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2023年 11月 短歌まとめ

連作

思想エントランス

旅先で出会いしイタリア・韓国の英語に日本訛りを交ぜる

カラフルなエントランスの小説がぜんぶ村上春樹でこわい

トーストの真ん中らへんにマーガリン じゅわりじゅわりと埋まりました

帰る家 どんどん遠くなっていく スパイダーマン がんばれ 明日も

レコードが羽織るジャケット堂々と「サッチモフレンズ」私もいれて

オフィス三六五

忘れないようにあちこち付箋貼る 父に教えてもらった言葉

ハスキーの後頭部から加湿する 効果あるのかよくわからない

「無理です」と言わずにまずはやってみる ほんとにダメになったらわめく

言の葉をちぎって貼ってちぐはぐで風に吹かれてまた拾う冬

十五日 晃がほほ笑みかけてくる 矢沢あいハンサムカレンダー

ffffff

ばあちゃんを燃やして骨にした日曜のまま空が白みはじめた

悲しくて泣いて帰れば怒られて それが怖くて余計に泣いた

焼香をつまんだあとの右手には どうしようも無く ざらり のこる

葬式の次の日はもう仕事して やっぱそんなにすぐ笑えない

白 白 白 コピー機が飲む A4も 太めの箸で掴んでみたい

連作でないもの

コンビニで摂れる野菜に生かされる 健康体でハイボールごく

お腹がしくしくしますと伝えたら「空腹で悲しい?」と 問いかけ

目立つからつい二度見してしまうけど やっぱり怪しく うつるかしら

買ってきたパイナップルは国境を勝手に描いたような台形

かけっこでビリになっても褒められて 嫌いにならずに 大人になった

コラム

大好きな祖母の死があり、11月なのに坊さんも走り回るような忙しさでした。
上旬にはひとり旅もしたのに、忘れかけていた……。短歌があってよかったです。

おばあちゃんの骨は、真っ白でした。

イラストレーターで左の方に勢いよくカーソルを合わせたような、もしくはfを6回打ち込んだような……この世のものとは思えない美しさと熱を帯びていました。

小学三年生の姪が怯えていて、ああ、かつては私もそうだった、こうして人の死をまじまじと知った日があったと思い出しました。
その頃の私はもっと臆病で、ゆえに祖母からとても大切にされていたことについて改めて考えました。

「カヤは手を切るけん、触られんで」
そういいながら私の進む方向にあるカヤを全部素手で引っこ抜くおばあちゃん。
祖母と私が通ったところは「けもの道」のようになっていたことでしょう。

触られんと言われてから20年。今でもカヤは触らないようにしています。きっと死ぬまで触らないでしょう。
おばあちゃんとの約束だから。

でも、私に、宝のように手のひらでそっと包みたくなるような人ができれば、あるいは。

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