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英語学習とは、孤独な筋トレである

夏になると思い出す

3月にコロンビア教育大学院に進学を決めてから、本当に多くの方にお祝い&壮行していただける幸せな毎日が3ヶ月ほど続いた。夫も16年務めた会社を辞めてニューヨークに行くと周りに報告したため、壮行会ラッシュの毎日だった様子。お互いそれぞれの友人たちに開いてもらった壮行会の帰り道に最寄り駅で待ち合わせをして帰る、というのが何日もあった。「なんか、結婚したときよりも祝ってもらえるよね」と、『物理的距離』のでかさについてよく語った。会いたいときに簡単に会えないというのは、やはり大きなことなのだなあ、と、日に日に、周りのみなさんからいただく言葉で、「本当にアメリカに行くんだなあ」という、なかなか湧かなかった実感を、深めていった。

今回の留学に際して引き払った自宅は、実は大のお気に入りだった。リビングに大きな南向きの窓があって、小学校のプールに面しており、もう少し奥には気の良い神社がある。昼間は、部屋からその窓を見るとまるで絵のように上手に、鮮やかな緑が覗いている。その隙間をキラキラと太陽が差し込んでくる、大好きな空間だった。

6月下旬になると、早くも小学生たちの声がプールから聞こえてくる。「きゃー!」「つめたーい!!」と子どもたちが楽しそうに声を上げる。先生たちは大きな声で、こどもたちが正しく安全にプールに入れるように注意を促す。私の部屋からその姿こそは見えないのだが、声だけでその様子が容易に想像できてしまうのが楽しかった。

先日、窓を開けて部屋を掃除していたら、今年もプール開きをしたことに、子どもたちのにぎやかな声で気がついた。その瞬間、なんだか胸がぎゅっとなった。この声を毎日きいていた去年の夏、私はほとんど一歩も外出せずに、この家で英語の勉強を死にものぐるいでやっていた時間が、走馬灯のように私の記憶に鮮明に蘇ったのだった。

海外大受験で最も大きな壁

アメリカの大学院に出願するためには、IELTS(アイエルツ)かTOEFL(トフル)という英語能力測定試験で基準を満たす点数をとらなければならない。例えば、私が合格したコロンビア教育大学院はIELTS9.0満点中7.5 か、TOEFL120点満点中100点をクリアしなければ、足切られてしまうのだ。どれだけ志望動機のエッセイや推薦状が良くても、英語力が足りないのでは入ってから授業についていけないだろう?ということなんだろう。まあ、おっしゃるとおりである。

このTOEFLを初めて受験したのは、2020年の8月だった。英検準二級と二級レベルのボキャブラリーと、中学レベルの英文法を頭に入れ直してから受けた。結果は62点。慶應受験からもう15年も経っており、あれから正直一度もちゃんと向き合ってこなかった英語。また勉強しなければいけない時が来るなんて、夢にも思わなかった。100点なんて、どうやってとるんだよ・・・・と途方に暮れた(しかもTOEFLはネイティブスピーカーや帰国子女の人でも対策をしなければ取れないと言われている難しいテストである)。これはきっと私だけではなく多くの受験生にとってそうなることが多いのだが、この英語のテストのスコアメイキングが、海外大学院受験で最も大きな壁であることは間違いなかった。1年だけでも、どこかで留学しておけばよかった・・・・と、今更すぎる後悔の念が、毎日頭をよぎった。

大学受験のときとの違い

15年前の大学受験と今回の海外大学院受験における英語の猛勉強、何が一番大きな違いだったかというと、内容ももちろんそうだが、その前に「コーチがいない」ことだった。大学受験のとき、私にはいつも坪田先生がついていてくれていた。基本的に、なにを、どんな順番で、どんなやり方で進めていけばいいか、すべて坪田先生が指示してくれていた。さらに、海外の大学で心理学を先行していた坪田先生は、受験中私のモチベーションが下がらないように、メンタルコントロールまでしてくれていた(これはでかい)。

私がすべきことは、そのうえで「もっと効率的に力をつけるにはどうすればいいか」を自分なりに工夫する、そしてそれを全力で実行することだった。もちろんやるのは自分だが、もうすでに信用できる道筋を辿ればよかった、とも考えると、なんて楽なプロセスだったんだろう、とも思う。どんどん力がついていくのが自分でもわかったし、先生は受験のプロだったから、私には「信じるもの」「指針」があったのだ。

しかし、今回はそれがなかった。自分で、「正しい指針」を作るところから始める。ネットには色んな意見や方法があふれている。多くの先輩達が成功体験とその方法をありがたくもシェアしてくれている。しかし、それらが自分に当てはまるかはわからない。だから、試してみて、その効果を自己分析して微調整していくか、ときにはそれを辞めて別の方法を試す、ということもしなくてはならない。

しかも、この英語のテストにはReading / Listening のほかに、Writing / Speaking の能力測定もあるのだ。暗記しまくれば勝ち、という世界ではないのである。筋トレと一緒で、地道なトレーニングが必要だった。つまり、「モチベーション維持」が肝なのだ。

具体的な英語学習についてはまた追って書くことにして(長くなる)、私が実際に山を乗り越えてみて感じた、鉄則だけ先にお伝えしておきたい。

純ジャパの英語学習における鉄則

「基礎を舐めると、詰む」ということ、そして「とにかく毎日続けること」である。

私がまずやったことは、ボキャブラリーの補充と、基本中の基本である中学レベルの英文法をちゃんと腑に落とす、ということである。これをやらずにいきなり問題を解き始めるなどしてトレーニングを開始すると、何が起きるかというと、モチベーションが続かない。「むっず・・無理じゃん・・・・」となって、かならず落ち込む。留学経験のない純ジャパは、かならずこうなる。(ちなみに、上述した基礎を固めてからやっても、どっちみち落ち込むは落ち込む)

あとは、前日に書き出しておいたTODOリストを、その日のうちにすべて消化できることを目標にしていた。その内容を、能力や時期に合わせて変えていく。その都度自分の能力とまだ(点数獲得のために)必要な能力を分析し、どこをどう強化するかを考えて計画を立てていく。これが、地味に本当にしんどかった。コーチの存在は、偉大だ・・・と、遅ればせながら痛感したのだった。

私のTOEFL点数変遷

こうして、かなり端折ったが、なんとか出願期限内にTOEFL120点中104点を獲得することができ、大学院から合格を貰えるに至った。今サラッと書いているが、もうそれは、本当に苦しい道のりだったし、毎日半べそ書きながらやってた。夫に何度も泣きつき、「もうだめかもしれない・・」「私は馬鹿なのかもしれない・・」と、うざすぎる愚痴をこぼしていた。

TOEFLの本試験は実に、20回受験した。点数の変遷は以下の通りである。本当に今でもちょっと泣きそうになるくらい、辛く、不安で、孤独なプロセスだった。。

2020年8月25日(初回)  R21 L11 S13  W17 Total 62
2021年2月2日  R22 L16 S15 W21 Total 74
2021年3月3日  R20 L20 S15 W22 Total 77
2021年4月6日  R20 L21 S17 W19 Total 77
2021年4月12日  R24 L17 S17 W20 Total 78
2021年4月24日  R22 L16 S18 W21 Total 77
2021年4月28日  R26 L20 S17 W21 Total 84
2021年7月6日  R20 L22 S17 W22 Total 81
2021年8月10日  R23 L23 S22 W25 Total 93
2021年8月18日  R22 L22 S22 W22 Total 88
2021年9月29日  R27 L24 S23 W23 Total 97
2021年10月13日  R28 L21 S23 W26 Total 98
2021年10月27日  R27 L21 S21 W24 Total 93
2021年11月9日  R29 L24 S22 W25 Total 100
2021年12月8日  R25 L19 S20 W23 Total 87
2021年12月12日  R26 L24 S24 W25 Total 99
2021年12月15日  R28 L23 S23 W23 Total 97
2021年12月19日 R29 L28 S23 W24 Total 104 
2021年12月22日 R29 L28 S20 W20 Total 97
2021年12月26日 R27 L28 S20 W25 Total 100

みなさんは、こんなに受けなくてもいいと思う。お金もかかるし(1回受講約3万円)、体力も相当消耗するのであまりおすすめしない。こうならないように、なるべく早く対策に取り掛かることを強くおすすめする。TOEFLはなめないほうがいい。参考までに、TOEFLにおける各レンジの点数が、一体どのくらいのレベルなのかわかりやすい画像があったので貼っておく。

この表は神田外語学院さんが「平成30年 文部科学省 各資格・検定試験とCEFRとの対照表」をもとに作成されたものを拝借しております。 
https://www.kandagaigo.ac.jp/kifl/contents/toefl-score 

英語学習におわりはない

そして、今、私はニューヨークにいる。1週間前に無事引っ越しを終えて、やっと最低限の生活環境が整ってきた。2年前に比べたら、段違いで英語が聞き取れるし、意思疎通ができる。ちょっと感動する。海外の大学院で同級生たちと互角に戦うにはまだまだ足りないのは言うまでもないが、それでも、かなりの進歩を誰よりもわたし自身が感じている。上記のプロセスの中で、少なくとも「英語完全初心者」から「一応英語話者」くらいには進化できたと思う。なんとか、スタートラインに立てたと思っている。

実は今日から、コロンビア大学のキャンパス内で行われる、外国人向けの言語プログラムの授業が始まる。ここからまた、リアルな英語学習が始まる。1年後の自分の成長を信じて、また頑張る。行ってきます!



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