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いつでも そばに

 藤城清治さんの影絵を見ると、子どもの頃の情景が浮かんできます。大好きでした。夏休み、愛媛県の祖母宅のあの家、あの二階の畳の部屋、本棚にびっしりとあった「暮らしの手帳」。次々に手にとっては、藤城さんの絵を探していました。お話の中に入り込んで、あの部屋で一人、夢中になっていました。

 中でも鮮明に記憶に残っていたのが、この「三つのオレンジ」。題名までは覚えていませんでしたが、時は過ぎ去り、大人になった頃、従兄弟が見覚えのある影絵の本を持っていたのです。従兄弟もこの絵に引き付けられていたなんて。祖母の記憶と藤城さんの絵がつながっている。あの畳の香り、二階のベランダでゴムプールをしてめいいっぱい遊んだこと、赤い屋根の見える家、応接間には暖炉があって、ずいぶん、洒落た作りでした。昭和35年~40年頃に建てられたかと思います。私が物心ついた頃には、もう祖父は亡くなっていたのだかれど。祖父は若い頃、神戸で勤めていたことがあったそうで、煉瓦造りや洋風の建物を目にして憧れていたのかもしれません。そういえば、あの赤い屋根は異人館の風見鶏の館を思わせるような。当時、祖父が勤めていた建物のすぐ側に、私も住んでいたのは結婚して間もない頃。祖父が歩いた道と同じ道を、私も歩いていたのかも。

 祖父も祖母も もう いなくなって だいぶ経つけど、楽しい子どもの頃を たっぷりと過ごさせてもらいました。あの赤い屋根の家は もう 知らない人が住んでいて入ることはできないけど、いつでも鮮明に思い出せます。あの 曲がった先の三角になってる階段・・・で、よく足を滑らせたことや、家中に漂っている祖母の匂い。お味噌と畳とお線香の香りが一緒になった・・・

子どもに。この ぞうさんの お話がお気に入り。

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