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人魚の島

 初めて移住してきた離島を舞台にして、小説を書こうと思う。
 学生時代には関西で8㎜フィルムで映画を撮っていた。
 当時は4期上に庵野秀明氏などの綺羅星のようなクリエイターがいたので、関西ではそういう自主映画の気風があった。私のいたサークルはそこそこ伝統もあって、手塚眞氏も作品を持参して顔を出していた。この方の父君がかの手塚治虫なのだと思うと緊張した。
 
「この島を舞台に映画は撮れんかね」と縁側でお茶を頂きながら、知人のおばちゃんが口にした。
「なら原作でも書きますかね」と答えた。
 私は日課として、毎日この島の外縁を自転車で一周している。時にはその後でバイクでも回る。その道すがらに色々と考えている。
 その帰路でむくむくとイメージが湧いてきた。
 私はいつもその段階で書き出してしまう。
 おいおい、もう少し考えてから走ろうよ。
 そう思うけど、もう後の祭りになってる。

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