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如月より指折りて
朝の匂いがまだしている。
鳥籠みたいに手狭な部屋に入り、手探りで灯りをつける。
頭上には部屋干しの下着が、色とりどりにつけられたピンチがかかっている。ご褒美のショコラで、せっかく取り戻した気分が台無しだ。
朝の匂いって、柔軟剤の香りだったと今わかった。
どんなに工夫しようとも、この部屋からは私の日常がちょっとだけはみ出す。
まるで出来の悪いジグソーパズルのようだ。その大事なピースである私は、日中は盤外で過ごしている。生活が成り立つだけの給金を得て、盤面に戻ると途端に息苦しくなる毎日だ。
ソファとして使ったことのないソファベッドに、郵便物の束が地層になっている。年末ともなると、分厚いカタログが、郵便受けに眠っていて驚くことがある。
そこに倒れ込んで下唇を噛んだ。
両掌をお腹に当てて温めている。
はっと気づいて寝返りを打った。
空腹感はない。自分に投資したつもりで、行列に耐えてショコラティエのおススメを入れたばかりだった。
目線はカレンダーの数字を追っている。
しまったなぁ、計算をしくじった。2月は28日しかないじゃない。その3日という数値で追い詰められている。
外には出させたけど、それまで生だったし。
あいつ、嫁とはご無沙汰だからってさぁあ。
私もちょっとお酒入ると調子乗っちゃって。
いつ相談したらいいんだろう。遅れているんだったら、まだまだなんだけど。気づいたらまた掌がお腹の上にある。ここに息づいてはいないよね、悪いけど。
もう一度カレンダーを見つめなおす。1月の記憶をたどっていく。その時からもう一度計算を指折って繰り返している。
あの憂鬱な痛み。
それがもう懐かしいなんて。ソファの上で身体が自然に丸まっている。
まるで胎児のように。
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