1対100ではなく、1対1
これは社会人1年目に言われた、先輩からの言葉である。
ライターの仕事を14年続けているが、社会人1年目に言われたことというのは未だ大きな影響力がある。当時はいっぱいいっぱいだったが、今振り返ると土台作りをしてくれた会社に感謝しかない。
一冊丸ごと雑誌制作を受注した時は、一冊作り上げるだけで100件以上取材・掲載をする時がある。
構成して、アポを入れて、取材・撮影をして、原稿を書いて、デザイン入れをして、校正を出して、印刷に回すまでの作業を発売日から逆算してスケジュールを組む。
そうすると、時間との勝負もあり、大きな特集ものは力は入るが、小さいサイズのコマだと写真のカット数も少ないので、どうしても雑になってしまう場合がある。
仕事をしていると「取材をするなんて当たり前」になってしまうゆえに起きがちなのだが、これはとてもよくないことであろう。
取材される側としては、大小関係なく「取材を依頼されるなんて!」とびっくりな出来事である。そして取材されることにとてもうれしくなったり、ワクワクしたりして、発売を心待ちにしてくれる
けれどライター側は「自分の仕事をこなさなければ」という一心で、「たくさんある取材のなかの一つ」として考えてしまい、取材される側の気持ちを汲み取れないことが多いのだ。
数をこなす編集者・ライターというのは、どうしても忙しいので「一見丁寧に」やってはいても、「どのくらいの熱量で接せられるのか」というのは状況によりすごく左右されてしまうと思う。
だからこそ、上記の先輩の言葉というのは、今改めてとても大事だと思う。
これはライター以外にも言えるのではないだろうか。雑誌を担当するライターが一番ともに仕事をするのは、実はカメラマンだと思う。
私が「好きだなー」と思うカメラマンさんは、どんな案件であれ「絶対、相手に興味を持つ」ように思える。
編集者やライターの指示ありきではなく、まずは取材対象に興味を持ち、「自分はどう表現したいのか」を彼らは考えているように見える。そしてある程度「自分なりの答え」を持ったあと、雑誌や特集に合わせた内容をともに「どうすればよりよくなるのか」を相談してくれる。
こうやって一緒に現場を作り上げられるのも、「1対100」の仕事ではなく、常に全力で「1対1」としてどの現場も向き合っているからではないだろうか。現場での立ち居振る舞いは、カメラマンさんからほとんど学ばせてもらったといってもよいかもしれない。
熱量を持ち続ける。どの仕事も同じクオリティ、もしくはそれ以上で挑む。
熱量を持ち続けるには、常に「一対一」であるという意識がなにより欠かせないような気がする。どうしても経験年数が経つと仕事に慣れてきて、案件が増えるごとにこの気持ちを忘れてしまいがちだ。熱量なくしては良き仕事はできないからこそ、自分の熱がどこから生まれてくるのかを意識し続けることも同時に必要である。
新卒で入社した会社では、本当に大事にしなければならない心持ちを色々教えてもらえた。ここにいたからこそ、今ライターを14年間も続けられている理由かもしれない。
「初心忘れるべからず」。新卒当時は初めてのことばかりなので気が付かなかったことが多かったけれど、いま改めて振り返ると大事なことがたくさん隠されていたと気がつく。
若かりしゆえ、感謝の気持ちが足りていなかったなぁと、振り返るとすごく恥ずかしいことばかりである。改めて、一対一の大切さをしっかりと胸に留めておきたい。
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