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「ありふれた愛、ありふれた世界」1

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織部弘一 /織部家の長男
明神今日子 /織部家の長女
 明神修一 /今日子の夫
織部浩二 /織部家の次男
 織部麗子 /浩二の妻
織部明日香 /織部家の次女
 織部宏美 /明神の母
 織部御麿 /明神の父
森田ゆず /麗子の妹
黒川美南 /明日香の親友
城田 城 /明日香の親友
花畑健太郎 /障碍者生涯教育研究所


アバン マンション・一室

明神今日子が軽い掃除などをしている。

今日子  I want you. I need you. I love you.
    ハートの奥 ジャンジャン溢れる愛しさは
    ヘビーローテーション・・・

夫の修一が帰ってくる。

修一  「ただいま」
今日子 「遅い!」
修一  「え?(時計を見て)いつもよりちょっと早いくらいだけど」
今日子 「遅い!」
修一  「ごめんなさい。ごはんなに?」
今日子 「・・・」
修一  「え、機嫌悪いな・・・何かしたかな。ゴミは出したし・・・」
今日子 「今日はお祝いでしょ!だからバーミヤン」
修一  「お祝い?」
今日子 「そう!お祝い!」
修一  「はい・・・結婚記念日じゃないし、今日子ちゃんの誕生日でもないし・・・」
今日子 「できたの」
修一  「え?何が」
今日子 「できたの」
修一  「ああ、(ひとボケ)」
今日子 「違う!」
修一  「ああ?(もうひとボケ)」
今日子 「赤ちゃん!」
修一  「は?」
今日子 「だから、赤ちゃんができたの!」
修一  「赤ちゃん?ってあの赤ちゃん?」
今日子 「そう!」
修一  「マジで?」
今日子 「うん」
修一  「やったああああああああああああああ!」

    M・ハッピーバースデー/DREAMS COME TRUE

音楽に乗せてマイムが始まる。
今日子と修一。麗子と浩二。
宏美と明日香。城田と美南。妊娠の報告にみんな喜ぶ。
大きくなっていく今日子と麗子のおなか。
などを音楽に乗せて。

暗転。

シーン1 市民病院・新生児室前

赤ん坊の元気な産声!
赤ちゃんたちを眺めている織部浩二と麗子夫婦。

浩二  「ベロベロベロベロバアー」
麗子  「こっち向いてー。ママですよー」
浩二  「あ、笑った。笑ったよ。パパですよー。ベロベロバー。パパですよー」
麗子  「可愛いなあ・・・」
浩二  「ありがとう、ママ」
麗子  「ありがとう、パパ」

二人、チュウしそうになるが

麗子  「決めた!」
浩二  「おっと、何?」
麗子  「愛!」
浩二  「え?」
麗子  「名前。どう?やっぱり愛じゃない?」
浩二  「うん!そうだね。いいと思う」
麗子  「ね!」
浩二  「愛ちゃんか・・・愛ちゃん、あなたの名前は愛だよー」
麗子  「愛ちゃん!ママですよー」
浩二  「パパですよ、愛ちゃん」
麗子  「パパ!私幸せ」
浩二  「ママ!俺も幸せ」

二人、チュウしそうになる。
そこにやってくる今日子。

今日子 「相変わらず仲いいわね」
浩二  「(パッと離れて)そうかな?」
今日子 「少しは人目を気にしなさいよ」
浩二  「え?何が?」
麗子  「すいません・・・」
浩二  「そうそう。キョン姉、名前決めたんだ」
今日子 「決めたの?で?何て名前?」
麗子  「・・・愛です」
今日子 「愛ちゃん!いい名前じゃん」
浩二  「だろ?やっぱ愛だよなあ」
今日子 「愛ちゃんかあ」
麗子  「お義姉さんとこは?」
今日子 「うちはまだ。なんか決め手がなくて」
浩二  「どうして生まれる前に決めとかなかったんだよ」
今日子 「生まれるまで男か女か知りたくなかったの」
浩二  「じゃどっちも決めとけばよかったのに」
今日子 「分かんないかな?顔を見てから決めたいこの感じ」
浩二  「分かんねえよ」
麗子  「お義姉さんの赤ちゃんはどこですか?」
今日子 「奥から二番目のはじっこ」
浩二  「どれ?」
今日子 「ほら!保育器に入ってる」
麗子  「あ、あの子かあ。かわいいー」
今日子 「可愛いでしょ!」
浩二  「どうして保育器に入ってるの?」
今日子 「ああ、ちょっと早産だったからね」
浩二  「そうか。でもまさか同じ日に生まれるなんてね」
今日子 「ね。すごいよね」
麗子  「早く抱けるようになるといいですね」
浩二  「やんちゃになるんじゃない?キョン姉に似て」
今日子 「どういう意味?」
浩二  「そのまんまだよ」
今日子 「あんたひっぱたくわよ」
浩二  「母親になっても変わんないなー」
麗子  「私、お義姉さんのそういうとこ好きです」
今日子 「麗子ちゃんも亭主を甘やかしちゃダメよ」
浩二  「変なこと教えんなよ」
麗子  「やっぱりそうですよね」
浩二  「麗子―(甘えて)」
二人  「(笑う)」
今日子 「あー。私も早く抱っこしたいなあ」
浩二  「このまま織部家を継ぐかも知れないしな」
今日子 「なんで?」
浩二  「なんでって」
今日子 「ヒロ兄がいるじゃん」
浩二  「はあ?」
今日子 「あれでも長男なんだから」
麗子  「え?(二人には)お兄さんがいるんですか?」
浩二  「あんなのいないのと一緒」
今日子 「まったくどこで何してるんだかねー」
麗子  「どこにいるか知らないんですか?」
今日子 「手紙は出してるんだけど、音信不通」
浩二  「そんなことしてんの?」
今日子 「一応ね」
浩二  「バカじゃないの。ったく急に出ていきやがってよ」
今日子 「かれこれ十五年か」
麗子  「そんなに」
浩二  「俺が高校入ったばっかりだったからね」
今日子 「生きてるんだか死んでるんだか」

考え事をしながらやってくる修一。

今日子 「修ちゃん!遅かったね」
修一  「おお、どうも」
浩二麗子「こんにちは」
今日子 「聞いて!愛ちゃんって名前にするんだって」
修一  「愛ちゃん? へえ。愛ちゃん」
浩二  「最後は『愛』か『真子』かで迷ってて。さっき愛に決めたの」
修一  「そうなんだ。愛ちゃん、うちの赤ちゃんと仲良くしてね」
麗子  「仲良し従姉弟になるんだよねー」
今日子 「よろしくね愛ちゃん」
浩二  「ママそろそろ部屋に戻ろうか」
麗子  「うん。お義姉さん、修一さん。また」
今日子 「はーい」

行く浩二と麗子。

今日子 「ねえ修ちゃん」
修一  「ん?」
今日子 「いつ保育器から出られるって?」
修一  「もうすぐだって言ってた」
今日子 「そっか。あーあ、早く抱っこしてあげたいなあ」
修一  「そうだね」
今日子 「で?」
修一  「で?って?」
今日子 「先生に呼ばれたんでしょ。なんだって?」
修一  「いや、そのことだけ」
今日子 「何か隠してる」
修一  「隠してないよ。何で?」
今日子 「いいなさい」
修一  「今日子ちゃん、あのね」
今日子 「なに?」
修一  「先生が赤ちゃんを精密検査をさせてくれないかって」
今日子 「精密検査?どうして?」
修一  「血中酸素が上がらない原因を調べるみたい」
今日子 「あの子、何か問題があるの?」
修一  「それは聞いてない。でも原因を調べたほうがいいって」
今日子 「ほんとに」
修一  「ほんと」
今日子 「精密検査・・・あんなに小さいのに」
修一  「大丈夫だよ。ほら見て見て。足で保育器蹴ってる」
今日子 「ほんとだ。元気そう」
修一  「万が一のための検査だって」
今日子 「そっか。ねえ、うちもあの子の名前決めてあげないと」
修一  「名前か・・・〇〇〇(役者名)は?」
今日子 「ちょっとバカになりそう」
修一  「そんなことないよ」

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同じ日に生まれた二人の赤ちゃん。ひとりは元気な女の子、もうひとりはダウン症を持った男の子。幸せになるために生まれてきた二人の赤ちゃんを授かった、二つの家族の物語です。楽しく、時に息をのむように読んでいただけたら幸甚です。気に入ってくださったらぜひお買い求めくださいね。

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