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#スペースオペラ
銀河皇帝のいない八月 ⑥
9. 決断
翌朝……
顔だけ洗った空里は、校庭に出てスター・コルベットに向かった。
今日もいい天気……
ランプウェイの手前では、銅像のようなチーフ・ゴンドロウワが空里を迎えるように立っていた。
「おはよう」
「オハヨウ」
「!」
「おうむ返ししているだけですよ」
ランプウェイの奥からネープが言った。
「ああ、びっくりした……」
「もう少し経験値が上がれば、他のこともしゃべるようにな
銀河皇帝のいない八月 ⑦
10. 東京消滅
ネープがトリガーボタンを引くと同時に、あたりを白い閃光が包んだ。
そして静寂が訪れた。
風は止み、スター・コルベットを中心とした小さな空間は安定した空気に包まれていた。
が、その外は嵐だった。
白く輝く嵐が渦巻き、何もかもを消し去るように吹き飛ばしていた。
四階建ての校舎も、その周りに建つビル群も、白い闇に呑み込まれ消えていった。
世界そのものをジューサーミキ
銀河皇帝のいない八月 ⑫
4. 〈青砂〉の少女
日本政府の立ち入り禁止令を無視して爆心地に入ったCNNの取材チームは、数人の行方不明者を出して命からがら帰還した。
その取材行為自体も問題視されたが、彼らが持ち帰った映像の中身は、そんな瑣末ごとをどうでもよく見せるに十分な内容だった。
遠藤空里という女子高生とその異様な取り巻き……〈星百合〉による超空間ゲートウェイ網と銀河帝国の存在……さらに、一介の女子高生である空
銀河皇帝のいない八月 ⑬
5. 旅立ち
「じゃあ、始めるわね」
半壊した部室棟の屋上でケイト・ティプトリーは言った。
右手に持った小さなジンバルスティック付きのカメラに向かって英語で何か喋り出す。いつか、その映像を見るであろう視聴者たちに、これから起こることを説明しているのだ。
ティプトリーはポケットに忍ばせていたそのカメラで、空里と僕たちの取材を続けていた。彼女自身、まだ彼らの話に対する疑いを払拭しきれないま
銀河皇帝のいない八月 ⑭
6. 星百合
「オーマイ……オーマイ……」
空里のシートにしがみつきながら、ケイト・ティプトリーはうわ言のようにつぶやき続けた。まさか、本当の宇宙旅行になると思っていなかった彼女は、目の前の現実と、今まで空里たちから聞いた話のすべてがウソではないのだという現実の両方に押しつぶされそうな思いでいた。
度を失いかけていたのは空里も同じだったが、すでにネープとの大冒険を経験していたことで、まだ冷
銀河皇帝のいない八月 ⑮
7. 惑星〈鏡夢〉
スター・ゲートの向こうは星の平原だった。
空里は、もっとトンネルのような空間を通っていくのかと思っていたが、どういうわけか行手には地平線が見えていた。
夜明けか、あるいは薄暮の平原を思わせる広々としたところを、スター・コルベットは疾走しているのだった。ただ地上の平原と違うのは、草花のかわりに無数の星々と色とりどりの星雲が咲き乱れ、それが無限に続いているように見えるとい
銀河皇帝のいない八月 ⑯
8. エンザ=コウ・ラ
「逃げられた?」
エンザ=コウ・ラは広い額に皺を寄せていらだたしさをあらわにした。
「機動衛兵は何分隊派遣したのか?」
「一分隊であります。あの程度の船を制圧するには十分な人員でありました」
「だが、そうではなかったわけだ……」
エンザは立ち上がると広大な執務卓の前に立つ司令官に近づいた。
ラ家の軍用コートに包まれた長身からは、青年と言っていい歳に似合わぬ老獪さ