さつきさん

飽きるまで小説載っけます

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『夏は陽の光が苦手だと言った』

夏が嫌いだ。  照りつける日差しに虫の鳴き声、リア充どもの狂乱騒ぎ、その全てが嫌いだ。  僕はこの立方体の狭い空間で、オンラインゲームをしながら惰性に生きる以外に夏を過ごす方法を知らない。  ゲームは素晴らしい。顔、名前、年齢、職業、どんな過去があったか、夢は何か。  そんな煩わしい情報に惑わされず、ありのままの自分だけで楽しめる。  その日も現実から脱却しようと、いそいそとオンラインゲーム内に転生する。  このまま現実を忘れようとしていたが、そう簡単に行かないのが

    • 【星海の麒麟】 4

      ーー第4色 星海の麒麟ーー ふっと吐いた息がぼんやりとした輪郭を型どり、瞬く間に消えていく。 冬の空気はどこかよそよそしくて、透き通っているように感じた。 人もみんな寒さに縮こまって、誰かと触れ合うのをまるで拒否してるように見える。 僕はこの他人行儀で、1番冷たい季節が好きだった。 冬になると、何故か感情を偽らなくても許される気がして、その事を自覚する度に、僕は自身の問題から逃げているんだなと考える。 毎年、脳裏をすぎる僕自身の悩みはさておき、そろそろ彼女の持つ秘

      • 【星海の麒麟】 3

        ーー第3色  今が塗った色と心ーー あの日、彼女が涙を流した理由には触れられなくて、そのまま半年に近い時間が経った。 色彩屋の2階から見えていた桃色のドレスは、静かに深緑と変わり 気づけば指先を紅葉の蘇芳色に変えて、金木犀の香水をつけ始めていた。 あの日以降も朝比奈さんはいつもと変わらない様子で働いていたので、僕も気にしないようにして普段通りを過ごした。 その間に変わった事は、少しだけあると言えばある。 「綺凛さん、ファイルってこれで合ってますか?」 「あってる

        • 【星海の麒麟】 2

          ーー第2色  星と海を駆ける無色ーー 「色彩屋」にとって決まった営業時間は存在しない。 この店を営んでいるのが伊勢 綺凛 1人である以上、始まりの時間は大抵朝の10時頃からと決めているが 閉店時間はお客さんがいるかどうか、お店に来そうかどうか、または気分で決めている。 今日はお客さんと長く依頼の話をしていたし、早めに閉めようかと考えていた時、店を尋ねる1人の女性が居た。 薄く伸ばした斜陽を背負い、その色味の温かさすらも身に纏っている彼女は、僕に1つの依頼を持ちかけた

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        『夏は陽の光が苦手だと言った』

          【星海の麒麟】

          都会とも田舎とも言えない場所。きっとこういう街並みを人は「町」と呼ぶのだろう。 町には多くも少なくもなく、高くも低くもない非常に淡色の肌色、俗に言うフローラルホワイトの色をした住宅が並び、青々とした緑も生い茂っている。 こういった町に住む人達は総じて人が良く、人の纏う空気は綺麗で、そしてなにより鮮やかで多彩な「色」をもっている。 僕がこの町に来てから、まだ少しの時間しか経ってないけれど、少しずつ町に馴染み始めていると実感出来る。 それはきっと、町の人が優しい色で僕を馴

          【星海の麒麟】

          『きっと君も林檎の色だ』

          太陽が真上から少し落ちたころ、紅色のドレスを纏っているような、鮮やかな紅葉の下で1人の青年が上を見上げている。 青年の周りには、同じ歳くらいの男が2.3人、地面に倒れ込んでおり、小さな呻き声をあげていた。 青年は学校指定のブレザーの至る所を返り血で染め、困ったような表情を浮かべていた。 「俺、別に喧嘩好きじゃねぇんだけどなぁ」 そうぼやく青年は地面に落ちたカバンを拾い上げ、土埃をはらいながらため息をついた。 地面に這いつくばっている青年のひとりは、震える身体を無理や

          『きっと君も林檎の色だ』

          『月光は足元に宝石を散りばめた』

          9月30日 午前1時32分 いつものように、夜の色が濃くなり、空気が洗われ始める頃に課題をする。 半分だけ開いた窓からは、匂いや音、色の全てが丁寧に洗われた風が入り込む。 それを吸い込むことで、なんだか私の身体の中まで洗われたようで、少し目が冴えた。 しかし覚めた頭とは裏腹に、思うように進まない課題が長年使ってきた机の上に我が物顔で鎮座している。 小さく、誰にも拾ってもらえないため息をついたとき、先程から携帯で流している声に変化があった。 どうやら今日の配信は終わり

          『月光は足元に宝石を散りばめた』

          『信仰を失った愛は』

          ある日、ある時、それがいつかは、正確に思い出すことが出来なくて きっと朝靄が掛かった草原のようにぼんやりとした瞬間に訪れたんだと思う。 なにか決定的な出来事があった訳ではなくて、例えるならば形の不揃いなものを山のように積んでしまったから それが崩れてしまったのが必然だったように。 ストレートに伝えやすくするために持ち出した遠回りの例え話はここに置いといて 端的に話すときっとこういう事だと思う。 僕は確かに『信仰』というものを失った。 これは僕だけに限らない話で、

          『信仰を失った愛は』

          七つの色は虹を

          気付くと、壁や天井が澄んだ青色で囲まれた部屋に立っていた。 部屋にはベットやギター、小説などが乱雑に置いてあり、それらは全て部屋と同じ青色だった。 不思議とその空間に嫌悪感や違和感は感じられず、時間が経つにつれて落ち着きすら覚えた。 電球だけがオレンジ色の光を放っており、2色は落ち着きを増す効果でもあるのだろうか、と考える。 しばらく部屋にあった小説を読んだり、ギターを弾いたりして過ごしていると、突然目の前の壁にひとつの扉が現れた。 扉は青色のドアノブだけが付いた簡

          七つの色は虹を

          『夜に光って生きる』

           太陽が眠り、月が瞼を開ける。  人々が化粧を落とし、眠りにつくのと反比例して、夜空は小さな星々で化粧を始める。  暗闇に人は恐怖を覚えるというが、私にとって夜は世界の中心だった。  網戸だけ閉めた窓からは、夏の終わりを運ぶような晩夏の涼し気な風が部屋に入り込み  机の上に開いておいてあった本を使って、パラパラと小さく音を奏でた。  夏が終わり、もうすぐ学校が始まってしまう。  夏休みの間で完璧に昼夜が逆転し、生活習慣が乱れ切った私は憂鬱な気持ちになった。  な

          『夜に光って生きる』

          君の存在は氷みたいだね

          配信とかにくるアンチ、荒らしに対して思ったことを書いてみました。短いです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 君の存在は氷みたいだね。 この枠っていう水は、君が入るまでは楽しく盛り上がって、温度が上がってたのに 君が入ってきたせいで、どんどん温度が下がってく そして君が何かを発して、水の温度を下げる度に 君の存在の大きさが 君の存在の価値が どんどん氷のように溶けてく どんどん氷のように小さくなってく そしていつか、君は綺麗になくなって 誰にも存在を認

          君の存在は氷みたいだね

          『夏は陽の光が苦手だと言った』の設定集

          ⚠️注意⚠ これは多大なネタバレを含みます。  作品をまだ読んでない方は、そちらを先にお読みください。 これを読むことによって、読んでくれた方のイメージが崩れる場合があります。  それでもええで!って人はどうぞ〜 『夏は陽の光が苦手だと言った』 小ネタ(?)集 主人公(男) 安代 夏 (あじろ なつ) あじろという名前と、青白い肌、吸血鬼と呼ばれていた。もともと内気な性格。 ヒロイン(女) 新妻 陽光 (にいつま はるひ) 美人、優しい、明るい。といった屈

          『夏は陽の光が苦手だと言った』の設定集