな風に眉を書いたらいいのか?
どんな化粧品なら使ってもいいのか?

こんなことも患者様は
信頼できる「誰か」に聞きたいと思う。
相談相手が欲しいと思う。

そうやって考えると

医療の分野は主治医へ
髪の毛や美に関することは
プロである美容師さんへ


役割に合わせてサポートとしてもらうことが
必要だと思っていた。

お医者様に教えて頂いた
がんの患者様のお困りごとは
時間が経過していくごとに

美容師さんとお客様が出逢い
その出逢いによって、私自身も
現場の声を教えていただき
たくさんのことを学ばせていただいた。

学ばせていただいているうちに
素晴らしい出会いがたくさんあり

一般社団法人 リボネットという
「がんの患者様を支える
美容師さんを育成する団体」を
立ち上げることもできた。

今は、脱毛によってウィッグが
必要な患者様がきちんと申請をすれば

市町から、助成金を受けられる制度を
設けている自治体も多くなってきている。

情報を得ることも、とても重要で
その情報を髪のプロである美容師さんから
得てほしいと思っている。

最初のころ、美容師さんに無茶なお願いをして
患者様をサロンに送り込んでいたころ

「いろいろ無理ばっかりごめんなさいね」
と、お伝えしたら

アシスタントの子が
「オーナーが、がんの患者様を
美容師としてサポートする姿を見て

美容師の仕事って本当に素晴らしいですね。
あんな風に、患者様の心まで
ケアすることができていて
美容師の仕事ってすごいと思ったし
オーナーってすごいって素直に思いました」

と、話してくれたと嬉しそうに
お伝えしてくださって、

美容院に入社してくださる
新人の子に社会人になって何がやりたいか?
と、質問すると
「親孝行」「社会貢献」と
こたえてくださる方がとても多いので

このように美容院でがんの患者様の
悩みをお聞きしてお力になっている
オーナーの姿を見ることは
まさに、自分の「やりたいこと」
=社会貢献 なんだと思った。

がんの患者様が
ご来店くださることによって
自分の仕事の素晴らしさに気づいたり
自分も、いつかあんなふうになりたいと
思ってくれる環境を創れたことは
とても素晴らしいことと思います。

美容師さんと関わる時間の中で
がんの患者様を支える美容師さんは
これからの時代
必ず必要になると確信し
走り続けた10年間。

今では、がんの患者様をサポートできる
美容院も増えて
県や市がウイッグの必要性を理解し、
ウイッグで直接的に
医療のように命は救えなくても
QOLの向上と生きる力を与えることを
理解してくださった。

大きな進展だと思っている。

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