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会うの気まずい同級生

会うのが気まずい同級生がいる。

美少女転校生ゆかちゃんである。

彼女とのこれまでをかいつまんで書くと、

【ゆかちゃんと私のこれまでのあらすじ】

小学校に転校してきた美少女ゆかちゃんと親しくなったがだんだん彼女の存在が重くなりクラス替えを機に疎遠計画を実行していたら「裏切り者!」とののしられた、という話である。

・・・・・・

もともとが小心者である。裏切り者と言われた後に普通の顔でお付き合いできるはずもない。帰り道がいっしょにならないようにこそこそと裏口から出るなどゆかちゃんを避ける努力をした。彼女の怨念とか執念がこわかった。同じ中学校に進学したけれどどうにかクラスは3年間同じにならずに済んだ。

中学3年になって少しの転機が訪れた。性格の暗さにより目立たなかったゆかちゃんのその美貌に、一部の一軍男子たちがついに気づいて彼女をちやほやしだしたのである。

ときおり見かける男子に囲まれたゆかちゃんの表情に笑顔が浮かんでいるのを見て私はほっとした。

こちらの浮気がもとで別れた元妻が幸せに暮らしているような気分だ。(未体験ですし、私は女性ですが)

ゆかちゃんが悪いような書き方をしてしまっているが、私も悪い。どうも決まったペアっ子を作るのが苦手なのである。べったりした付き合いができない。女子の学校生活においてべったりできる相方がいないのは不便なものだがそれでもできない。みんなで遊ぶのは好きなんだけど。つまり私とゆかちゃんは性格の不一致による離婚だったわけだ。

荒れた中学校から1mmでも遠く離れた高校に行こうとがむしゃらに受験勉強に打ち込んだ私は甲斐あって希望の高校に合格した。

同じ中学からその高校に行く女子はいない。これでゆかちゃんの呪縛から逃れられる……。

浮かれた私は高校への通学中に見かけるドーナツショップの「アルバイト募集!」の貼り紙を見てアルバイトをすることにした。

無事採用となり、学校生活にアルバイトに、私の人生やっと順風満帆になってきたわ~、るんるん♪と思ったのもつかのま。

タイムカードにゆかちゃんの名前を発見してしまうのである。

うかつであった。家の近所でバイトしたらそういう事態は十分考えられる。

しかもゆかちゃんは私より先に働いている。先輩だ。いったいどんな扱いをされるのかぞっとした。しかしさっそくやめてしまうのは責任感がなさすぎるし、と私は悩みに悩んだ。



結論を急げば、彼女は同姓同名の別人であった。

ついにゆかちゃんとシフトが一緒になった日に覚悟して店に行ったところ、ミスチルの桜井さん似の女の子がいた。その子がもう一人のゆかちゃんだったのだ。一気に体じゅうの力が抜けた。ちなみに例のゆかちゃんは中森明菜似である。

そしてドーナツショップのゆかちゃんも可愛い子で、すでにアルバイト仲間の大学生と付き合っていた。私がゆかちゃんの存在にびびっている間にも店内のそこらじゅうで恋愛が進行していた。私ときたらびびるか振られるか怒鳴られるかである。でもびびったことも振られたこと怒鳴られたこともこのnoteの記事にできたから結果オーライとしたい。

その後、ゆかちゃんはどんな人生を送ったのだろうか。どっちのゆかちゃんにもバイトをやめてから一度も会っていないし、噂も聞かない。

30年以上経った今でも「ゆかちゃんあの時私のこと裏切り者って言ったよね~(笑)」とはとても言えそうにない。

おしまいです。

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