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〜放課後の音符〜

放課後の音符
山田詠美/著

新潮社 
https://www.shinchosha.co.jp/book/103615/

子供の頃から母がいろいろと縫ってまるで魔法のように一晩で洋服を作ってくれたり、小学校低学年の頃は学校から帰ってきたら近所の仲の良かった友達とジェニーちゃん人形でずーーっと着せ替えごっこをして遊んでばかりいた。  

かわいい布や洋服が好きで、見よう見まねで自分で作り出し、それがやがてファッション通信というファッション系、モード系の番組を見るようになった。
漠然とだけどいずれはファッションデザイナーになりたいと思うようになっていた。

高校生になって将来が具体的になってくる年齢になると、迷わず進路をデザイン•芸術系の大学にした。
当時はファッションデザインを学ぶには、専門学校か、家政科くらいだったのだか、そのどちらもなんだかなぁ……と思っていたら、
神戸にファッションデザインを専攻できる大学を見つけたのだ。
そして高校2年のときに、美術部へいき先生に進路のことを相談して、とにかく美術部でデッサンをひたすらかきこみしていた。


中学生の頃は、運動部にはいっていて放課後は毎日夜7時まで部活があり、もちろん土日も朝8時から夕方6時くらいまである。という部活漬けな生活だったから、
高校生になり放課後の時間をかなり持て余していた。
デッサンを毎日のように書いていてもまだ時間がある。
そのころから図書室に通い出し、しかし高校の図書室はすぐに読み漁りおわったので、町立の図書館に行き出していた。

放課後に美術室でギリシャ彫刻をもしたイケメン石膏像にむきあいデッサンしつつ、おわったら図書館に行く。

美術室は、校舎の端っこにあったので放課後は人気が少ない。美術部のメンバーも毎日描きにくるわけでもないし、そんな中シャッシャッとえんぴつを滑らせてデッサンしていく時間がなんだか好きだった。
もちろん本格的にデッサンをするのははじめてだったのでかなり難航したこともあったが、もとから絵を描くということは好きだった。
それに、当時好きだった同級生が授業をさぼったまま放課後まで美術室にいたりすることもあった。
デッサンに行ったら後ろのほうで顔をふせて寝ていたりしていて、なんか急に2人きり…なんてキュンなシチュエーションもあったりして、緊張しながらも時々たわいもない会話をするのも嬉しい出来事だった。


図書館ではとくに小説がすきだったので、
日本、海外とわず、棚の端から順に本を手に取り、はじめの2.3ページまで読み、なんかいいなぁとふんわりと思った書き出しやページ構成の小説を借りて読んでいっていた。

そんな本の中に山田詠美の”放課後の音符”があった。
登場人物は、なんだか達観した少年で彼の考え方や感じ方、彼の生活ぶり、他にもでてくる家族や友人たちも皆一様に格好がよくて、憧れるような心持ちで読んでいた。
著者の山田詠美さんがすっかり好きになり、他にもどんどん読んでいった。

小さな町で時間を持て余していた私は、
ファッションやおしゃれなことに興味津々で東京にも憧れがあった。
そういう時期に、山田詠美さんの価値観や世界観を知れたことは、後々まで私のいろいろなものに対する好みや価値観に大きな影響をうけた。
それがとてもよい影響だったなぁと今でも思っている。

放課後。
その響きがもたらす時間が少しずつ熟成されて、
やがて香水のラストノートのように、その人のベースとなる時がくる。
それに気づいた時に、あの放課後を新鮮な気持ちで思い返すことができた。





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