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やはりサウナに神様はいる

以前、『サウナの神様』というタイトルでエッセイを書いた。『整う』ということになかなか辿り着けない(のだと思う)外国人の方と出会った話だ。


『整う』ってそんなに大事なことなのだろうか。要は自分が楽しくサウナと付き合えればいいと思う。私もサウナに通い始めてしばらくの間、『整う』という感覚がわからずにいたし、自分には『整う』という感覚がわからない時期もあった。それでもサウナには通っていた。楽しいから。


先日サウナに行った。普段行くファミリータイプの健康ランドとは違う、カプセルホテルに併設されているサウナだ。ファミリータイプの施設とは違い、大概安価で楽しむことができる。外気浴ができなかったり、休憩スペースがこじんまりしていたり、安価には安価なりの理由があるのだが、自分の好みに合えば大概OKなのだ。


カプセルホテルに併設されているサウナの多くは、大概は内風呂、水風呂、サウナと必要最低限しかない。

少し寂しく感じたり、色んなタイプのサウナを試したい方には不向きだが、ある程度サウナが好きになるとそれだけで全然事足りてしまう。それ故に、カプセルホテルのホテルを利用する客層は、普段よりサウナ慣れしている人が多い気がする。それぞれに最高のサウナルーティンがあり、観察しているだけで面白い。


その日、私は体を洗いしっかり水滴を拭き取ってからサウナに入った。平日なのであまり人の出入りはない。いつもよりゆっくり自分の時間を過ごせそうだった。
サウナ室の扉を開けると、おじさんが寝転んでいる。前頭部は薄いが、白髪と白い髭が長いお腹が丸っこいおじさん。


サウナの神様じゃん。
前回の新橋アスティルで会った神様とは違う、比較的日本に浸透してる七福神タイプの神様じゃん。


この人がサウナに通い慣れているおじさんなのは、すぐにみてわかった。まるでその様は涅槃のよう。全ての煩悩を捨て、心とサウナを一体化している。


※ちなみに、サウナ室内で寝転びたい気持ちはわかるけど、人の迷惑になるので基本やめましょう。やりたい気持ちはわかるけど。


おじさんは、私が入室したことを薄目で確かめ体を起こし胡座で座り直した。たまにシューと口から空気を漏らし、目を瞑ったまま時間を過ごす。神様じゃん。大仏様の神様じゃん。
ピタッピタッとおじさんの髭から垂れる汗の音と、東京の感染者数を告げるニュース。神様どうかコロナを鎮めてください。


パンっとおじさんは膝をたたき、サウナから出ていったが、私もそろそろちょうどいい時間だったので、おじさんについてサウナを出る。一足先に水風呂におじさんは頭まで沈み、ダッバァと髭から水を垂らしながら上がってきた。良きかなじゃん。千と千尋の良きかなじゃん。


※水風呂に潜る行為はマナー違反として禁止されているサウナも多いです。やりたい気持ちはわかるけど気をつけましょう。やりたい気持ちはわかるけど。


おじさんは整い椅子に座って、外気浴を始めた。みるみるうちにおじさんの顔が緩む。天井を見上げながら、おじさんの口元はだらしなく微笑みながらご満悦だ。神様じゃん。大国様の神様じゃん。


その後、神様のルーティンを真似しながら4セットほど繰り返したが、この神様ルーティンは非常に良かった。サウナの時間や水風呂のタイミング、水分補給のタイミング、本当に良かった。


『整う』とは辿り着けない人間にとっては、手に届かない幻のように思うかもしれない。『整わなければサウナ行く必要ないかも』と思う人もいるかもしれない。
もしあなたが、そんな気持ちを持っているならあなたの近所のサウナにいる、サウナの神様のルーティンを盗んでみるのもいいかもしれない。


日本には八百万の神がいると言う。
あなたのサウナを楽しくしてしまう神様が、近くのサウナにいるのかもしれない。

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