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2020年に読んだ本

死ねばいいのに 京極夏彦 
ホラー小説かと思ったら全然違った。読んでいる間ものすごくイライラした。登場人物の誰にも共感できず。意味のない会話や思考や愚痴や葛藤が延々と繰り返されて辟易とした。京極夏彦の短編はもう読まなくていいかな。

お文の影 宮部みゆき
三島屋変調百物語の続きかと思ったら違った。でもそこに出ていた登場人物のエピソードも含まれていた。子供が可哀想な目にあう話がいくつかある。

1984  ジョージ・オーウェル
面白いけど読んでいて楽しい話ではない。まずは動物農場を読んだ方がいい。村上春樹の1Q84とは全く関係のない話だった。
ディストピアのようなSF小説だけど、全てが非現実的というわけではない。テレスクリーンという人々を24時間監視する装置が出てくる。スマホやスマートスピーカーはいつでもテレスクリーンになり変われると思う。政府が公文書を書き換えるということがどれほど危険ないことかもよくわかる。過去の出来事を政府の都合のいいように書き換えたり、破棄したりする行為は、たとえどんな小さなことでも絶対に許すべきではない。
「階級社会は、貧困と無知を基盤にしない限り、成立しえない」
確か動物農場でも似たような台詞があった気がする。政府が人々を死なない程度に働かし続けて、搾取し思考を奪っていく社会。日本のような勤勉な国民ほど落ち入りやすいかもしれないと思った。

泣き童子 宮部みゆき
三島屋変調百物語の続き。おちかと青野が進展しているかと思ったらそうでもなかった。題名の泣き童子が一番怖かった。
山場のようなことはなかったけど、こうやって静かに進んでいくストーリーは安心して読めた。

事故物件怪談 恐い間取り 松原タニシ
オムニバスになってて読みやすい。ただ実話怪談を舐めていた。想像していたよりずっと恐い話だった。お化け的怖さと呪い的怖さと生きている人間の怖さも味わえた。でも自分好みのホラー作品だった。一人暮らしの部屋で読むのはちょっと怖かった。自腹で事故物件住むのは私には絶対に無理だと思った。

ヴァイオリン職人と消えた北欧楽器 ポール・アダム
初めての作家。シリーズ小説だけどこの話だけでも十分楽しめる。ノルウェーのベルゲンという場所が出てくる。いつも雨が降っているという描写があって、ベルゲンの天気をiPhoneで調べたら本当にいつも雨か雪が降っていた。

魔術はささやく 宮部みゆき
主人公の守が不憫だけど、優しい子でなんとも言えない気持ちになった。終わり方も宮部みゆきっぽくてよかった。
あまり細かい感想を言うとネタバレになるけど、ネットが無い時代は詐欺師にとって今より天国だっただろうと思った。

蠅の王 ウィリアム・ゴールディング
抽象的な表現が若干分かりにくかったけど、抽象化することによって怖いシーンが緩和されていた。子供達のころころ変わる心情もよく表現されていた。児童書的な話かと思ったけど思ったよりも残酷だった。

χの悲劇 森博嗣
割と自分好みの話だった。流石森博嗣は理系心をくすぐる。最後に衝撃が待っていた。森博嗣ワールドの人間関係が複雑すぎる。サイバー内の攻防みたいなのも面白かった。


この世の春 上・中・下 宮部みゆき
美しく恐ろしい話。長かったけど、中だるみという感じはなく、謎は少しずつ解けていく。宮部みゆきの作品を読み始めてから、漢字の読み方に強くなった気がする。お殿様というのが隠居後どうなるとか考えたこともなかったけど、すごく考えさせられた。

スロウハイツの神様 上・下 辻村深月
創作に携わる男女の物語。最初が衝撃的な出だしだったから、登場人物の誰かが死んだり、殺し合いでも始まるかと思ったけど、そんな展開ではなかったので安心した。

Sydney! ①コアラ純情篇 ②ワラビー熱血篇 村上春樹
2000年のシドニーオリンピックの話。オリンピックだけでなくオーストラリアの歴史や成り立ちまでわかる。マラソンについていろいろ考えてしまった。

僕の人生には事件が起きない 岩井勇気
最近ハライチのラジオを聴いているけど、ほとんどラジオで話したことの書籍版という形。でも表現がすこし柔らかくなっていた。最後の澤部についての話が一番面白かった。中身は無と言われた澤部の反応が気になる。でも岩井は澤部と話している時が一番面白いし、澤部のつっこみも岩井と話しているときが一番うまいと思う。幼なじみは伊達じゃない。

遠い太鼓 村上春樹
学生の頃に一度読んだ本。でも結構忘れている。ギリシャという国がなぜ財政破綻したかよくわかる。観光業について中途半端に開発したせいで素朴さが減り、かといって他の観光地ほど洗練されてもいない。そのせいでリピーターがいない。他に観光業に力を入れている国に負けてしまった。
ロードス島の4カ国語を話せるインテリな支配人は観光業の難しさを村上春樹に愚痴る。アメリカ人を標的にしたテロが起きても伝染病が流行っても、観光業は壊滅的な打撃を受ける。観光業だけで国としてやっていくのは非常にリスクが高いと。1988年ごろの話だけど、状況は今も全然変わっていない。

忘れられた巨人 カズオ・イシグロ
どこか物悲しい童話。長い。登場人物全員なんか疲れてる。そして不幸。登場人物たちの会話が所々噛み合わないまま進み、ちょっとイライラした。
でも、カズオイシグロは「日の名残り」でもそうだけど、戦争の無情さを書けるからノーベル賞がとれるのかなと思った。

訪問者 恩田陸
面白かったけど、少し残念。風呂敷を広げるだけ広げてオチが若干物足りなかった。老人たちの中に犯人がいるのかと思いきや、そういうオチじゃない。
結局父親が誰だったのかとか、なぜDV男は死んだのか、本当に事故だったのかとか、ほぼ推測のまま話が進んでそのまま終わってしまった。真相がぼかされたまま終わる感じが消化不良だった。

パーキングエリア テイラー・アダムス
アメリカのサイコ映画っぽい小説。ハラハラドキドキ。そしてなんとなく予定調和のように話が進んでいく。電池が切れかけのiPhoneとかオンボロの日本車とか。
最後はちゃんと読まないと違うラストかと思ってしまう。よく読むとちゃんとわかる。そこがねらいだったのか。指は失ったけど、多分金持ちになり有名人になり、ダービーはどんな人生を歩むのだろう。

恐い間取り2  松原タニシ
前回の事故物件のその後の話もあって、なかなか読み応えがあった。松原タニシが住んでいた事故物件より、他の人が住んでいる事故物件の方がやばいのが多くて、読んでいて気分が悪くなるくらいだった。

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ALL THE BEAUTIFUL LIES  ピーター・スワンソン
翻訳されてないから、仕方なく原書を読んだ。それでも面白い。私好みの話ではなかったけど、最後は結構スッキリした。なるほどなオチ。

BEFORE SHE KNEW HIM  ピーター・スワンソン
やっぱりスワンソンは面白い。ただ主人公がちょっと可哀想だった。男運がとことんない。なんとなく、伏線なのかと思う人物がそのままだったのが意外だった。

文豪たちが書いた 怖い名作短編集  
夢野久作とか夏目漱石とか江戸川乱歩の短編集。怖いというよりちょっと不思議で幻想的な話が多かった。ちょっと時代を感じる。雰囲気がどことなくどれも似ていると思った。

オフシーズン ジャック・ケッチャム
1980年台のメーン州の話。スワンソンの話の舞台もよくメーン州なので、ちょっと興味があり読んでみたけど、テイストはスワンソンとは全く違っていた。ソニー・ビーン一家とかから出たアイディアかなと思った。しかし、思考力が低い人物の描写を書くのって難しいだろうなと思った。思考力がない動物視点の話みたいな。

アンダーグラウンド 村上春樹
地下鉄サリン事件の被害者・被害者家族に村上春樹がインタビューをした内容をまとめたもの。ほぼ1年くらいかけて少しずつ読んだ。体調が悪くても、電車が運休になってもなんとしても仕事に行こうとする人たちが多くて、日本人って本当真面目だなと思った。

古書店主 マーク・プライヤー
パリを舞台に、古書をめぐる話。なかなか興味深い話だった。次にパリに行く機会があったらセーヌ川沿いを散策したいと思った。

ダマシ×ダマシ 森博嗣
森博嗣のミステリは謎解きを楽しむというより、そのプロセスを楽しむというか、小説ならではのどんでん返しを楽しむのが良い。今回はまぁまぁだったけど、やっぱり最後までわからなかった。

白異本 外薗昌也
読むと良くないことが起こる本。正直、電化製品の不調と重なって、すぐに読んで、年明け早々に売ってしまった。面白いけど身近に置いておきたくない本。

博士を殺した数式 ノヴァ・ジェイコブス
数学的天才が出てくる話は好きだけど、これはちょっとあまりにも眉唾な話だった。ダビンチコードみたいなスリリングさには欠けるけど、まぁまぁ良かった。

地下街の雨 宮部みゆき
ちょっとゾワっとするような短編集。タイトルにもなっている地下街の雨という話が一番面白かった。他はまぁまぁ。時代背景もあるのだろうけど、固定電話にまつわる話が多かった。女性をターゲットにしたイタ電が少ない時代に生まれて良かったと思った。

カクレカラクリ 森博嗣
なかなか読みやすい話だった。誰も殺されないし、ちょっと切ない話ではあったけど、子供が読んでも良い話。

村上ラヂオ 村上春樹
村上春樹のエッセイ。ファッション誌で連載されていたもので、本当にサラサラっと読める。村上春樹のエッセイは昔の方が面白かったと思う。年齢が上がるにつれてちょっと頑固になっているのかな?

三鬼 宮部みゆき
三島屋変調百物語の続編。江戸時代というのは10代くらいで嫁ぐのが当たり前みたいな感じだから、まだ10代なのに結婚について急かされる主人公がいて、何だか耳が痛い話だった。青野がいなくなったのは残念だったけど、この時代にはどうにもならないことが多分たくさんあったのだろうと想像できた。

あやかし草紙 宮部みゆき
三島屋変わり百物語もこれでおそらく完結なのかな?2020年は宮部みゆきの小説を本当によく読んだ。昔の話だから、読みにくい漢字とか色々出てくるけど、ずっと読んでいると慣れてくるから不思議だ。

コンビニ人間 村田沙耶香
あまり話題の本は読まないけど、短いしちょっと手に取って見た。現代の価値観に一石を投じるような話。現在では未婚も大して珍しくもない気がするけど、未婚でフリーターの人は確かに自分の周りにはあまりいないので、肩身が狭いと思うのかもしれない。


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