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インド一人旅したら死にかけた話 【第3回】

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ガンジス川へ

朝は意外とスッキリ目覚め、チェックアウトの後、アプリでタクシーを呼んだ。10分ほど待つとちゃんとホテルの前まで来てくれて、ガンジス川まで約40分の道のりを出発した。ドライバーは無口なおじさん。順調に走り出したが、少しするとおじさんはスピードを緩め、路肩にタクシーを止めた。

「チャイ飲まない?」

とのことだった。降車し、彼に付いていくと、オンボロの商店でチャイを一杯おごってくれた。インド人の善意に初めて触れた瞬間だった。

あま〜い


お礼を言い、タクシーに戻って再び出発。順調に進んでいったが、ガンジス川付近に近づくにつれ、道幅は狭く、あり得ないぐらいの交通量になっていった。道には車、自転車、トゥクトゥク、バイク、歩行者(!)が入り乱れてカオスだったが、不思議なもので車間距離数センチになっても絶対にぶつからない。阿吽の呼吸と不文律みたいなものがあるんだと思った。

そんな光景を眺めているうちに無事に到着。また変な露店の揚げ物を食べ歩くなどしながら、迷路のように細い路地を歩いていった先に広がっていたのは、規格外の川幅と長さを携えた、まさに「母なるガンジス」だった。

沐浴する人もたくさん


ガンジス川ではまず、「ガート」を見に行った。ガートとはガンジス川のほとりにいくつもある、ヒンドゥー教徒のための火葬場のこと。そこでは亡くなった人々が綺麗な布で包まれ、ガンジスの水で清められたのちに物凄い炎で焼かれていく。神聖な場所ということもあり、観光客はなかなか近づけそうになかったので、少し離れたところからしばらく立ち登る炎を眺めていた。その様には不思議ともの悲しさは感じられず、どこか美しくもあり、なるほどヒンドゥー教徒の輪廻転生思想にも合点がいった。

奥の煙が出ているところが火葬場


散策〜本場のカレー

その後は周辺を散策。全体的に鮮やかな建物や路地が多く、歩いているだけで楽しかった。路地にはたくさんの土産物屋が並び、禍々しいアクセサリーや謎のスパイスを記念に買った。特にスパイス屋さんの店主は日本語が堪能でちょっと胡散臭く、値段も相場より高い金額をふっかけてきているような気がしたが買ってあげた(買わされたとも言う)。「この店には青汁王子も来たんだよ」とよくわからない自慢もされた。(実際ここで大量に買ったスパイスは万能すぎて今も重宝している。)

素敵なペイント


昼時になって、Googleマップで見つけた小さなカレー屋に入った。入国してからというもの、屋台でしか食べ物を買っていなかったのでお店に入るのは初めてだった。注文したのは「パニールバターマサラ」というブロック状のチーズが入ったカレー。これがあり得ないぐらいうまかった。日本で食べるインドカレーも好きだが、ちょっと比べ物にならないぐらいだった。米とかスパイスとかが違うんだろうか。

また食べたい


その後はこの町で有名だという「BaBa Lassi」というラッシー屋さんに行った。小さな店内に座り、パインラッシーを注文すると店主が、「ハァァ〜〜〜〜〜〜〜…」という「人ってこんな長いため息吐けるんだ」ってぐらいの大きなため息を吐きながらラッシーを作り始めた。そうして運ばれてきたラッシーは、およそおっさんのため息入りとは思えないほど器に綺麗に盛り付けられ、口にしてみるとこれまたあり得ないぐらいうまかった。全部がテキトーに見えて、出てくるもののクオリティは高い。つくづくインドは不思議である。

パインラッシー
スプーンですくって飲むスタイル


お腹も満たされたところで、また付近を散策した後、夕陽が出てきたのでボートに乗ることにした。客引きのおじさんに値段交渉し、手漕ぎボートに乗せてもらった。劣悪な水質の濁ったガンジスの水に反射する夕陽は、図らずも神聖な雰囲気を醸し出していて、とても綺麗だった。

後で気付いたことだが、このボートに乗っている間に蚊に20箇所ぐらい刺されていた。インドの蚊に刺されると下手したらマラリアかデング熱を発症する可能性があるので、本当に何もなくてよかった。

ガンジス川と夕陽
日が暮れると礼拝の儀式が始まった


空港に向けて出発〜突然のジャスティン

夕陽も見たところで、このあとは飛行機でまたニューデリーに戻り、翌朝に別の街に向かう予定だった。ガンジス川に別れを告げ、トゥクトゥクを拾い、空港へ向かってもらった。

少し走ったところで、スペイン人のバックパッカーのお姉さん2人組が相乗りしてきた。これにテンションがブチ上がった様子のトゥクトゥクドライバーはなぜか、ジャスティンビーバーの「Baby」を爆音で流し始めた。高校生ぶりぐらいに聞いた「Baby」は思いのほか美メロで、馬鹿騒ぎしながら熱唱するお姉さんとドライバーを見ていると、なぜだか涙が溢れそうになった。アナザースカイのエンディング見てるのかと思った。

ドライバーのおじさん
楽しそう

お姉さん2人が先に降り、僕だけ引き続き空港まで連れて行ってもらっていると、ドライバーは急にトゥクトゥクを停め、ひとりでどこかに消えてしまった。10分ほどして戻ってきたドライバーは僕に「ここから先空港まで行くにはトゥクトゥクだと限界があるんだ。代わりに俺の家族が運転する車が来てくれたから、それに乗り換えてくれ。」と言った。マジかよと思ったが、たぶん大丈夫だろという直感で、インド人家族4人が乗るバンに乗り換えた。異国の全然知らない家族の車に日本人ひとりというおかしな状況だったが、車内で飛び交うヒンディー語の会話を聞き流しながら進んでいくと、 はたして直感通り無事に空港に着いた。車を降りる時にチャイ代(18円ぐらい)をせびられたが、かわいいもんだと思ってあげた。

その後、ニューデリーへと戻る飛行機に乗れたはいいものの、出発は1時間半ほど遅れ、到着する頃には日付が変わろうとしていた。まあこんなこともあろうかと、すぐチェックインできるように空港の目の前にホテルをとっていた僕は、そこに向かう道を調べようと、Googleマップを開いた。


絶望した。


第4回へつづく



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