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ならいごとの旅 in 台湾(5)台湾茶を学べる素敵な農家たち

台湾の多様な茶のカタチには多様な楽しみ方アリ

台湾の農家さんを訪ねていると聞かれるのは、「日本にいったらお抹茶の体験はあっても、煎茶の体験ができるところがない。日本人は抹茶しか飲まないのか?煎茶は楽しまないのか?」ということ。日本の茶道というと型となって伝わっているのですが、たしかに、抹茶以外の煎茶や玉露、かぶせ、碾茶など、多様な茶が味わえる茶館のような場所は少ないのではないでしょうか?

台湾では、茶芸館で茶を飲みながら寝転がってるひとがいたり、茶農家さんのところに遊びにいくと気軽に茶をいれてくれたり、もっと茶が暮らしに近い身近な雰囲気。烏龍茶がやはり多いのですが、ちょっとしたレストランでも多様なお茶がおいてあるのは普通で、茶芸館までいかなくても身近に楽しめます。消費地ではなく、もっと産地へ、買い付けとかではなく、ちょっとおでかけしたい、そんな気分で訪ねられる生産地もたくさんあります。

でも、日本の台湾ガイドブックには、茶館の情報はあっても、なかなか生産者の情報はのっていなかったりします。今回は、台北や台中の茶館ではなくて、もう少し生産地に近い場所でお茶について学べる場所をいくつかご紹介したいと思います。

まずは、台湾の地図を見てもらうと、島の中心部は高山地帯になっていて、一番標高の高い玉山は、実は富士山よりも高い3,952m 。低地では紅茶、高地では高山烏龍と幅広く多様な品種のお茶がつくられています。私はさっぱりした香りのある烏龍茶が好きなのですが、魚池にいって紅茶も好きになりました。気候の違いと土質の違い、製法の違いが多様なお茶の風土をつくりだしているのでした。

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というわけで、地図をみながらだいたいどんなお茶を訪ねたいか想像するところから旅は始まります。これまで訪ねたのは、台北郊外の猫空、宜蘭の冬山郷、台東の鹿野、南投の埔里、日月譚、鹿谷、魚池あたりの生産者を訪ねました。

おすすめは、茶農家の民宿にとまること、or 長期で時間が取れるならWWOOFで滞在してみること。朝から工場がうごいていればラッキー。一緒に作業させてもらえます。

製茶やってないときか、逆に忙しいとき(春3−5月)だと断られるかもしれませんが、民宿をされているところだと、比較的受け入れてもらえます。

とくに自然茶にこだわりたい人には「台湾有機茶地図」という本がおすすめ。
いろんな生産者のこだわりのお茶が紹介された地図になっています。

「台灣有機茶地圖:32處台灣有機茶園,遇見茶職人的天然好茶 」(作者:葉思吟、吳治華)晨星出版有限公司、2014年出版

<台東>

台東の高台にあるレトロな古民家民宿「立品有機茶園」

パラグライダーや気球でも人気の鹿野は高台にあって、夕暮れ時には抜群の景色を見渡せるリゾート地でもあります。まわりはパイナップルや茶畑が広がっています。

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民宿のまわりの茶畑の風景

鹿野の特徴的な茶種には、完全発酵の紅茶に近い発酵度で、烏龍茶製法のお茶「紅烏龍」があります。水色は紅茶、烏龍茶のような丸まった形状のお茶で、この本にも掲載されている立品茶園でもつくられています。発酵のすすんだ烏龍茶というかんじ。

立品有機茶園はどなたでも宿泊できる民宿で、気軽にお邪魔しやすい立地。鹿野のバス停に観光インフォメーションセンターがあり、連絡すると迎えに来てくれます。台湾の民宿というと、リゾート振興の政策でかなり欧風の建築がすすめられ、コンクリートのファンシーな宿が多いのです(できれば避けたい)が、ここは、正統派レトロモダン民宿です。これって、台湾ではかなりレアなんです!

民宿はレトロモダンな古民家風でお庭もおしゃれ

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あさからお母さんがおいしいお茶をいれてくれます。

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さらっとお庭で摘んだお花でブレンドティーもつくってくれました。

民宿の1階が自社商品のショップになっています。

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あさごはん。

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品有機茶園
住所:台東縣鹿野鄉永安村福鹿路213號
アクセス:台鉄「鹿野」駅から送迎あり。
HP https://sites.google.com/site/lipingtea/

茶業の父の息子に学ぶお茶づくり「新元昌紅茶產業文化館」
台東茶業の父と呼ばれる温増坤さんの記念館「新元昌紅茶産業文化館」もオススメ。立品有機茶園からも近く、隣りの集落でバスが出ています。
故・温さんは、台東で初めてアッサム種の紅茶工場を導入されただけではなく、金萱茶の導入にも力をつくされたのだとか。こちらでは烏龍茶作りを体験させてもらいました。

工場は温さんの息子さんが引き継いでおられます。

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新元昌紅茶產業文化館
鹿野鄉永安村永安路451號
http://551016.ttcplay.tw/

以前に書いた記事:

<宜蘭冬山郷>

宜蘭は農家民宿の先駆けとなった地域で、約1000軒の民宿が登録されていると言います。冬山郷はそのなかでも少し高台にある茶産地で、「中山休閒農業区遊客中心」に連絡すると、茶農家への民泊を手配してくれます。

発酵食や加工食品もつくられている芳岳茶園さん。次回は、しょうゆ用の黒豆麹づくりも見学してみたい。

有機農家の正福茶園さんで釜炒り体験

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正福製茶
地址: 269台灣宜蘭縣冬山鄉溪心一路39號
電話: +886 3 958 3362
https://www.facebook.com/futea.tw/

前回訪問時のブログ記事:

<南投>

南投はおすすめの茶園がたくさんあるのですが、もし秋に台湾に訪ねる予定なら、10月の南投世界茶博覧会の時期に合わせていくのがおすすめ。台湾のいろんな茶があつまる「千人大茶会」をはじめ様々な催しが南投市でひらかれます。

南投世界茶博覧会HP http://teaexpo.mmweb.tw/

深山で育まれる秘境の高山烏龍茶づくり「連山茗茶」

世界博覧会の役もされているという鹿谷地区の連山名茶さん。
民泊させていただき、茶について夜中まで語りあかしました。
そして、早朝、茶畑へ。

びんろう?の樹と茶樹が一緒に植えられているのがいかにも南国の茶園です。
平地の茶園を訪ねることが多かったのですが、ここはかなり急勾配。

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手摘みにきている摘み子さんたち。

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連山茗茶
地址:南投縣鹿谷鄉鳳凰村新進巷 1-16 號
聯絡電話:049 - 2755294 / 0912 -316277
http://lianshantea.com/

紅茶について学ぶなら「魚池農業改良場」

魚池農業改良場は、日本統治時代につくられた桃園にある臺灣省茶業改良場の支所としてつくられ、特に紅茶にフォーカスした研究を続けられて来ました。日月譚の湖周辺の散歩コースにもなっていて、散歩しながら紅茶の樹を見学できます。

魚池農業改良場

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臺灣省茶業改良場魚池分場
南投縣魚池鄉水社村中山路270巷13號
電話:+886-49-2855106
http://www.tres.gov.tw/view.php?catid=1650

森の中で育った紅茶を詩を読むように味わえる「森林紅茶」

この工場、かなりレトロ感たっぷりでわくわく感が募ります。

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工場は昔ながらのハシゴ型エレベーターがついていて、二階が室内萎凋室になっています。そして、ほうきで掃いて、1階におとし、そのまま揉捻機へフォール・イン・ワンするという古式システム。紅茶工場でお茶作りを体験することもできる他きき茶、茶葉鑑定のレクチャーも。


台湾には、オランダ統治時代発見された野生種のお茶の樹が保存されており、「巴達維亞城日誌(バタヴィア城日誌 1624-64)」に発見当時の様子が記述されています。(この日誌、村上直次郎という人がまず日本語に翻訳したものを中国語に訳されています。)

その後、日本統治時代に茶の研究は引き継がれ、少なくとも約十数種類の野生種が確認されており、そのうちのひとつが「紫芽」。原木は、政府の管理下に置かれ、大学の研究に使われているそうですが、苗を移植して育てられている農家さんもあるようです。
森林紅茶さんも紫芽をつかった紅茶をつくっておられ、3種類の紅茶を飲み比べさせていただきました。右が「紫芽」。

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それぞれ、台湾の著名な詩人とのコラボで、詩をセットにしてお茶を販売されています。
中には、京都にいったときの桜を想って読まれた詩もありました。どんな味がするのでしょうか?贈り物にも最適のようです。

森林紅茶
南投縣魚池鄉新城村香茶巷5號
http://www.assam.com.tw/

山中に佇むおしゃれな紅茶園「日月老茶廠」

入り口は、ここであってる?と不安になる場所ですが、進むに連れてテンションがあがってくる。ひなびた山村にこんなに素敵な場所が!と思わせるつくりになっています。

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紅茶作りを見学できる他、おしゃれなショップや、お茶を使ったバイキング、展示ミュージアムもあり。トイレまでおしゃれなので必見!

バイキングレストランでは、お茶をたっぷりつかった料理が並びます。

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茶畑でお茶を飲むのもいいひとときになります。

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ランチのあとは工場見学へ。

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ショップ。

日月老茶廠
所在地: 555 台湾 Nantou County, Yuchi Township, 中明村有水巷38號
+886 4 9289 5508
http://www.assamfarm.com.tw/

酵素循環農法を取り入れる自然派女性農家「典藏茶園」 

典藏茶園さんは福岡正信さんの本もお持ちの自然農茶園。映像編集者としても活動されていて、日本にも何度か取材にいっており、川口由一さんにもインタビューされたことがあるとか。英語ぺらぺらなので、お話もわかりやすいです。茶農家で1泊2日、民泊しつつ手揉み紅茶作りしてきました。

「茶葉も呼吸をしている。製茶の作業はメディテーションのようなもの。」

「呼吸する茶葉のサイクルにあわせて手入れをするのよ」と、典藏茶園の楊姐さん。「みんな海抜や品種を聞くけど、教えないの。茶の呼吸にあわせることが大事。それができていたら、生産地なんて関係がないから。」とのこと。

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生産から海外貿易まで1人でこなす自然派の女性農家たちの活躍が印象的でした。自分が大事にしている価値観をつらぬく。台湾の女性老板(社長)たちは強くて素敵です。

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いま、いろんな國から茶業研修生をうけいれ、酵素農法をひろめるため、国際茶業研修センターをつくるべく、セルフビルドされています。1年後には、きっと面白い場所になっていることでしょう。

典藏茶園
名間鄉大庄村南田路142-2號
0937292968
http://shiningtea.organic.org.tw/supergood/front/bin/home.phtml

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旅は出会い。暮らしや生き方を学ぶ場。これからも茶を学ぶ旅はつづきます。

やはり南投にはまだまだいってみたい茶園がたくさんありますが、次回は阿里山の高山系の茶園をたずねてみたいです。

ときどき、同行者を募集中です。生き方を学ぶ旅に興味のある方、ご一緒しませんか?ぜひ、ご連絡ください。

<参考>

前回、同行者を募集していました武夷山岩茶の旅の記録です。実際に来れる方は少ないので、交流の旅の活動を知ってもらえたらうれしいです。



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