人気フレームワーク「ジョブ理論」| UCLでの学び②
最も人気なフレームワークの2つ目、「ジョブ理論」について今回は解説したいと思います。
現代においては、インターネットの普及により消費者の価値観が多様化しており、企業が顧客のニーズに合った製品やサービスを作り、提供することはなかなか難しいです。そんな悩みを解決してくれるのが、ジョブ理論。本当の顧客のニーズに合った商品やサービスを作るために有効とされるジョブ理論について説明します。自社の商品やサービスが顧客に求められている理由を深く理解し、それに応じたプロダクトやサービス開発を行いたいと考える場合はジョブ理論は非常に有効だと考えます。
ジョブ理論(Job-to-be-Done)とは何か?
ジョブ理論は、商品やサービスがどのように顧客の特定の問題を解決しているかを理解するためのアプローチです。この理論はハーバードビジネススクールの教授によって提案され、広く受け入れられています。この理論によれば、顧客は単に商品やサービスの機能や性能を評価するのではなく、それを使ってどのような問題を解決できるかを重視しています。つまり、顧客は商品やサービスをその「ジョブ」、つまり問題解決の手段として選ぶとされています。この考え方を利用することで、企業は顧客が本当に解決したい課題を理解し、それに基づいて革新的な商品やサービスを開発することが可能になります。「ニーズ」と「ジョブ」はよく似ているように思えますが、実は異なる概念です。「ニーズ」とは、消費者がある商品やサービスに対して持つ関心や要求のことを指します。これは顧客が自分で認識している欲求です。例えば、「もっと速いインターネット接続が欲しい」という願望は、明確なニーズとして表現されます。一方で、「ジョブ」とは、顧客がまだ完全には認識していないより深い課題や問題のことを言います。これは、顧客が現在直面しているが、自分自身では完全には理解していない本質的なニーズを満たすものです。
ジョブ理論の活用メリット
この理論を使うことで、顧客がなぜあなたの会社の商品やサービスを使うのか、その本当の理由を理解しやすくなります。これにより、企業はビジネスの改善や新しいアイデアの開発を効率的に行うことができると考えます。
会社が利益を増やすためには、どのような顧客が商品を買っているのかを詳しく分析する必要があります。顧客の年齢や住所などの基本的な情報を知っていても、彼らが「なぜ」その商品を買うのかの理由が分からなければ、対策がずれることがあります。ジョブ理論はこういったズレの発生を防いでくれます。たとえば、30代から40代の働く女性がある商品を買っているというデータがあるとします。でも、このグループの中でも、自分へのご褒美としてその商品を買う人もいれば、商品が持つ効能に惹かれて買う人もいます。ただ属性データを見ているだけでは、このような違いを理解することはできません。
ジョブとは何か?
ジョブ理論を理解するためには、「ジョブ」とは何かを理解することが必要です。ここで言う「ジョブ」とは、人々が特定の状況で達成しようとする目的や課題のことです。ジョブには、「積極的なジョブ」と「消極的なジョブ」の二種類があります。積極的なジョブは、人々が好んで達成しようとする目標や願望です。例えば、あるスキンケア商品を買うとき、自分のご褒美として使うたびに心地よくなり、リラックスができるいい香りの商品を買おうとすることが積極的ジョブに当たります。一方で、消極的なジョブは、「しなければならないけど、ポジティブな気持ちで取り組むことではない」とようなことです。たとえば、不規則な生活のせいで肌が荒れてカサカサしているため、なんとかして改善したいときに選ぶスキンケア商品が、消極的なジョブの一例です。
ジョブの種類
ジョブには3つのタイプがあります。一つ目は「機能的ジョブ」で、具体的な問題を解決するためのものです。二つ目は「社会的ジョブ」で、人との関係や社会的な立場を良くするためのものです。三つ目は「感情的ジョブ」で、感情や心理的な満足を得るためのものです。これらの違いを理解することで、顧客が抱える課題をより明確に特定できるようになります。
・機能的ジョブ
「機能的ジョブ」とは、製品やサービスが解決できる具体的な問題を指します。これは、人々が何を、どのように解決したいかが行動を促す主な理由となります。例えばコーヒーを使って説明すると、人々がコーヒーを飲む理由の一つに、カフェインを摂取して眠気を覚ますことがあります。また、食事の際にコーヒーを飲むことで水分を取るという目的もあります。これらの理由でコーヒーを選ぶ人々は、実用的な目的(機能的ジョブ)を達成しようとしています。この場合、彼らにとって重要なのは、コーヒーが手頃な価格で美味しく、購入しやすいかどうかです。しかし、このように機能性だけに注目していると、もっと良い製品が出れば、簡単にその製品に乗り換えてしまう可能性があります。
・社会的ジョブ
「社会的ジョブ」とは、顧客が他人からどのように見られたいか、または見られたくないかというニーズに関するものです。これは人々が自分の社会的なイメージをどう管理したいかに焦点を当てています。コーヒーを例にすると、ある人々は、コーヒーを飲むことで「高級感のある人物」と見られたいと考えるかもしれません。この場合、コーヒーはただの飲み物ではなく、彼らの望むイメージを演出するアイテムとして機能します。そうした顧客にとっては、コーヒーの値段や味よりも、店の高級感やブランドの知名度が購入の重要な決定要因になります。この社会的ジョブは機能的ジョブと異なり、他人の目にどのように映るかを非常に重視します。そのため、たとえ近くに安価で便利なコーヒーショップが開店しても、彼らのブランドへの忠誠は容易には揺らがないでしょう。
・感情的ジョブ
「感情的ジョブ」とは、製品やサービスを通じて顧客がどのように感じたいか、というニーズを指します。この感情的な体験が顧客の行動に大きく影響を与えます。例えば、コーヒーを飲むことで忙しい日常から一時的な癒しを得たいと考える人がいます。こうした顧客は、ただコーヒーを飲むだけでなく、その飲む瞬間にリラックスした感情を求めています。この場合、単にコーヒーの値段や味を改善するよりも、顧客が心地よく感じるような接客や店内環境の整備が重要になります。つまり、個々の感情に配慮した購入プロセスや、居心地の良い店舗の雰囲気が、このタイプの顧客にとっては大きな魅力となるのです。
ジョブの見つけ方
では、具体的に顧客のジョブを見つけるためにどうすれば良いか。顧客調査を通じて、顧客の動機付けと不安&惰性に注目します。
「動機付け/モチベーション」
顧客調査のポイント
・顧客は何に悩んでいるか?
・彼らの満たされていないニーズは何か?
・彼らが新しい方法を使ってでも解決しようとしている根本的なペインは何か?
・彼らは何を達成しようとしているか?
・彼らの最終的な目標は何か?
顧客へのヒアリング
・この商品を購入した経緯を教えてください(不安や問題の理解、感情的な決断について耳を傾ける)
・この製品を購入することによって、あなたが達成しようとしたことは何ですか?(機能的、社会的、感情的なものに耳を傾ける)
・この製品から期待する変化は何ですか?(成果/成功基準に耳を傾ける)
・現在の状態から、その商品を購入するにあたって、心配したことは何ですか?(慣性要因に耳を傾ける。どのような複雑な問題があったか。古いやり方を置き換えるのがどれほど大変だったかに耳を傾ける)
「不安と惰性/Anxiety&Inertia」
顧客調査のポイント
・彼らはどのような精神的なトレードオフを行っているか?
・顧客にとってあなた/あなたの製品について、不確実性を生み出すものは何か?
・新しい商品をトライするのにその気持ちを阻むものは何か?
例えば、
*馴染みのない商品カテゴリー
*トライできない
*複数の似たような商品
*切替コスト
*行動変容が必要
*信頼性など
・彼らは現在に至るまでどのような忠誠を抱いているのか
・機能的、感情的、社会的に変化することを非常に困難にしているものは何か
顧客へのヒアリング
・どのくらい前からこの購入を考えていていましたか?この購入を進めるにあたって、時間がかかった理由は何でしょうか?(慣性要因に耳を傾ける。どのような複雑な問題があったか?)
・ 何に対処するのが難しかったですか?(社会的/感情的な惰性について聞き、古いやり方を置き換えるのがどれほど大変だったかに耳を傾ける)
まとめ
ジョブ理論は、新しいビジネスのアイデアを考えたり、革新的なイノベーションを生み出すのにもとても役に立つと思います。顧客の背後にある動機づけや、不安・惰性に目を向けることで商品やサービスの開発と顧客との間のずれを解消し、本当に需要のあるものを提供することに貢献できるでしょう。ここでは、2つ目にクラスで人気のあったフレームワーク/理論をご紹介しました。
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