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【1989年100日旅】33日目。モスクワ

1989年5月8日は33日目。翌日の5月9日はソ連の戦勝記念日で休日なので、学校の後、父の友人オレーグさんのダーチャ(田舎の家)に泊まりに行った。森の中の小さな家。蛙が跳ね、山羊が通りがかる。タンポポやマーガレットが咲き乱れ、美しかったので、花束を作ってオレーグさんの妻スベータさんに渡そうと思って準備しておいた。

森の中には木でできた素朴な教会があり、イコンがかかっていた。キリストの生涯をよく知らなくても、イコンを見るだけでどんな人がわかる気がした。地元の人々がその教会を大切に守っているのが伝わってくる。敬虔な気持ちでダーチャに戻ると、山羊がスベータさんにあげた花束を食べてしまっていた。

オレーグさんは金髪で髭もじゃの背の高い人だったので、教会に感動した妹と私は彼にタンポポで作った花輪をかぶせ、キリスト様かのように奉った。オレーグさんは笑って付き合ってくれたけれど、後で父に誰かが本当に信じている神様をそういうふうに扱ってはいけないと窘められた。

そんな感じの33日目。旅は残り67日。

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