「ボリビアのジェットコースター」の話

2009年の話。

学生生活最後の長期休み。
就職する前に、旅行が嫌になるくらい遠いところへ行こうと思い、南米50日間の一人旅へ出た。
ペルーのリマin→ブラジルのサンパウロoutの旅。
持ち物は着替えとカメラと筆記用具。ブラジルのサンパウロから50日後に出発する飛行機のチケットを握りしめ、リマから4600km離れた空港に辿り着く必要がある。
そんな、ゲーム性も秘めた長距離の移動を楽しもうと思っていた。
宿も決めず。行き当たりばったりで。

舐めてた。日本の縦の長さは沖縄含めても3000km。
南米広すぎ。無謀。アホ。
けどおもしろかった。

そんな旅で、撮った動画の話です。

場所は南米2ヵ国目、南米一貧乏と言われる国、ボリビアの首都ラパス。
この街の標高は3640m。世界一標高の高い首都。

ペルーで高地に慣れたとはいえ、街歩きでさえ息苦しい。肺が痛い。
街の色はカラフルに汚くて、アンデス文化が色濃い感じ。

ラパスには、旅中で出会った日本人のダイスケくんと一緒に入った。
出会った場所は、ペルーにあるチチカカ湖の長距離バス停。アジア人ぽい人がいるなと思ったその人がダイスケくん。バスも偶然同じで、同世代の彼とは息があった。

そんな彼とゼーゼー言いながらラパスの街を歩いた。

しばらく歩いて現れた空き地に、手作りで組み立てたような、簡素な遊園地が現れた。小さい観覧車や海賊船なんかもあったが、一際目立っていたのが「ジェットコースター」。

今にもくずれそうで貧相な佇まい。
力学を学んだ人が作ったようには見えないカーブ。

あきらかに、ヤバいと感じた。

ダイスケくんも「コレヤバいね」と言ったのをよく覚えている。
絶叫は好きだが、ここは南米最貧国ボリビア。不安しかない。
コースターのスタッフには「乗れ!乗れ!」とジェスチャーで煽られまくる。
とにかくここボリビアでは、アジア人は珍しく、街でもニヤニヤされ、よく絡まれる。

我々と同じくジェットコースター前で迷っていた現地の子供たちからも「乗れ乗れ!」と笑いながら煽られた。
「ヒヨってジェットコースターに乗らなかったら後悔するやろ」と私が言うと、ダイスケくんも「マジ?、、、行っちゃいますか」と覚悟を決めてくれた。
完全な後先考えない馬鹿二人である。

お金を払い、案内されるがままに乗り込んだ。
二人乗りのコースターには、バスの座席についている腰だけで止めるペラペラのシートベルトしかなかった。笑った。

コレ大丈夫じゃないかも。

と思った瞬間にスタートした。
持ち込み禁止のルールなんかあるわけないので、前列の僕はジェットコースターの様子を手持ちのデジカメで録画した。

------
ここから動画
------

二人で降りた瞬間、爆笑した。生きた心地がヤバかった。
帰り道も笑いが止まらなかった。
空気が薄いから笑うのも命がけ。
それでも笑えた。
その夜も、撮影していた動画を見返してまた笑った。
二人で涙を流して笑い転げた。
高地で苦しいのに、酒を飲みながら何回も繰り返してみて何度も笑った。
自分たちのバカさ加減と、乗ったものにしかわからないあの恐ろしさが面白かった。

恐怖と標高の高さからくる酸素濃度の薄さが脳によくわからない分泌液を出し続けていたのかもしれない。

ダイスケくんとは1週間くらい行動を共にした。
よく酒を飲んで、よく語りあった。ボリビアのコチャバンバという街で別れた。彼はチリへ行き、私はウユニへと向かった。
互いに縛らず、自由なところが良かった。

この動画はアップしてすぐに収益化され、10年で10万円くらいは稼いでくれた。地味に再生数が伸び、最近300万回を超えた。すごい。
今は、収益化のルールが厳しくなり、収益化からも外れ、ただの面白い動画扱い。
なぜか、最近おすすめ動画にピックアップされるようで、毎日10件程度コメントが付く。2009年の動画にコメントが付く。嬉しいすね。

そんな、旅の動画の話でした。

この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?