だんなの夢
だんなは機嫌がいいと、時々自分の夢を語る。
先だっても2人で久しぶりに出かけた夜、ご飯を食べながらぽろっと言った。「ジャズ喫茶ができたらいいな」その後に「ま、夢やけどな」
若いころからジャズが好きで、結婚する前はレコード集めたり、コンサートを聴きに行ったりしてたらしい。今もトイレの戸の裏側にはマイルス・デイビスの写真(雑誌のページから切り取ったもの」と思われる)が貼ってあり、部屋にはジャズミュージシャンのでっかいパネルを飾っている。
でも日常では諸事に忙殺され、趣味はどこへやら。そうやって40年近くが過ぎた。
先日LINEで街中でJazzliveを見たと言って、酔っ払って写真を送ってきた。ところが言葉が何もないので、何を言いたいのかわからない。返信もしないでいると、酔っ払って私をなじり出す。そうなると長いので、反論するのもめんどくさくほおっておいた。それを昨日、ポツポツと語った。
なるほどねえ。そうやって語ってくれれば納得できたんだけどと思いながら、ふむふむと聞いていた。
正直なところ、7人兄弟の次男に生まれただんなは人のあしらいも上手いし、何かにつけて器用でよく間に合う。不器用な私とは雲泥の差だ。古本屋よりジャズ喫茶か飲み屋の方が儲かると、現実的な打算が閃く。
ただ私には私の夢があるから、全てを叶えるのは難しい。でも九州から岐阜に来て約40年、本当に色々なことがあって今日に至っているけれど、だんなもずいぶん諦めてきたことが多かったのだろうとあらためて思った。
夢は夢のままで終わらせるのがいいのだと、また囁きが聞こえる。確かにそうかも。でも幾つになっても夢見る自由はある。それは明日を生きる希望につながる。
そんな事を思った2月の朝
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