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半年前の走り書きの成仏

「完全に永すぎた春でした」
そんなコメントが溢れるサイトを無心でスクロールしていく。
「永すぎた春」三島由紀夫の小説らしい。1956年出版。長らく付き合ったカップルが結婚せずして別れてしまうことを指す。


彼と付き合って6年半。遠距離になって3年。もうすぐ遠距離期間の方が長くなりそうな今日この頃。
彼のことは好き。ここまで長く付き合うと、恋愛とかそういうもの以上に、人として大事な存在。


普段であればそんなに気にしないことや許せることでも、余裕がなくなるとひとつひとつが気になってしまう。
シャンプーのボトルが倒れたままになってるのは、さすがに視力が悪いせいにはできないよなとか、
毎回私が浴室乾燥かけてるのに、それにも気づかないんだなとか、
こっちから「美味しい?」って聞かないと「美味しい」って言ってくれなくなってきたとか、
たまには週末何するとかどこ行くとか彼から言ってほしいなとか、
そんな、しょうもないこと。小さいこと。

言い争いになんてならないし、怒鳴り合いの喧嘩なんてしたことないし、話し合うことはあっても敵意を向けたことは一度もない。
でも、たまに、ちょっとずつつらい。



これだけ長いとそりゃマンネリだってするだろうし。遠距離はなかなか会えないし交通費もかかるけど、会える時間が貴重になったからこそお互いのありがたみがわかって、マンネリ防止にも繋がったと思う。
長く一緒にいて、お互いのことわかってて、「あれ」って言っただけでなんのことかわかるし、目線だけで何が言いたいのか伝わるし、食べたいものも休憩したいタイミングも、もうだいたいわかる。わかるけど、それは、配慮しないこととは違う。


配慮されてないわけじゃない。会いに行ったら駅まで迎えにきてくれること、なんだかんだ私に譲ってくれること、私のこと大好きでいてくれること。全部嘘じゃないけど、彼のためを思ってあげた癒しグッズが使われずに机の隅にずっとあるのを見てると、ちょっとだけ悲しくなったりもする。

無理してほしくないとか、負担になりたくないとか思うくせに、なんだかんだ求めてしまう。よくないね。



私も結構仕事がいっぱいいっぱいで、正直余裕がなくて、しんどい時に「つかれたしんどい」って甘えにいけたらまだいいんだけど、それを通り越すと、苛立ちになってしまう。普段は許せること、自分がやったらいいだけのことが、あれができてないこれがこうなってる、細かいところに目がいってしまう。余裕がない時に相手の弱音を言われても、受け入れられるだけの心の隙間がない。
お互いに余裕がない。お互い日々精一杯。多分どっちも悪くない。でもしんどい。

そしたら彼の存在が生活の中に必要不可欠ではなくなっていって。連絡取らなくても平気。会わなくても平気。普段なら連絡するようなことでも、まあいっかになる。ここ一緒に行きたいなとか、写真を思い出して楽しい気持ちになるとか、そういうワクワクした気持ちがなくなって。心が、驚くほどに動かなくなって。気持ちが冷めていくのがわかる。悲しいことに。

永すぎた春。恋愛なんてタイミング。熱いうちにおさまるところにおさまるべきなんだと思う。



冷めた熱はもう戻らないんじゃないかと心配したけど、1、2ヶ月の間本当に自分に余裕がなかっただけで、今はちゃんと元通りだ。

ちゃんと。元通り。ほんとに?
前まで悩んでたことってなんだっけ。日常であった「これ言いたい!」「あれ話したい!」そんな時に彼は隣にいなくって、だいたい忙しくしてて、言えないなと思ってるうちに言いたいことがなんだったのかすら忘れて、結局会った時にその話をすることもなくて、でももうそんなことにも慣れて。

慣れるの、人間。環境に適応していくから。しんどくても多少は順応していく生き物だから。
遠距離になって3年。彼にはやりたいことがあるから、多分これからもっと距離が離れていくんだろうね。大陸も離れて、時差もあって、話す時間も減って。
依存しすぎないようにしましょうとか、自立した恋愛をしましょうとか、よく世間では言うけれど、自立できてしまったら、私だけのあなたの存在が不要なくらい自立できてしまったら、それは恋人である意味はあるのかなって。付き合ってる意味あるのかなって。嫌いになったわけじゃない。人としては好きだよ。でも、自分の生活に必要じゃない人と、なくても生きていける人と、一緒にいることの意味ってなに?
ずっと離れてるわけじゃないってわかってても、それまでの期間に心が離れてしまったら、別の人を好きになったわけじゃなくても、私が1人で生きていけるようになったら、あなたとの関係は続けられないんじゃないかって。


支えなきゃいけない存在なんだと思う。応援しなきゃいけないんだと思う。不安だから行かないでなんて言いたくないし、私のせいで足引っ張りたくないし、私のせいで彼がやりたいことできないなんて、絶対良くないと思う。
でもこんな風に悩んでることは、彼は知らないと思う。




永すぎた春だと言って別れるほどのことではないし、自分にとって大事な人であることには変わりないし、失いたくない人だと思う。大事なの。
別れる理由はないけど、でも付き合う意味がなくなってしまわないか不安なの。
じゃあ結婚すりゃいいじゃんって、そんな夢のない結婚なんてしたくないの。せっかくなら、幸せの最高潮で結婚したいなって、欲張るじゃない。結婚ってなんなんだ。


将来どうなるかわからないことをどうこう考えても、結局どこにも辿り着かなくて、なるようにしかならなくて、でもなるようにしてたら私の心がどんどん麻痺してまあいっかがどんどん増えて、それが増えたことにも気づかないようになるんじゃないかって。それで関係性がうまくいくなら、それでいいのかもしれないけど。


結婚の約束をしてるわけでもない。でも、そんなことをあえて言わないくらい一途に愛情を注いでくれている彼に対して、自分がこんなで嫌になる。側から見たら安定したカップルなんだろう。
私だけの彼がいるだけでも、私のことを大好きでいてくれる人がいるだけでもありがたい話なのに、その彼を愛せないかもしれないなんて、贅沢すぎる話だね。

流れ出る涙はなんの涙なのか、自分でもわからない。

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