全国自然博物館の旅【48】気仙沼シャークミュージアム
いつの時代も、サメは大人気の海洋生物です。怖さ・かっこよさ・神秘性が例えようもなく魅力的であり、サメに惚れ込んで海洋生物学者になられた方々も大勢いらっしゃいます。
サメについて専門的に学習されたい方には、ぜひとも気仙沼を訪れていただきたいと思います。海の幸をたっぷり味わいながら、素敵なサメたちについて学びましょう!
サメを食べて、サメを学べる最高の複合施設!
気仙沼と聞いて多くの人々が連想するのは、おいしい海の幸! 季節に応じてコンブが食べられたり、ホタテが食べられたり、ホヤが食べられたりと、シーズンごとに多様な魚介類が味わえます。想像するだけで、旅の楽しみが爆上がりしますね。
やってきたのは、名にしおう海産物の食糧基地・気仙沼港です。たくさんの漁船が並ぶ港街の光景からは、言葉では言い表せない気仙沼だけの力強く暖かい空気が感じられます。海と共に生きていた街は、海洋生物学習にぴったりだと思います。
目指すシャークミュージアムは、港に近い観光物産施設「海の市」にあります。サメの生態や進化の学習ができるうえに、おいしい海鮮料理も味わえ、さらにお土産もたくさん販売されているという超絶至れり尽くせりな複合施設です。
ここに来たからには、絶対に気仙沼の海の幸をいただきましょう。たくさんの地元の海産物は鮮度も味も最強! そのうえ、なんとサメ料理も食べることができます。
シャークミュージアムと並んで施設内でオススメしたいスポットは、美麗なる冷凍魚たちが魅せる空間「氷の水族館」です。まるで自然界の一瞬を切り取ったかのように、氷壁の中は魚たちでいっぱい! 海産物の保存のため、製氷技術が発展した気仙沼ならではの展示と言えます。
マイナス20℃でのロマンチックな体験。プロジェクションマッピングも駆使されていて、氷の魚たちとの不思議なひとときを過ごせます。
お腹も心も満足になったところで、シャークミュージアムへとむかいます。展示施設は「海の市」の2階に位置していて、中央部のホールから階段を登ればすぐそこです。
サメの学習、本当に楽しみです。世界中の研究者を魅了し続ける軟骨魚類の神秘に迫りたいと思います。
神秘の海洋生物・サメを総合的に大学習
怖いだけじゃない? サメたちの不思議な生態
気仙沼にサメ博物館があるのは当然です。日本のサメ水揚げ量の80%以上を気仙沼が占めており、近海ではヨシキリザメやネズミザメが年間を通して獲られています。
まさに気仙沼は「サメの街」。サメたちの驚異の生態を学ぶ前に、気仙沼とサメの関係を追っていきましょう。
奥のホールへ進むと、サメの生態学習が幕を開けます。観覧者を出迎えるのは、全長8 mを超える大型軟骨魚類・ウバザメの実物大模型。これほど大きなサメが海洋を泳ぎ回っているのかと思うと、サメ類の多様性と海洋生物学の奥深さを改めて感じます。
なお、筆者の観覧時、ウバザメの模型の前にて、スタッフさんが子供たちにサメクイズを出題していらっしゃいました。スタッフさんが「一番大きなサメは?」と問いかけると、子供たちはすかさず「メガロドン!」と答えていました(笑)。
本館の素晴らしい特徴の1つは、大人も子供も楽しみながら学べる展示スタイルだと思います。たくさんサメクイズが出題されていますので、ぜひともチャレンジしてみましょう。観覧者が能動的に解いて学んでいく形式の素敵な工夫ですね。
そして、サメの中でもトップクラスの人気を誇るのが「最強」と謳われるホホジロザメです。パワフルな実物大模型は超圧巻!
海の王者の迫力は伊達ではありません。サメの「強さ」「怖さ」「かっこよさ」に魅せられた人にとって、ホホジロザメはまさにスター的な存在です。最強のハンターの実像、本展示で思いきり学んでください。
シャークミュージアムのサメの生態解説はピカイチ。写真資料満載の大型のキャプションで、とってもわかりやすくサメたちの不思議な生態を学ぶことができます。
多くの人が度肝を抜かれるのは、サメたちの繁殖戦略。卵を産むサメだけでなく、子宮の中で子供を育てるサメもいます。彼らの生き方は我々の想像を絶するほど多様で神秘的なのです。
サメの生態解説展示は明瞭かつ濃密で、とってもとっても興味深く勉強になります。生き物好きの人々は、おそらく夢中で読み込んでしまうでしょう。サメたちの世界には、探究心を強く刺激する驚きがたくさんあります。
学んで、感じて、海洋生物学の世界へ!
サメの資料をたくさん見ていると、やはり生きたサメたちにも会いたくなりますね。展示エリアの奥には飼育水槽があり、可愛い小型サメ類をたっぷり愛でることができます。きっとサメに対するイメージが「怖い」から「可愛い」へ変わると思います。
美麗な映像展示も本館の魅力です。模型そのものに映像を投影するスーパーギミック、迫力満点のスクリーンで体感するシアターなど見どころはいっぱい。サメたちの力強い舞に、きっと誰もが感激します!
サメと人間との関わりは重要な問題です。自然界のサメと出会ったときの対策から、サメの生態研究最前線まで、我々を取り巻くサメのトピックについても、本館の展示で学ぶことができます。ちなみに、筆者が来訪したとき、沖縄美ら海水族館のスタッフの方々が来られていたので、貴重な話をたくさんお伺いすることができました。
ケースによっては、水族館の飼育個体が研究対象になることがあります。長年の飼育研究によって、サメの行動や繁殖に関する新たな事実が判明しています。飼育下での観察や実験と、野外個体の生態研究。多角的な目で謎に切り込むことで、生き物の秘密が垣間見えます。
ちなみに筆者は、美ら海水族館のスタッフさんに「いつか水族館でジンベエザメの赤ちゃんは見れますでしょうか?」と質問いたしました。「今は厳しいけど将来可能になるかも」とご返答いただけたので、その日を楽しみに待ちます。
本館で学んだ驚異的なサメの事実に、皆さん驚いたのではないでしょうか。特に繁殖に関しては驚愕の連続だったと思います。「シュモクザメ類には胎盤があって、赤ちゃんはお母さんとへその緒でつながっている」「ホホジロザメの赤ちゃんはミルクを飲んで育つ」などの生態を知って、魚である彼らに強い親近感と愛情を覚えました。
決して怖いだけがサメの全てではありません。かっこよさも力強さも可愛らしさも、サメたちは全てを持っています。本館での学びは、きっと海洋生物学を志す人々への強い後押しとなるはずです。研究者や水族館飼育員を目指されている方は、ぜひ気仙沼シャークミュージアムで素敵な学びを得てください。
気仙沼シャークミュージアム 総合レビュー
所在地:宮城県気仙沼市魚市場前7-13
強み:サメの形態や生態について詳細かつ濃密に学べる明瞭な解説資料、大型模型や解説映像など視覚的インパクト満点の特殊展示、サメ研究の最前線に触れられる圧倒的な学術性
アクセス面:多数の駐車場を備えた複合施設「海の市」の中にあるので、東北地方にお住まいの方は車での来訪が理にかなっていると思います。なお、旅行者の方々には注意していただきたいのですが、仙台から気仙沼は結構離れていますので、仙台市内からレンタカーで向かう際は必ずどこかで休憩を挟んでください。公共交通機関を利用する場合は路線バスがメインとなり、気仙沼の市内循環バスに乗れば「海の市」まで行くことができます。また、JR気仙沼線BRTの南気仙沼駅からは徒歩10~15分ほどで着けると思います。
サメの基礎知識から研究最前線まで学べるマスタークラスの専門博物館。本施設での学習を体験すれば、サメに関する固定観念が一気に変わると思います。サメたちが有する驚異的な能力の数々や、特殊な繁殖スタイルなど、神秘的な生態をわかりやすく明瞭に解説してくれています。言うなれば、観覧者にサメの実像を説き、サメへの愛を芽生えさせてくれる施設です。
さらに、大迫力の大型模型や美しい小型サメ類の生体展示もあり、子供から大人まで楽しくサメの世界へ没入できます。本施設から得られる感動と知識量は超膨大です。展示内容からサメへの計り知れない愛が伝わってきます。
サメが好きな全ての方々に、シャークミュージアムを全力でオススメします。観覧を経て、サメたちに対する学術的探究心がさらに強くなるはずです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?