ビル・ゲイツ氏の未来予測:「2021年はよい年になる」
2021年という新しい年を迎えても、私たち人類は新型コロナウイルスのパンデミックの中にあります。ワクチンの摂取が既に始まっている国もある一方で、変異型ウイルスの出現により再び感染が急拡大している国もあります。
米マイクロソフトの創業者であり世界一の富豪であるビル・ゲイツ氏は、2015年のTedの講演で、以下のような警告と共に感染症対策の重要性を訴えていました。
「今後数十年で1000万人以上が亡くなる事態があるとすれば、戦争より感染性のウイルスが原因だろう。ミサイルより病原菌に備えるべきだ。」
この講演から5年。新型コロナウイルスという人類共通の脅威により、私たちの生活は一変しました。多くの都市でロックダウンが実施され経済が停止、東京オリンピック・パラリンピックも2021年に延期となりました。なお、世界の新型コロナウイルスによる死者は1月1日時点で8300万人を超えています。
ビル・ゲイツ氏は自身が共同代表を務める慈善団体「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」より、新型コロナウイルス対策に10億ドル(1040億円)以上を寄付しており、昨年12月にはさらに2億5000万ドルを寄付ことを発表。新型コロナウイルス対策に尽力しています。
そんなビル・ゲイツ氏が2021年の予測を自身のブログサイトにて公表。彼は今どんな未来を描いているのか、ブログの内容をまとめたいと思います。
2020年は壊滅的な年だった
新型コロナウイルスによる多数の死者・感染者、壊滅的な経済への打撃、ジョージ・フロイト氏らの死、甚大な山火事、過去に例を見ない異例の米大統領選挙などを挙げて、「2020年は壊滅的な年」だったと振り返っています。
2020年の全米テニスオープンにて,黒人に対する人種差別や警察による暴力の犠牲者の名前を遺したマスクを着用する大阪なおみ選手。
しかし、過去の疾病であればワクチン開発に10年ほどかかるケースもあったところ、新型コロナウイルスの場合は1年足らずで完成させた科学技術の進歩には脱帽したと述べています。
2021年に対する希望的観測の根拠
先数ヶ月でさらに感染が拡大するという予測がある一方で、それでも2021年に対して希望を持っているとゲイツ氏は言います。その理由は以下の2つです。
①マスクの着用やフィジカルディスタンスを取ることで、感染防止ができていること。
②ワクチンと治療法が確立されつつあること。
①に関しては、ワクチンが開発されるまでの間に、マスクやその他の方法が人々の命を守ってきたと振り返っています。
ワクチンに対する今後の見込み
Pfizerと、ModernaとBioNtechの共同開発のワクチンは、新型コロナウイルスへの予防効果が高く、安全性も確保されているとして、英国などで既に承認されています。これらのワクチンは新型コロナウイルスの特徴であるスパイクタンパク質に対して機能するため、今も開発中のワクチンにも同様の効果が見込める可能性が高いと述べています。
発展途上国における新型コロナウイルスのリスク
新型コロナウイルスが低所得国で蔓延するのではないかという予想が外れたことは幸いだったビル・ゲイツ氏は述べています。例えば,サハラ以南のアフリカにおいて、新型コロナウイルスの感染率と死亡率はと米国やヨーロッパよりもはるかに低く、ウイルス対策で成功しているといわれるニュージーランドと同等の水準です。
アフリカで新型コロナウイルスの感染率と死亡率が低い理由として,以下の3つが挙げられています。
①若年層の人口割合が世界の他の地域に比べて高いこと。※若者はウイルスに感染しにくい。
②農村部の人口が多いこと。※ウイルスの拡散が困難な屋外で多くの時間を費やしている可能性が高い。
③医療制度が整っておらず正確な患者数を把握できていない可能性があること。
新型コロナウイルスの感染者・死者数が予想より低かった(実際の統計値はもっと多いだろうが)が,問題はHIVやエイズ,マラリア,結核など他の深刻な病気への対応ができなくなっていることだと言います。また,患者がウイルスへの感染を恐れて診療所に行く機会が減ったことで,診断されないままになっている恐れがあるのです。その例として,インドにて結核の診断率が約3分の1に低下している現状について触れられており,今後さらに多くの人が死亡する懸念が述べられています。
まとめ
新型コロナウイルスのパンデミックが明らかになった時のことを、ビル・ゲイツ氏は以下のように記しています。
“this is like a world war, except in this case, we’re all on the same side.”
「これは世界大戦のようなものですが、この場合、私たちは全員同じ側にいます。」
そして、世界中の政府、企業、科学者が緊密に協力していなければ、これほどの進歩はなかっただろうと振り返っています。そして、ウイルスに対して世界が示した協調のあり方は、私たちが直面している大きな課題の1つである気候変動に対しても、具体的な一歩を踏み出すチャンスになると述べています。
photo by Xue Bai
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?