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steps!!(2)

こんにちは。増田拓己です。
steps!! 第2話です。
第1話はこちらにあるので良かったらこちらから。

それでは本編へどうぞ。


既に桜のカーテンはあちこちに架かっているが体育館はまだ張りつめていた。
見知らぬ人たちの集まりだからか、空気はほとんど揺れることなく淡々と入学式は進んだ。
男子生徒の大げさだと思うほどの笑い声と妙に距離感が近い女子たちがうっすら泣いていた卒業式がたった一ヶ月前とは到底思えなかった。

「ねぇ、初めまして。俺は瀬戸口和人。君の名前は?」
教室に入る前に後ろから声をかけられた。
「あぁ、佐伯諒太だよ。よろしく」
視線を少し上に向け目を合わせる。
「諒太ね。じゃ、あだ名はステだな。」
「・・・ステ?」
「そうそう、サエキなんだろ?エキはステーションだからステな」
「・・・ステーションってどっからきたの」
「そりゃサエキのエキだよ。あれ?エキってステーションじゃないっけ?」
「おそらくだけど漢字が違うかな。あとステってのは確定なの?」
「えーサエキってどう書くんだよ。ほかにエキなんて知らねぇよ。」
「ステっていうのは・・・」
「あ、嫌だった?じゃあテシな!」
「あんまり変わらないような気がするんだけど」
「文句ばっかりいうな!」
「なんで怒られたの今」
「じゃああだ名は保留な、しょうがないから」
「あ、ありがとう。」

苦手かもしれない。
心の中の言葉が漏れてないことを確認しながら溜息をつく。

人が少ない教室はまだ少し肌寒い。
やけに響く椅子の音が場違いに感じられる。
やけに響く大きな声もそのまま後ろに座る。

「部活とか決めてるの?俺は野球部」

綺麗な真っ白い歯を見せながら短く刈り揃えられた頭をわしゃわしゃする。

だろうな。

もちろん声には出していない。

「俺は・・・」
「待って!当てさせて!!
 えっとね、…陸上部!!」
「…そうだけど」
「よっしゃ!さすが俺。
 脚速そうだもんな、諒太」
「どこ見て言ってんだよ」
「そんなのオーラしかないだろ!
 あと机に靴の袋かかってるし」
「絶対そっちだろ」
「いいじゃん別に、オーラの方が大物っぽいだろ?」

次第に席が埋まっていく。

「ってか、瀬戸口の席ってそこなの」
「え?そうだけど」
「そっか。そうだよな」
「これから楽しくなりそうだなー!」

両肩を揺さぶってくる。

これからうるさくなりそうだ。

口にはしなかった。
声に出せば良かったと少し後悔した。

肩の手を振り払うと小柄な色白の男性教師が入ってきた。

「みんな揃ったか。ホームルーム始めるぞ」

通る声で教室を制するとチョークを持った。

「堂前渉です。よろしく。」

上がった口角が妙に印象的だった。


チャイムが鳴りホームルームが終わると、和人は急いで荷物をまとめ、また明日とだけ言い残すと走って教室を出ていった。
後を追うように騒がしくなる教室。
靴が入った袋ともらったチラシを確認して諒太も下駄箱を目指した。

ところどころ白い塗装が剥げた二階建ての部室棟は校舎裏にある。
ドアの真っ暗なすりガラス越しにはそれぞれの世界が広がっている。
静けさに諒太は少しの緊張を感じながら陸上部のネームプレートを確認しドアノブに手をかける。

「あれ、一年生?」

後ろからの声にドアノブから手を離し振り向いた。


次回もお楽しみに。

お読みいただきありがとうございます!

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