アナリストが実際に考えている企業分析 ~株価に一喜一憂しないためには企業の価値に注目する~
私たちアナリストは企業を調査・分析し、さわかみファンドの価値を高めるための提言を日々しています。
(アナリストの仕事についてはこちらをご覧ください)
今回はアナリストが調査・分析で実際に考えていることを少しお話したいと思います。
アナリストは企業価値を算定する
まず「さわかみファンドの価値を高める」手法として、当社はみなさまに以下のように示しております。
株式で言えば「企業の価値を見積もって株価が割安な企業に積極投資する」ということです。
アナリストは企業の価値を見積もるために様々な調査をしております。
ただ、企業の価値を見積もると言うのは簡単ですが実行するのは非常に難しいです。
そもそも企業価値とは何だという話ですが、ファイナンスの世界では
「企業価値=事業価値+事業以外の資産価値」
とされています。
しかし、事業価値というまたよくわからない概念が登場しました。
事業価値とは、その事業によって将来生み出される利益の合計(注)です。
(注:正確には「その事業によって将来発生するフリー・キャッシュフローの割引現在価値合計」)
ここで重要なポイントは事業価値とは「現在」ではなく「将来」の利益を考えていることです。
当たり前ですが、去年まで100億円の利益を稼いでいても来年から利益がずっとゼロ円の事業は買いたくないですよね。
このように企業価値を知るためには将来の利益を予想する必要があります。
企業分析の基本:ビジネスモデルの理解
では、将来の利益を明瞭に予想するためにはどうすべきでしょうか?
まず必要なのはその企業がどうやって売り上げを立てて、利益を創出しているかを知ることです。
例えば、A社とB社はどちらも工場向けの機械を製造・販売しています。
A社は機械の販売だけで利益を稼いでおり、B社は機械の価格は安いがメンテナンスで利益を稼いでいる、という場合A社とB社では利益の創出方法に違いがあります。
これはあくまで一例ですが、企業ごとの稼ぎ方によって売上規模、利益率に差が現れてきます。
お勤めの方は自社と競合他社を比較されると納得感があるのではないかと思います。
ビジネスモデルを理解せずに将来を予想しても絵に描いた餅が出来上がるだけです。
次に重要なことはなぜ企業ごとにビジネスモデルの違いがあるのかを理解することです。
A社とB社の例に戻ると、B社の方が利益率が高い場合A社はB社の真似をして、メンテナンスを始めればよいはずです。
では、なぜA社は機械販売だけを続けているのでしょうか。
A社は意図的に販売だけをしているかもしれませんし、本当はB社を真似したいができない理由があるのかもしれません。
その背景を知るとA社とB社の強みが徐々に浮き彫りになります。
私たちはその理由を知るために、経営やその企業の歴史、技術、サプライチェーン等を分析しています。
技術を例にとると、書籍で事足りなければ論文を漁るということもあります。
皆さんでもできて非常に有効な調査は実際に店舗に行ってみることでしょう。
その企業の売上が大きいということは消費者に選ばれているということですから、消費者目線で店舗を回るというのは立派な調査なのです。
企業を知れば知るほど応援したくなる
これまでのことを分析しているとその企業についてかなり理解が進んできて「この企業はすごい」「ぜひ応援に参加したい」という思いが自然とわいてきます。
とはいえ、定性的な情報がほとんどです。
これらの情報をある程度数字に落とし込む必要があるので、定量的な分析も欠かすことはできません。
ただし、定量情報は基本的に市場参加者全員が知っていますので、定性情報を含めた事実と推測の両方を駆使して将来を読み込んでいきます。
こうしてできあがった将来の読み込みを基に企業価値は〇〇だと見積もることができるのです。
企業価値を算定するまでの一連の流れを経ることで、さまざまなシナリオを考えざるを得なくなります。これは「どこまでわかっていて、どこまでわかっていないのか」を理解し、企業価値を等身大に見ることにつながります。
すなわち、日々の株価の上下に関係なく企業価値を指針にすることで、長期投資をすることができると私は考えています。
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