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北米をバスで旅する 5

 ダウンタウンを抜け出した。
 AVISのレンタカーを駆り出して、異国の道路事情に戸惑いながら砂漠に出て、ようやく手に油汗をかかなくなった。いすゞジェミニの、GMバッジをつけたモデルで、信頼感がある。
 10日間のレンタルでカリフォルニアを北上して、サンフランシスコで乗り捨てする予定だった。
 まず10号線でラスヴェガスを目指していたが、当時は地図だけが頼りで、道路標識もここでは頻繁には見ない。
 運転しているとラジオから軽快なラテン音楽が流れてきたので、心配になって確認してみると反対方向のメキシコに向かって走っていた。気づくまでに100kmは走っていた。
 その旅では連日が700kmを超えるほどの走行距離だったが、それでも州外には届かない。アメリカ大陸の広大さは、交通手段がバスになって後にもっと思い知らされることになる。
 地平線の向こうに山脈が見える。
 目測で300kmは先だ。
 あれに届いたらランチにしようかと相棒に言う。
 その山脈の麓には必ず町があり、そこのスタンドで給油して、併設してある店でハンバーガーを食べる。そんな田舎のバーガーは、格別に旨い。
 そして山越えすると再び地平線に新たな山影が見える。
 次はあれに届いたら夕食をとって、宿にしようかとまた相棒に告げるのだ。

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