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モテの実験

「ダニにもさ、モテるダニとモテないダニがいて、どんなメスダニがモテるのか。そういうことを検証する実験をしているわけ」

ダニと言っても家の中にいるヤツではなく草木にくっつくハダニで実験をしているのだという。

仕送りの確認の電話で、息子(J男)が話してくれた近況である。

J男の近況報告といえば自転車でものすごく遠くまで行ったことや、カレーの名店で働いていてまかないがどんなにうまいかとか、運動と食品の情報しか入ってこない。

そんな話ばかりしているJ男だが、仕送りの前後だけ私が喜びそうな農学部の大学生っぽい話をしてくる。ヒモか。

「大学も対面授業が始まったしけっこうちゃんと勉強してるけど、まあそんなにとっつきやすい内容なわけでもないから、お母さんには面白い実験の話だけしてる」

くぅー。まんまと策にはまって大喜びしてしまった。「ええ~?! モテるメスダニとかあるの?……その言葉だけでおもしろーーーー」とか言って。

さすが親子、20年余のつきあいである。面白い話をしとけば私がごきげんだとわかっているのだ。

私が子育てでただ一つ子どもたちに言いつづけたこと。それは━━

“どうか私に面白い話を聞かせてちょうだい”

ほぼアラビアンナイト(千夜一夜物語)である。暴虐の王の妻シェヘラザードが王に殺されないために連日連夜興味深い話をして「続きはまた明日」のテクニックでその命を長らえたというあの昔ばなし。
あ、そんな。子どもがつまらない話をしたからって折檻するわけじゃありませんよ。ただ、幼稚園や学校での話を聞かせてもらうのをとても喜んだということですね、母親の私が。で、対話することでより面白いエピソードを引き出しつつ(1日外にいれば面白いエピソード必ずいくつもあるんですね)、この順序で話した方がもっと面白くなると指導しつつ物事の面白さにとって大事なのはオリジナリティであると力説しながらげらげら笑ってワンオペ育児の夜は更けていくのでした。

その結果ゆうべ私はメスダニの中にもオスダニにモテる個体とそうでもない個体がいる、ということを知ることができた。オリジナリティがある。しかし書いているだけで体がかゆくなってくるな。すみません。

で、どういうメスがモテるのか。そこが重要。それが結論。

J男は語る。

「ハダニは葉っぱにクモの巣みたいに網を張るんだけど、その網の面積が広いほうがモテると仮説を立てて実験したんだよね。網を広く張れるメスのほうが健康で子孫繁栄できるのではないかと。でもいまのところその説はまだ立証できてない」

なるほど。

一寸のハダニにも五分のモテ。

立証できたあかつきには人間の私も参考にさせてもらおうではないか。

ではまた明日お会いしましょう。

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