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社会人ゼミを続けるコツ

社会人に限らず、ゼミを開いて頓挫(解散、自然消滅など)した経験を持つ人は少なくないと思う。「継続は力なり」というのは、継続それ自体が困難なタスクだからである。
自主ゼミを社会人の仲間と始めてから3ヶ月が経った。

思いのほかきちんと続けられているので、社会人が自主ゼミを続けていくためのコツを書いていこうと思う。


続けるのは難しい

そもそも論、何かを続けていくのは難しいことである。特に、今回のような実務に直結するわけでもなく、しかも何やら小難しい本を読んでいくような場合にはなおさらである。継続は力なり、という言葉は、そもそも継続自体が重労働であったり、あるいは力がある人でないと継続ができない、くらいのことを意味しているのだ。

継続の難しさ

学習を続けることが難しい理由を挙げてみよう。

  • 最初はテンションが高かったのでなんでもいけると思っていた(が現実はそうではない)

  • 本の最初はまだ簡単で、全然いけると思っていた(が現実はそうではない)

社会人によくある問題として

  • 仕事や家庭の事情で時間が取れない

  • 時間が取れたとしても、集まって議論する体力・気力がその時点で尽きている(況や予習をや)

  • (テーマによっては)仕事と関係ないので興味が薄れていく

  • (テーマによっては)仕事そのままの内容で、飽き飽きする

などが挙げられる。これは瞬間的な制約なのか? そうではない。ずっとついて回る問題で、それから逃げることはできない。

オレたちは自分を過大評価する

自主ゼミを始めるのは簡単である。そして、その場の空気で、出来もしない計画を立てて、早々に破綻し、なんとなく終了するのである。
続かない自主ゼミ(学習計画)の特徴は何か? 思うに、最初の詰めの甘さにある。

学習へのテンションが最も高いのは、最初である。だから

  • バラ色に染まった学習計画を立てる

  • 時間もたくさん、場合によっては無限にあるような気がする

  • 他の何事よりも、その学習対象が重要で、他の何か(旅行・デート, etc.)よりも学習を優先するだろう、と想定する

など、現実離れした仮定をおいて計画を立てがちだ。とにかくテンションの高い、一番楽しい(かもしれない)学習計画を立てる時期は、自分やメンバーがスーパーマンのように思え、ありえないほどのコミットメント、時間、能力を割けると考えがちである。
問題は、苦しくなったときにどうするか? どのようなスタンスでことに当たれるか? である。

じゃあどうするか?

精鋭を集め、かつ自分達への期待値を下げればよい。
重要な順に原則を書いていこう。どれも言われれば当たり前なのだが、やってみると難しい。シビアな取捨選択や自省に基づいた判断が求められるからだ。

自主ゼミ(学習)を続けるコツ

1. 相当シビアに目的をはっきりさせよう

一番重要で難しいのはここである。目的というのは「何故この自主ゼミ(学習)をするのか?」という問いに対する明確な意思表明である。
最終的に我々が落ち着いたのは「学ぶことの楽しさにまた触れたい」というものだった。ゲーム理論の自主ゼミはそれを実現するための選択肢の一つに過ぎない。
明確な目的がもたらすのは明確な評価基準である。

「学ぶことを楽しむ」が自主ゼミの目的なのに「noteへのアウトプットを最優先し、viewを稼ぐ」という施策に出たらどうだろうか?
viewを稼げること自体は悪くないが、それで本当に当初の目的である「学ぶことを楽しむ」を充足させられるだろうか? 一定の議論や条件付になることが分かると思う。

我々はしつこく目的の明確化に時間をかけた。目的の明確化に2〜3時間の議論を尽くした。
議論の方向がアウトプットや具体的な計画の立案(妄想が一番楽しいもの)に流れがちだったので、嫌われるんじゃないかというくらい話を元に戻し続けた。それくらいゼミを実施する目的を考え抜いて共通認識を持たないと、苦しい・退屈な時期を乗り切ることができない。
なお、議論を押し戻すようなことができるのは心理的安全性の高さの証左であり、メンバー選びは重要である。

2. 制約から考えよう(成果物を基準に計画を組むのはやめろ)

人間は様々なしがらみのなかで生きているので、必ずしも自分の思い通りに動けるわけではないし、時には自分の中で自己が対立することもある。こういった制約は、無邪気なスタート段階では無視されがちである。

まず、各人がどのような制約の中にあるのかはっきりさせて、その中で最低限できるのはどのあたりまでか?という制約を真剣に考えると、現実的なゼミ運営の姿が見えてくる。

社会人でフルタイムで働いている場合、日中は自主ゼミに時間を割くことはできないだろうし、夜も残業や飲み会などであまり時間が取れないかもしれない。
もしも結婚していたら、まずパートナーを放置してゼミの勉強をし続けるわけにはいかないだろう。まして子供がいたら、自主ゼミを優先するハードルは相当高くなるはずだ。

これらの制約は無視できないはずだ。試しに、自分が生活する上で必ずやらなければならないことを書き出して、残りの時間がどの程度になるか、またその時間は1週間のうちのどのタイミングにあるか調べてみるとよい。当初の想像よりも時間はだいぶ少なく、仲間と合わせられそうな時間帯はもっと少ないことに気づくのではないだろうか。

その勉強時間、自主ゼミ開催頻度の制約の中で、あらためて成果がどのくらいのペースで出せるか見積もると、これもやはり当初想定よりもかなりゆったりしたペースになっているのではないだろうか。

これらの制約は、人生を営む上で外すことができないものが多いはずだ。一瞬だけ外すことはできるかもしれない。だが無理は続かない。
だからおそらくあなたはそれらを振り切って自主ゼミに時間と熱意を投下し続けることはないだろう。つまり、それらを差し引いた時間で何をどこまでやるか検討すると、持続する自主ゼミの計画が立ち上がってくる。

3. 管理コストを下げよう

意外と無視されがちだが、管理コストが高いと人は続けるのが嫌になる。管理コストはバラ色の時期には目にも入らない。そして気づけばなんとなく自主ゼミが億劫になってやめてしまうのだ。

管理コストを上げる要因を考えてみよう。

  • 人の数が多い

  • コミュニケーションが取りづらい

  • 場所や時間が一定でなく、毎回場所の予約やスケジュールを調整しないといけない

解決策は実に単純で

  • 人を絞る

  • 話したり喋ったり、あるいは議論の場を統一する

  • スケジュールは機械的に決める

つまり、管理コストを下げるコツは

  • 気心の知れた少数精鋭で挑む

  • 定例化・定型化できるものはなるべくそうする

といった方針にあり、本題の自主ゼミコンテンツ以外のところで頭を使わないで済ますのを意識すればよい。
我々はコミュニケーションのツールとしてLINE + Notion + Teamsという形態をとった。これは慣れていて、かつ使いやすいものを選んだ結果である。

社会人ゼミを続けて起きたこと

最初にしつこく決めた、ゼミの目的が役に立った場面が印象的だったので具体例として残しておこう。

思ったよりも教科書が難しくて進みが悪い

我々が取り組んでいる、岡田章のゲーム理論にはかなり難解なパートがあり、当初想定の1セクション/30分というペースでは、内容の説明とその後の熱い議論でとても終わらないことが分かった。

ではどうするか? 目的に立ち返って検討をした。

我々の目的は「学ぶことの楽しさにまた触れたい」である。我々がこの楽しさをいつ感じていたかというと、教科書のトピックについて火花が散るような議論をする最中である。だから、目的のために捨てるべきは「1セクション/30分というペース」だとすぐ決まった。

議論をする時間を伸ばし、かつ各々の生活スタイルの事情を踏まえて、議論する時間の制限は設けず、一方で終了時刻の目安を設定した。教科書の進みは遅くなったが、我々は目的を達成し続けているので満足である。

ゼミ用に準備したドキュメントをnoteで公開したい

我々はかなり几帳面にゼミの準備をしており、毎回それなりのドキュメントを Notion に書きつけている。そこで、そのドキュメントが公開されないのがもったいないと考えるのは必然で、それらドキュメントを公開しよう、という話が持ち上がった。

これには「Notionのまま出すのはクオリティの面で心配が多く、出版するなら清書が必要」という反対の声があった。

議論が平行線になりかけたころ、このゼミを続けている目的「学ぶことの楽しさにまた触れたい」を改めて見直すことで議論は収束した。すなわち、学びの楽しさをアウトプットよりも優先する点は変わりがないということで意見の一致をみた。

この目的を中心に考えることで

  • 楽しさを超えた負荷を負ってまで note への公開を行うのは本末転倒

  • 質の高いアウトプットはあるので、各自で独自性のあるアウトプットは公開に向けてきちんと記事を作る

という解決に至った。目的が共有されていたからこそ、何をして何をすべきでないかという判断基準に基づいて意思決定ができたのである。

まとめ

社会人の自主ゼミを続けるコツを、実際のエピソードを交えて紹介した。そのコツとは

  1. 相当シビアに目的を決めよう

  2. 制約から考えよう(成果物を基準にスケジュールを組むのはやめろ)

  3. 管理コストを下げよう

の3点である。特に目的を明確に定めること、それをメンバーの共通認識とし、物事の判断基準として何度も立ち返って活用することが肝である。

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