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バイエルン・ミュンヘン vs シャルケ04 レビュー 『ジャマル=ムシアラの覚醒』 @Veltins-Arena 22-23


新しい布陣

今節のスターティングメンバーは、マネ、デイビスの負傷の影響からか、右サイドバックにキミッヒ、そしてゴレツカはアンカーのようなポジションで中盤底に1枚で入った。

キミッヒが臨機応変にボランチ周辺を出入りしながら、最終ラインのケアをするような役割なのか。

ベタ引きしてくるであろうシャルケに対し、最小限の守備陣で攻撃の枚数を増やしたかったようである。


フェルティンス・アレーナの鬼気迫る熱気

シャルケホームに乗り込んだバイエルンを待ち受けていたのは、ゲルゼンキルヘンに詰めかけた6万人ものサポーター。

サポーターが高めるスタジアムの熱さは、あのイエローライバルのシグナルイドゥナパルクを思わせるドイツの古豪ならではのいわゆる「名物」であった。

最下位で地獄のような状況であっても、新監督を迎えて上り調子となっている今、是が非でもバイエルンに善戦してウインター・ブレイク以降の戦いに繋げたい、そんな使命感と決意を感じた。


膠着状態がつづく序盤中盤

前線に人数をかけて厚みのある攻撃を展開したいバイエルン。

しかし、同じように厚みのある守備で応戦するシャルケ。

シャルケは、最終ラインに6〜7枚を並べてボールホルダーに対しては、マンマーク気味に強烈なプレッシャーとタックルで襲いかかることで、相手優位の状況を許さない。

ただ、人に対してある程度粘着して守備することで陣形を崩し、攻撃時にはアンバランスにならざるを得ず、攻撃に上手くつなげることができなかった。

対するバイエルンは、ボールが上手く流れず縦パスがなかなか入らないことで、攻撃のスイッチが入らない。

これは本来、中央の球の供給源であるキミッヒが右サイドにいることでリズムを失い、前線の人流のアクセントになっていたゴレツカが、アンカーポジションに磔にされることで、人の滞留が起こってしまっていることに起因する。


40分 バイエルン先制

ただ、こんな膠着状態でも今季のバイエルンは点が獲れてしまう。

それは今シーズン幾度となく炸裂していたワンツーパスからのセンター切り裂きアタックである。

それは、師匠であるロベリーの手ほどきを受けたMia san Miaの系譜を継ぐ男ニャブリと、

昭和平成世代の考える10代プレイヤーの概念を覆してあざ笑う凪メンタリストのムシアラ

この二人の演舞で完結させてしまう。

ニャブリが右サイドでエリア内のムシアラに縦パス、

ムシアラがまるで自宅リビングでダンス練習するかの如くリラックスした状態で鮮やかなヒールパスをニャブリにお返し。

エリア内で唯一動きのあるニャブリがマークを剥がしてシュート!

スパッとゴールに突き刺して1−0!!バイエルン先制。

個人のレベルの高さを最大限に活かすチャンスエリアでの縦に速く横に狭いスピーディな攻撃。

シンプルな攻撃ながらもシャルケDFは手も足も出ないといった印象で、バイエルンが先制点を奪い取ってしまった。


52分 バイエルン追加点


シャルケセットプレー終わりから、クリアボールを受けたムシアラがタメを作って右サイドのニャブリへ展開、

ニャブリも同じくタメを作り右サイドに相手を3枚引き付けて、もう一度ム
シアラへ。

この針の穴を通すパスが秀逸でシャルケ3枚を一瞬で剥がすことに成功。

中央に抜け出したムシアラは、相手と4対2の構図。

この時点でバイエルンに3人もの追走者がいることが、いかに攻撃のタイミングや展開イメージを共有できているかの証明である。

ムシアラは、駆け上がるザネ、シュポ=モティン、コマンをいつでも使える状況にある。

そんな中、動揺の素振りを1ミリも見せることなく、たっぷり相手を引き付けてムシアラが選んだ相手は、

マイネームイズトップオブトップストライカー、シュポ=モティン!!!

ボックス左でパスを受けたシュポ=モティンのファーストタッチをご覧あれ!!

これはいつものように全国の高校生FWのみんなに見て欲しい、まさにいぶし銀の粋なトラップ

これ以上ない絶妙な置き所に置かれたボールを冷静にゴール左に叩き込み、バイエルン追加点!

シャルケは何とかこの時間まで強固にブロック築いて防御できていたが、

自分たちの攻撃のために崩した陣形をうまくバイエルンに利用され、強烈なカウンターを許してしまった。

1点ビハインドのなか同点弾欲しさに、得てしてこのような状況は起こりうる、あの4年前のベルギー戦のように。


60分 帰ってきたデ・リフト

負傷明けのザネに代わって帰ってきたデ・リフト。

彼の投入をきっかけにパヴァールが右サイドバックへスライド。

キミッヒは本来のボランチの位置にゴレツカとともに入った。

それからというものの、バイエルンの攻撃が明らかにスムーズになり改善された。

明確なパスの出し手であるキミッヒのボールタッチが増加するとともに、かのゴレツカロールでお馴染みの忍びの男ゴレツカが、前線の気の利くスペースに顔を出して相手DFの混乱を招くことで、前線の選手の流動性を活性化させていた。


ムシアラの無双っぷりにWooo、と声を出す川勝さん

右に流れたコマンはゴレツカへ。ゴレツカからダイレクトでムシアラに浮き玉スルーパス供給。

浮き玉受けたムシアラはペナルティエリア中央で、うまく体で相手に壁を作りながらボールを保持。

巧みすぎる繊細なタッチでセンターバックをかわして、キーパーと1対1に。

練習場のパイロンでドリブルのトレーニングとでも言わんばかりに、キーパーの体勢を崩して、

右足アウトサイドでお洒落にフィニッシュ!!!バイエルン3点目!!.

と思いきやオフサイド!!!

ゴールの瞬間、ナーゲルスマンは「ちょっと彼ホントに笑っちゃうくらいスゴすぎて言葉にできないよ。」

って多分言っていたであろう。

この場面は小生はもちろん、実況の下田さん、解説の川勝さん、現地のファンたち、そしてTVの前のサポーターも皆、感嘆していたのではないであろうか。

あの完全すぎるかつ圧倒的すぎるものを見たときに感じる、諦めにも似た笑み。

今、世界中にそんな想いを抱かせているのが19歳の若きドイツの天才である。

何度も言いたくなるが、こんな世界で一番絶好調と言っても過言ではない人がいるドイツ代表とあと2週間ほどで我らが日本代表が試合をするなんて。

現在のムシアラは、遡ること2006年、皇帝Mシューマッハでも止められなかったピープルズチャンピオンFアロンソ並に「Don't stop me now」である。


後半終盤はいつものあきらめムード発生装置で勝利

2得点以上の差をつけるだけでなく、圧倒的な内容でもって迎える後半終盤は、よほどのメンタリティがない限りバイエルンがもたらす相手へのあきらめムード発生装置により、粛々とゲームが進む。

今回も例に漏れず、シャルケイレブンは19本ものシュートを浴びて憔悴し、最後に反撃の力は残されていなかった。

結局2−0でゲーム終了。

これでバイエルンは公式戦10連勝、リーグ戦6連勝。

序盤戦の不安もどこ吹く風で、強い王者たる風格とメンタリティが確立されてきた。

今節ウルトラライトダウンのような装いでゲームに挑んだ世界でも最もカジュアルな指揮官ユリアン=ナーゲルスマンの表情にも余裕が出てきた。

今後もチームが好循環で流れていく予感を漂わせつつ、W杯を迎える。

こんなバイエルン・ミュンヘンの選手たちの大半が、僕らの日本代表W杯初戦の相手であるドイツ代表のメンバーだ。

おそらくドイツ代表は、クラブ(バイエルン)の戦い方をベースに挑んでくるであろう。

あの「Drivers High」以来のシュートミサイルの雨に耐えて、なんとか勝ち点をもぎ取って欲しい。

一方バイエルン・ミュンヘンのメンバーたちには、是非とも怪我なくカタールから帰ってきて欲しい。

そしてこんな素晴らしい「演舞」をまた見せて欲しいと願う。

Mia san Mia

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