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さやか星小学校の教育の特色      <いじめ防止の3Rプログラム>

「いじめ防止の3R」プログラムを導入します

さやか星小学校では、いじめ防止に取り組みます。このことは強い約束です。どうして、このような約束をするのか考えて見ましょう。

まず、こちらは日本経済新聞の記事です。

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いじめ認知、最多の61万件 「重大事態」も最多に
 
文部科学省が22日に発表した「問題行動・不登校調査」で、2019年度に全国の小中高校などで認知されたいじめが61万2496件と過去最多を更新したことが分かった。6年連続で増えた。
このうち命の危険や不登校につながった疑いのある「重大事態」は前年度から121件増の723件。いじめ防止対策推進法施行後の13年度に集計を始めて以来、最も多かった。
いじめの認知件数は前年度に比べ、12.6%(6万8563件)増えた。増加幅が最も大きかったのは小学校の13.8%(5万8701件)増で、中学校は9%、高校は3.6%それぞれ増えた。認知したいじめのうち、83.2%が19年度中に解消しているという。
内容別(複数回答)では、からかいや悪口などが61.9%で最多だった。インターネットやSNS(交流サイト)によるひぼう・中傷は1万7924件で、5年前と比べて2.3倍に増えた。小学校では前年度から1002件増えて5608件確認された。
(日本経済新聞 2020年10月22日 17:15 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65322810S0A021C2CC1000

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少子化しているのに、件数が増加しているわけです。そうすると、いじめの存在率は相当のものであると考えられます。上記の調査は、あくまで認知できた件数です。

いじめによって児童生徒が自殺する事件が相次いでいます。こうした悲劇から大人は何かを学ばなければならないのですが、学校教育現場が学んだことというと「いかに、それをいじめと認識しないで、被害者の心の問題にすり替えるか」という、とても悪どい責任逃れの方法ばかり。これでは、いじめ被害者は二重に苦しめられることになります。

私自身のライフワークには、研究者や実践家として「いじめ問題」に取り組むことが柱の1つになっています。いくつかの本も翻訳出版しています。最新の教科書としては、アーンスパーガー著「いじめ防止の3R:すべての子どもへのいじめの予防と対処」(学苑社)が挙げられます。

リサイクル問題の「3R」は聞いたことがあるのではないでしょうか。「リデュース」「リユース」「リサイクル」の英語頭文字が「R」なので、「3R」です。「いじめ問題の3R」とは何か? これを知っている日本人は、これまで不在でした。なぜなら、このアーンスパーガー先生の教科書が作ったもので、上記の翻訳出版がなされるまでは英語の原著しか世の中にはなかったので、この原著を読んだ人しか知らないわけです。

いじめ問題の「3R」とは、「認識すること(Recognize)、対応すること(Respond)、報告すること(Report)」です。


児童に問題解決能力は「無い」と考えましょう

しばしばカウンセリングでは、クライアントの「自己治癒力」なるものを期待して、傾聴して待つような態度が推奨されます。この考え方を援用して、いじめ被害に遭っている子どもに「自己解決能力」を期待して待とう、というような態度を取る大人が少なくありません。

いじめというのは構造的なものだったり、比較的長期に繰り返されやすいものだったりするのですが、ここにいじめ被害者の「自己解決能力」を期待して待つというのは、非常に残酷な行為です。

そんなことをすると、子どもはどんどん学習性無力に陥っていきます。「どうせ大人に相談したって無理」というように。いじめに遭う経験は避けられないかもしれないのですが、子どもに絶望感を味わわせるようなことを絶対にしてはいけません。

私がまだ大学教員になって2年目くらいの頃、岡山県のとある町に教育相談員として派遣されたときのことです。

50代半ばのベテラン男性教員が相談してきました。数ページにわたるカラフルなノートの切れ端を持って来られました。この先生は5年生の担任でした。「実は、ある女子児童からこの手紙をもらいました」と見せられた、その数枚のノートを読んでみますと、切々と学校でいじめに遭っていることを訴える内容でした。

しかも、具体的に名前も行為も書かれていたのです。この男性担任が言うには、「これをもらった時に、私はビックリしてしまいました。そして即座に『大丈夫、先生はこれを見なかったことにしてあげるから』と伝えました」と言うのです。

私は「見なかったことにしてあげる、とはどういう意図ですか?」と尋ねると、担任は「先生に見せたことによって、もっといじめに遭うかもしれないので」と答えるのです。結局、この担任は何もせずに「子ども同士で乗り越えてほしい」というスタンスだったわけです。

こんな使えない担任は、文字通り使えないので、私は養護教諭に協力を求めて、この被害者を助ける支援を行いました。他にも似たような事例はいくつもあります。このようにして、いじめを見て見ぬふりをする教師や学校がある限り、いじめの認知件数は歪められて少なめになってしまうのでしょう。

上に紹介した「いじめ防止の3R」では、アメリカの調査研究では学校が把握するいじめ発生率が9%で、児童生徒に調査を行うとそれが38%になるというギャップを示した文献が紹介されていました。

いじめの問題については、アメリカでも過小報告されていることがわかります。実に、29%の子どもが現にいじめられているにもかかわらず、「それはいじめではない」とみなされているのです。

さやか星小学校では、いじめ問題が発覚した時にアンケート調査を行うような日本の他の学校とは違います。いじめは、いつでも起こるものであると認識しているので、「普段から定期的にアンケート調査を行なって、存在するいじめを早めに認識する」こととします。

したがって、いじめの存在率が日本一高い小学校になるかもしれません。逆に言うと、「いじめの放置率が0%」を目指していると言えるでしょう。

これまでの学校(公立も私立も)の多くは、「いじめゼロ」を目指しているのかもしれませんが、そういう発想では「いじめゼロを達成するために、いじめを隠す、いじめをいじめと認識しない」という行為に至りがちです。

もう一度、言います。子どもに、いじめの問題を解決する能力はありません。教師や大人が時間をかけて、問題を解決するための協働作業が求められます。

いじめ問題を放置すると学力が下がる


いじめ問題について、私はマスコミ報道のような「いじめられっ子がかわいそう」ということで戦っているわけではありません。そういう話であるならば、大人によって放置されている「いじめられっ子も当然、かわいそう」であるのと同じくらい、「いじめっ子の、その行為が咎められず放置されるのも、かわいそう」と思っています。そして、「傍観者も自分達に解決能力がない者として人生を歩んでいくのも、かわいそう」とすら思っています。

つまり、いじめを放置しても誰も得をしないことは明らかなのです。

子どもの学力面を見ても、いじめを放置すると学業成績が低下する(AERA, 2013; Nansel et al., 2001; Juvonen et al., 2011; Buhs & Guzman, 2007; Wang et al., 2014; Cohen & Freiberg, 2013; 米国教育省, 2013など多数)ことが、さまざまな調査研究から明らかにされています。逆に、学校と保護者が力を合わせて取り組んだ結果、生徒の学業成績が向上した研究(Starkey & Klein, 2000)もあります。

教科書や参考書、そして優れた教師がいて、まるで進学塾のようであるということも大切ですが、学校で大人が放置したままのいじめ問題が横たわっているとき、その時期の学習効率は低いものであると言わざるを得ません。学業だけでなく、社会性の発達においても支障をきたすことになるでしょう。

こういった世界中で共通する問題と、それを放置した結末や、きちんと取り組んだ際の結果は、多くのエビデンスがありますので、さやか星小学校では「いじめ問題を子ども任せにして放置しないこと」を約束します


日本で初めて「いじめ防止の3Rプログラム」を導入し実施しますので、どうか皆様、さやか星小学校の応援をよろしくお願いいたします。

11月7日日より、クラウドファンディングが始まりました。いじめ問題に対して共感してくださる方々から、少しずつでもご支援をいただければ幸いです。

クラウドファンディングサイトはこちら
https://camp-fire.jp/projects/view/596161

【文献】
ロリ・アーンスパーガー(2022)いじめ防止の3R:すべての子どもへのいじめの予防と対処(奥田健次監訳・冬崎友理訳). 学苑社.