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なぜ日本近辺で領土問題が多発しているのか。

なぜ日本近辺では領土問題の衝突が多いのか。その理由は、第二次世界大戦終結後、日本と世界の国で結ばれた「サンフランシスコ平和条約」にある。

今回はこのサンフランシスコ平和条約について書かれた本『サンフランシスコ平和条約の盲点』の最終章を要約した。

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まず、アジア太平洋地域における領土問題を含む未解決諸問題を理解するために抑えておきたいキーワードがある。それは地域冷戦、リンケージ、多国間枠組み/国際化だ。

地域冷戦

 1つ目は地域冷戦だ。サンフランシスコ平和条約は「どの範囲を」「どの国が持つのか」ということが明確に、厳密に記されていない。これは偶然でも間違いでもなく、慎重な検討と幾度にもわたる修正が重ねられた結果、わざと未解決にされたものだ。ではなぜ、未解決になったのか。その要因の一つとなった理由はアジア太平洋地域が冷戦の舞台になりつつあったからである。当初の条約案は、長大で詳細、「将来紛争が発生しないように」ということで明確な国境が記されていた。しかし、アメリカは「冷戦において、日本近辺は重要な場所になる」と認識したことにより、「厳格」な条約から「寛容」な条約に変容した。やがて、アメリカは「とにかく早く日本の西側入りを確定したい」と思い始め、一つずつ確実に西側のものにしていく戦略を実行していった。そういう経緯を経た結果、連合国合意で同意されていた帰属先の明記はせず、主権もあいまいで、放棄も明言していない条約となった。サンフランシスコ平和条約が冷戦の副産物だということは、当時の社会主義国家(ソ連、北朝鮮、中国)との領土明記があいまいなことからも読み取れるだろう。

リンケーン

 2つ目の理由はリンケージだ。サンフランシスコ平和条約の未解決諸問題は様々な国、様々な事柄と関係していた。当時、国連で領土処理をすると、イギリスが中華民国を承認しているため、台湾が中国にわたり、共産化し、挑戦と千島も連れていかれる危険があった。しかしながら、アメリカが勝手に明確化すれば、「不公平処理」と非難される可能性もあったため、他すべての領土の所有権を未定になるようにしたという経緯もある。他にも、この未解決諸問題はアースとラリア、ニュージーランドの安全保障問題に影響する事柄でもあった。

多国間枠組み/国際化

 3つ目は多国間枠組み/国際化だ。サンフランシスコ平和条約は日本と48か国との間で締結された多国間条約ではあるが、肝心の問題の当事国同士の出席、話し合い、合意が行われなかった。そして、この当時は朝鮮半島と台湾海峡が国際問題化していた点も重要だ。

これから日本はどうすべきか

 では、現在も存続しているサンフランシスコ体制で日本はこれからどうすればよいのか。「中国の民主化」「北朝鮮政権の崩壊による朝鮮統一」ということが議論されてきたが、アジア太平洋が欧米と同じようになるとは限らないし、それが問題解決につながる可能性は低い。解決法として「サンフランシスコ体制の崩壊」に糸口が見える。具体的には、サンフランシスコ平和条約の未解決諸問題を国際化、再国際化し、当事国を含めた他国を巻き込み、領土分野を超えたアプロ―チが望ましい。現在はかつての冷戦状態と似ているため、アジア太平洋地域の問題解決は世界に悪影響を与えかねないことから、アメリカの積極的な後押しは期待できそうにない。だが、日本はそう言って問題解決の先延ばしをしていれば、時代の波に取り残される可能性もある。日本は地域での孤立を避け、外交の選択肢を広げていくために、隣国との間で懸念や未解決の問題を主導権の獲得をもって解決し、建設的関係を築いていく必要がある。


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