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【詩】せかい

あたし言葉や文学が好きなんじゃなくて、ただ夢の中で生きていたいだけなのかもしれない。

他人が書いた詩や小説で泣くのはあたしが馬鹿だからなのかもしれない。他所様の世界に身を委ねて、何処かへ運ばれて、最後の一文字を見送った後はすっかり元に戻ってしまって。

他人が他人の書いた世界で生きているものなんだと信じたいのよね。あの人は甘ったるいデザートを口に含んだままで、あの人はカメラを海に向けたままで、あの人は小さな部屋にこもったままで。

彼らだって現実の中で目覚めて、コンビニで買えるものを口にして、初めて履く靴で靴擦れを起こすのに。
それが私には到底信じられない。
自分が理想の人間になれないから、綺麗な人を綺麗な詩の中に閉じ込めておきたいんだね。そしてそれが恐ろしいことなのも分かっている。

いつか取っておきの世界をあたしがつくれますように。
その世界の全てがあたしの本物になりますように。

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